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lilie_y0527
2026-01-20 22:59:00
4443文字
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ここから始まる
前提のお話です
ジェダイ・テンプルとして建立された、新しいアカデミーの静かな中庭に、ルーク・スカイウォーカーは立っていた。
彼の視線の先には、愛らしい小さな生徒
――
グローグーと、彼の保護者であるディン・ジャリンの姿があった。
グローグーはルークから習得したフォースの技を、ディン・ジャリンに誇らしげに見せようとしていた。
小さな掌に集中し、近くに落ちていた石ころを宙に浮かせる。ディンはその背後に膝をついて、グローグーの目線の高さに合わせていた。
「すごいぞ、N-1より速く飛んでいるんじゃないか」
ディンはそう言って、頭を覆うベスカー製のヘルメットの奥で、わずかに声を震わせた。その声には、武骨な外見からは想像もつかないほどの深い愛情が滲んでいた。
グローグーは成功に満足し、ディンのヘルメットに手を伸ばした。ディンは頭を傾け、グローグーの小さな手が頬のプレートを撫でるのを許した。
ヘルメットを決して脱がないことが「掟」である彼にとって、この行為は、グローグーに対する信頼と、彼らの間に築かれた「家族」の絆を示していた。
その光景を眺めながら、ルークの心に、古く、重い感情の波が押し寄せた。
―
あれが、理想の父と子の姿だ。
父と子の間に、いかなるわだかまりも、誤解もない。純粋な愛情と、お互いを必要とする思い。
ディンはグローグーを心から愛し、彼を守り、彼のために「掟」さえも破ってみせた。ヘルメットを脱ぐことはディンの過去を、道を、否定することなのに。
グローグーもまた、フォースの師である自分よりも、この鎧の戦士を選んだ。それこそが、彼らの関係の真実を物語っていた。
ルークは自身の幼少期を思い出した。彼は父を知らなかった。タトゥイーンで育ち、父はヒーローだと聞かされていた。しかし真実は宇宙を脅かす暗黒面の支配者だった。
―
父に、弟子として、息子として、愛されたかったのだろうか?
ダース・ベイダー。ルークは、自分の父が「ダース・ベイダー」であるという現実を、無理やり受け入れ、乗り越えた。
しかし、父と子が、ただ純粋な愛情で結ばれている、という光景を目にすると、どうしても胸の奥が締め付けられるような、感傷的な気持ちになった。
(もし父が暗黒面に堕ちていなかったら
……
)
そんな叶わぬ願いが、一瞬、ルークの心によぎる。そして、彼の表情は少しだけ影を帯びた。
しかし、ルークはすぐにその感情を振り払った。彼はグローグーとディンから、目を離さなかった。
彼らの「家族」の時間にはかなわないかもしれないが「絆」では負けない、とルークは思い直した。
そうだ、自分は父と分かり合うことができた。
皇帝を倒すという、銀河の運命をかけた究極の対決の最中、父は最後に、息子のルークを選んだ。
マスクを脱いだ父の素顔は、ひどく傷ついていたが、その眼差しには、失われたはずの息子への愛が確かに宿っていた。
ルークは、父を救ったのだ。そして、父はルークを救った。彼らが経験したのは、ディンとグローグーのような穏やかな関係ではなかったかもしれない。
だが、それは銀河で最も劇的で、最も困難な方法で結びついた、愛と贖罪の絆だった。
彼はジェダイとして、この壮絶な過去を乗り越え、新しい希望を築くためにここにいる。
ディンとグローグーの絆は、ルークにとって過去の傷をえぐるものではなく、むしろ、彼が守り、育てようとしている「家族」という概念の、輝かしい手本にさえ見えてきた。
「マンダロリアン
……
いや、ディン・ジャリン」
ルークは一歩踏み出し、二人に近づいた。
ディンは立ち上がり、ルークの方を向いた。グローグーはディンの足元から、興味深げにルークを見上げた。
「スカイウォーカー」
ディンは静かに応じた。
「グローグーの修行をありがとう。俺たちは新たな故郷を見つける旅に出る」
ルークは穏やかに頷いた。
「君たちの絆は、フォースのように強固だ。彼は素晴らしい未来を掴むだろう」
ルークは少し間を置いた後、率直な言葉を選んだ。
「私はこれまで、ジェダイの道を探し、師を探し、敵と戦うことばかりに集中してきた。だが、君たちを見ていると、何よりも大切なのは『家族』を築くことだと改めて感じる」
ルークはグローグーの頭を優しく撫でた。グローグーは目を細めて喜んだ。
そして、ルークはディンに向き直った。ディンとグローグーの絆に心が乱されることはもう決してない。ルークは彼の心を見ていた。
「君たちが出発する前に、一つお願いがある。私は
……
君たちの友人になりたい。グローグーにとって、師匠ではない、一人の信頼できる存在として。そして、君にとって
……
ジェダイとかマンダロリアンというものは取り払った、普通の、単なる
……
」
ディンは数秒間、沈黙した。彼のヘルメットのT字型のバイザーが、ルークを見つめ返している。
やがて、彼はかすかに頷いた。その仕草は、彼にとって最大の同意の表明だった。
「友人、か。いいだろう、ルーク。旅の途中、困ったことがあれば、君に連絡する」
「ありがとう。必ずそうしてくれ」
ルークの顔に心からの笑顔が広がった。それは、過去の重荷から解放され、未来へ踏み出す、希望に満ちた笑顔だった。
