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やまだ
2026-01-20 17:40:44
1762文字
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羅小黑戦記
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2021.01.01 修行中の師弟
「
……
なんで師匠に勝てないんだろう」
ムゲンとシャオヘイそれぞれが術で操る金属板を範囲内でぶつけあう、遊戯じみた修練のあとのことだ。
範囲外へ押し出されるか弾き飛ばされたら負け、という条件でもののみごとに五戦五敗を喫した弟子は、地面に短い両手両足を放り出してぐったりしながらそう言った。
山中にぽかんとひらけた、猫の額ほどの平地だ。休憩を兼ねての軽い手遊びのつもりが意外と白熱してしまった。
「術の強度が違うだけだ。正確さはおまえだって優れているよ」
「んー
……
」
いつもなら拗ねたり膨れたりしながら再戦を要求するものだが、どうやら今日は精魂尽き果たしたようだ。
もはや今日の出番はあるまいと、シャオヘイに貸していた金属板を操作して腕に装着する。ムゲンのそのごく日常的な仕草を、熱心にシャオヘイは目で追いかけていた。
「
……
ね、強度ってどういうこと? それってどうやったら鍛えられる?」
いざ改めて教導してみると、シャオヘイは実に勤勉な弟子だった。
生まれたての、幼い妖精であることがここばかりは逆によかったのかもしれない。好奇心が強いうえに呑みこみが早い。
素質がある、という点はもう二の次でいい。シャオヘイ自身の意志こそをムゲンは尊びたい。
その熱心な弟子に地面からじいっと一心に見つめられ、少し瞬く。戻したばかりの金属板を再び一枚手にとり、ムゲンもまた地に胡座で腰を下ろした。膝もとへ、がばりと起き上がったシャオヘイがすぐににじり寄ってくる。
「術の強度とは
……
」
軽くひらいた手のひらの上で、金属板をゆるやかに回転させる。シャオヘイにも教えたことのある、基本のうちでも初歩の術だ。
徐々に回転を増やしていくと風切り音がうなりだす。
ぶんぶんと耳の底に溜まるほどになってから、ムゲンは無造作にそれを少し離れた位置にある岩へ放り投げた。
「すなわち理解力だ」
きん、と甲高い音を生んだ金属板は、岩を貫通してムゲンのもとへ戻ってきた。ごく薄い長方形の孔が穿たれた岩を、シャオヘイは首を伸ばして見つめている。
「わかるか?」
「全然」
不満をたたえたあどけない顔がムゲンの腿の上に乗る。
「どういうこと?」
「シャオヘイ、手を出して」
「ん」
小さな手に金属板を持たせてやる。不思議そうに瞬くまるい目が掌中と頭上とをせわしなく往復するのが微笑ましい。
「おまえはこの板を操れるだろう?」
「うん。余裕だよ」
「では、これを使って何ができる?」
「何って
……
」
シャオヘイは少し眉を寄せてムゲンを仰いだ。
機嫌の悪い顔とは違う。自分の内側を覗きこんで答えを探りだそうとする、没頭の表情だ。その上をシャオヘイの操る金属板がゆらりと流れていく。
「
……
こうやって、飛ばせるでしょ。小さく固めたり、薄く伸ばしたりもできるよ。果物だって魚だって切れるし、あとは
……
」
ころころした指を折り曲げながらの口上がふっと詰まる。困り顔の額を撫でながらムゲンは微笑んだ。
「わかったな?」
「
……
わかった。ぼく、ぼくができることがちゃんとわかってないんだ」
シャオヘイの手が、あてどなく宙を泳いでいた金属板を掴み寄せる。胸に抱えたままムゲンの腿を跨ぎ、胡坐の中心にどすんと収まった子は、難しい顔をしている。
「
……
いざ何ができるか考えてみるの、結構難しいかも」
「それはそうだ。料理だってひとつの食材からいくらでも作れる」
「師匠は焼くだけじゃん」
いとけない手が、おのれの指の力でくるりくるりと金属板を回転させている。ムゲンがそれを操って横取りすると、シャオヘイはあっ、と叫んだ。
「師匠! ずるい!」
ずるい、と言いながらシャオヘイは手を伸ばしはしない。よく光る目で空に踊る金属板を追いかけながら、ムゲンの術に干渉しようとしているのだ。
「私から奪い返せたら、今日の夕飯は街で好きなものを頼んでいい」
「やった!」
飛び回る金属板を見つめてムゲンの膝を両手で掴む子の姿は猫そのものだ。人型を保つことすら忘れてしまいそうなシャオヘイの頭に手を置き、そっと笑う。
本当に良い弟子を得た。
「できなければ野宿だ。食事は私が作る」
「やだ!」
ぶおん、と、金属板が重い音をたてて空を切った。
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