三毛田
2026-01-20 22:12:02
1059文字
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43 ろ. ロマンスを一つ


 ロマンスとロマンチックとの違いはなんだろうなって。
「ロマンスという言葉は、『恋愛や愛情を意味する言葉』だ。だが、似たような愛を伝える言葉であるラブは愛情や絆を示す」
「ふむふむ」
 ふとこぼしただけなのに、丹恒は呆れたり馬鹿にせず説明し始めてくれて。
「そして、ロマンチックはそのロマンスの形容詞。形容詞とはつまり、〝どのような状態であるか〟を示すもの。先の『恋愛に関するもの、感情的な雰囲気を持つもの』。それらを指すようだ」
「へー。俺には関係ないな。というか、縁がなさそうです」
「恋愛が絡むものだからな。三月の方が、こんな感じだという例を知っているだろう」
 そう口にしながら、本の表紙を指で軽く叩く。
 確かに。女の子は、そういうの好きそう。
「というか、よく知っていたな」
「たまたま言葉、単語の意味の違いという論文の中にあったのを思い出しただけだ」
「俺は論文とか読まないから、丹恒の勤勉さには頭が上がらないよ」
 スマホをサイドテーブルへ置き、丹恒の腹へ顔を埋めながら腰へと腕を回す。
 いつもより優しく頭を撫でてくれて。
「じゃあ、そのロマンスを一つ俺に下さいな」
「一つだけでいいのか?」
 少々揶揄うように告げながら、前髪を上げて額を下から上へと撫でる。
 マッサージみたいで、ちょっと気持ちがいい。ついでと言わんばかりに、眉間を押したり撫でたり、伸ばしたりと指先はせわしなく動き。
「丹恒先生、くすぐったいってばぁ」
「これくらいでくすぐったいのか」
「丹恒に触れられると、くすぐったいんだってば。好きな相手に触れられると、誰だってそうなるって」
 お前も、そうだろう?
 という気持ちを込めて見上げると、
「そうだな。お前に触れられるのは……心地よい」
「うぐぅ」
 真剣な瞳で見つめ返され、思わず唸る。
 駄目だ。丹恒に勝てない。
 知識はもちろんだけど、こういう些細なやり取りですら勝てないのだ。
 惚れた弱みと言えるだろう。
 夜のプロレスでも、気づけば主導権を握られて俺が啼かされていることもしばしば。
「でも、丹恒が好き!」
「ああ。俺も、穹が好きだ」
 俺を見つめる瞳は優しく、慈愛に溢れていて。
 この人に、こんな表情を向けてもらえるのは俺だけなんだなって改めて感じる。
「お前が欲するのであれば、何でも与えたいと思っている。が、それは重いと前に怒られてしまったからな」
「誰に?」
「三月に」
「ですよね~」
 俺の丹恒に対する愛情ですら、重いと言ってくるのがなのだ。