望月 鏡翠
2026-01-20 22:29:36
859文字
Public 日課
 

#1968 鹿山 光輝です。3

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 あの日の話をする。
 その瞬間はライブの帰り道。もう日付を超えてたから正確には次の日なのかな。
 新しい靴を履いていったよ。映画を見た日に、目をつけてたやつ。あの後ちゃんと買いに行った。もちろん、靴擦れできないように事前に履いて慣らしたよ。
 家を出たのは昼過ぎ。夕方からのライブだったから、その前に一緒に行く友達と会って少し遊んだ。
 開場一時間前に現地に着いた。今回は別に物販に熱があるわけじゃなかったし、ライブTシャツは事前通販でもう手に入れている。中に入ったら上着は全部脱ぐに決まってる。
 最寄りに着くと、もう同じ場所に行くんだろうなという人の波が見える。ここまで来たら、もうマップを見なくてもなんとなくどこに迎えばいいのかわかる。
 タオルオッケー。着替えもオッケー。鞄は少し大きめでゆとりあり。後で上着を丸めて突っ込むからだ。
 整理番号順にジリジリ進み、会場内に入ったときからハイになっていたと思う。正直最高だった。
 ライブが終わってからも夢見心地だった。
 音楽が耳だけじゃなくて、頭と体の全部にガンガン鳴っていた。いつも深夜まで起きてるから、ライブ終わりの時間でも二人とも全然元気だった。
 帰りやすい駅まで移動して、打ち上げをした。
 全身に染み込んだ興奮を音楽を追い出さないと、絶対に眠れないということがわかっていた。もちろん、明日は休みだから、朝まで遊んでいられる。
 二連休なんて贅沢を使う価値は、十分にあった。
 適当に入った深夜まで空いている店に入るとき、いつも働く側として向こう側にいるから、一瞬頭が仕事に呼び戻された。それでも現実は、ライブの楽しさを押し戻せなかった。
 箱に入ったときにチケットについてくるドリンクいっぱいで、滝のような汗をかいて、体はカラカラで、なんでもいいから喉に流し込みたかった。
 あまりアルコールの味がしない飲み放題のサワーを喉に流し込むと、体が徐々に息を吹き返していく気がした。追い出されるまで、時間いっぱい店に居座っていろんなことを話した。