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やまだ
2026-01-20 20:18:30
1711文字
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羅小黑戦記
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2021.03.29 小白と師匠
師匠、と、小黒が本当に嬉しそうな顔と声で駆け寄った人を見たとき、小白はまず髪が長いな、と思った。
がっしりした肩だとか小黒を見下ろす横顔の静けさだとかに気がついたのはそのあとだ。
「小黒のお師匠様
……
」
小白の声が聞こえたのか、離れたところで小黒から腹にぐいぐいと頭突きされている人がこっちを振り向いた。目が合う。
小黒が世界一の師匠なんだと胸を張った人の顔を、ようやくそこで小白はまじまじと見た。
髪が長くてがっしりして物静かで、それから、なんだか眠そうな目の人だな、と思った。
「小黒か阿根から聞いているかもしれないが」
无限だ、と、眠そうな目の人が緑茶を啜りながら名前を教えてくれた。小白も、お茶と一緒におじいちゃんとっておきの月餅をもぐもぐやりながら自己紹介する。
「羅小白だよ。お兄ちゃんとか小黒に聞いてるかもしれないけど
……
あれ? 私たち同じこと言ってるね」
「確かに」
口角をゆるやかに上げて笑う人だ。たまに人型の小黒もこんな顔で笑う。
その小黒は阿根と一緒に村外れの山へ出かけていった。再会した瞬間はあんなに嬉しそうにしていたのに、そのあとはお互い淡々と情報を擦り合わせておしまいだ。小白なんて久しぶりに阿根に会えたときは嬉しくて飛びついてしまったものだが、男の子同士だと案外あんなものなのだろうか。
「小白」
「ん、なに?」
「負傷した小黒を、きみが拾ってくれたそうだな。ありがとう」
「うん。でも、まさか妖精だなんて思わなかったなぁ」
雨の夜、湿ったダンボールの中で丸くなっていた小さな黒猫を抱きあげたあのときに、こんな日が来るなんて想像できるわけがなかった。もちろん小白は、今のめちゃくちゃで賑やかな毎日が大好きなのだれど。
「无限さんも、最初は小黒のこと猫だと思ってたの?」「いや。初めて会ったとき、妖精としての彼に攻撃されたんだ、私は」
「えっ」
びっくりして齧りかけの月餅を取り落としてしまった。
「もちろん返り討ちにしたが」
「えっ!」
せっかく拾った月餅が、また小白の手から転がり落ちた。
「そのあとも大変だったんだ、色々と。私のもとから逃げだそうとしてみたり、用意した食事をなかなか摂らなかったり」
「ええー
……
小黒にもそんなときがあったんだ」
小白の知る小黒は、確かにやんちゃなところはあるけれど、面倒見のいいしっかり者だ。ちゃっかり者でもある。活きのいい月餅を今度こそ頬張りながらしみじみしてしまう。
「なんでそんな子を弟子にしたの?」
无限がその選択をしていなかったら、たぶん小白は小黒に一生会うことなんてなかったのだろう。だから感謝の気持ちしかないのだけれど、それでも好奇心はうずく。せっかくの機会なので訊いてみたかった。
ふたりのあいだに細く漂う湯気がふっと揺らめく。
小白の前でのんびりと緑茶の香りを楽しんでいた人は、眠そうだった半目をそうっと和らげて微笑んだ。
「
……
それは秘密だ。いつか、私ではなく小黒の口から聞きなさい」
「ええーっ。今知りたいのに」
「詮索無用」
ぴしゃりと厳しい言葉が返ってきたが、无限はまだ楽しそうに微笑んでいたから全然怖くないのだ。
それに、なんだかママやおじいちゃんが思い出話をするときの声色に似ていた。小黒と初めて会ったときのことを懐かしんでいるのかもしれない。
「あのね、私いつも小黒にたくさん助けてもらってる」
「そうか。彼はきみを守れている?」
「うん、もちろん!」
小白が大きく頷くと、无限はそうか、と自分が褒められたような顔で微笑んだ。半目のときは眠そうな仏頂面なのに、笑うと无限はとても優しい顔をする。
「小白。小黒に手を差しのべてくれてありがとう」
「无限さんこそ、小黒を弟子にしてくれてありがとう。おかげで私が小黒に会えたんだから
……
あれっ」
びっくりして口を噤む。忙しく瞬きながら窺った无限も優しくにこにこしているから、もうわかっているんだろう。楽しくて、嬉しくて、体がぽかぽかしてくすぐったくて、小白は大きく口を開けて笑った。
「私たち、また同じこと言ってるね!」
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