ディンとグローグーは、彼らの新しい船に乗り込むため、アカデミーを後にした。
ルークは彼らを見送った後、中庭で一人、再び空を見上げた。
かつての彼が望んでも手に入れられなかった、純粋で、理想的な親子関係。それを見届けたことで、彼は父との別れ、そして彼自身の孤独な戦い全てが、意味のあるものだったと受け入れることができた。
(ディン、グローグー。君たちの旅を、きっとフォースが助けてくれる)
ルークは、自分の心の奥底で、もう自分は一人ではないと感じた。彼はジェダイの道を歩み続ける。そして、孤独な戦士と、その愛する息子の友人として、彼らの旅を見守り続けるだろう。
彼は決意を新たに、テンプルの中へ、新しいジェダイの光を灯すために、足を踏み入れた。
***
数日後、ルーク・スカイウォーカーは、レイア・オーガナとハン・ソロの居住区を訪れていた。この家は、彼にとっていつでも安らぎを感じられる場所だった。
レイアは公務の書類を整理しており、ハンはホロゲームの盤面を眺めていたが、ルークが現れると二人とも手を止めた。
「やあ、ルーク。君が仕事以外でここまで来るのは珍しいな」
ハンはいつもの皮肉を込めた挨拶をした。
「フォースを感じたかい?今日は特別な報告があるんだ」
ルークは穏やかに、しかしどこか弾んだ声で言った。
レイアは彼の表情の変化に気づき、すぐに書類を閉じた。
「何があったの、ルーク?とてもいい顔をしているわ」
ルークは椅子に座り、ディン・ジャリンとグローグーとの再会、そして彼らの絆が自分に与えた影響について、一つ一つ語り始めた。
彼は特に、グローグーのディンへの深い愛情と、ヘルメットにこだわる戦士がその子にだけ示す信頼のジェスチャーを強調した。
「彼らは僕が見てきた中で、最も純粋な父と子の関係だ。彼らが一緒にいるのを見て、僕は
……
少しセンチメンタルになったんだ」
ルークは正直に打ち明けた。レイアは静かに耳を傾けていたが、ハンは居心地悪そうに身じろぎした。
「センチメンタル?それはジェダイのマスターらしくないな」
ハンはぶっきらぼうに言ったが、その声には優しさがあった。
「ジェダイは感情を捨てる必要はないよ、ハン。僕はただ、父さんと僕自身の、あの複雑な歴史を彼らの姿に重ねてしまったんだ。ディンは父として、僕と父さんが手に入れることのできなかった、あの穏やかな始まりを手に入れた。
そして、グローグーは、僕たちが欲しかった無条件の愛を手に入れた」
レイアは立ち上がり、ルークの肩にそっと手を置いた。
「ルーク、あなたはあの父に、愛を示すことができたわ。それは、誰にもできない、とても強くて、崇高な愛よ」
ルークはレイアの言葉に深く感謝したが、頭を振った。
「ありがとう。でも、彼らを見ているうちに、僕が本当に欲しかったのは、フォースの師匠でも、銀河の英雄でもない、ただの友人だったのかもしれない、と感じたんだ。僕には君たちがいるけど、ジェダイとしての孤独は、まだ僕の中に残っていた」
ルークは微笑んだ。
「だから、僕は彼らの旅立ちの時、ディンに言った。『君たちの友人になりたい』と。そして、彼はそれを受け入れてくれた」
ハンはルークをじっと見た。そして、普段の彼らしくない、心からの賛辞を述べた。
「お前らしいな、ルーク。誰もがお前に助けを求める。ジェダイの英雄として、スカイウォーカーとして。だが、お前はただのルークとして、彼らの傍にいたいんだな」
「そう、彼らの友人としてだ」
ルークは同意した。
「そのディンとかいうマンダロリアンは、腕は立つのか?」
ハンが尋ねた。
彼の頭の中では、すでにディン・ジャリンの戦闘能力と、そのベスカーの鎧の価値が計算されているようだ。
「ディンは驚くほど有能な戦士だよ。彼に背後を任せられると確信している」
ルークは笑った。
レイアは、ルークの心にできた新しい繋がりを心から喜んでいた。それはルークが背負ってきた重すぎる責任を、少しだけ軽くしてくれるものだと感じたからだ。
「彼はあなたの心の孤独を和らげてくれた。ディン・ジャリンは、私たちにとって新しい家族よ」
レイアはそう宣言した。
ルークは満たされた気持ちで立ち上がった。
「その通りだ、レイア。だからこそ、僕は前向きに進める。ディンとグローグーの物語は、僕に希望を与えてくれたんだ」
ルークは二人を抱きしめた。ジェダイのマスターとして、そしてスカイウォーカーとして、彼は孤独な道を歩む決意をしていた。しかし、ディンとグローグーの純粋な絆に触れ、彼らとの友情という新たな繋がりを得たことで、彼の心はより広く、より明るくなっていた。
銀河の平和を守る戦いは続く。だが、ルークには今、守るべきまだ見ぬジェダイの生徒たちに加え、ベスカー製の鎧をまとった友とその愛する息子がいる。
ルークは新しいジェダイの道を、自信を持って進み始めるのだ。
ルークが腕を緩めレイアとハンを解放すると、部屋の隅で丸くなっていたチューバッカが立ち上がった。彼はルークの話を最初から最後まで静かに聞いていたのだ。
チューバッカは低く長い唸り声をあげた。ハンが感動したってよ、と短く通訳すると、チューバッカはまた明るい声で吠えた。そして、ルークとハン、レイアの間で座り込み、この新しい友人たちのニュースを共有する家族の一員であることを示した。
ーおわりー
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