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これがプライスレスってやつ?

学パロウリン
下校途中にコンビニ寄る二人
限りなく+に近い感じの二人を書いてみたかった。

部活も終わり、薄らと橙色の光が包み込む下校道を歩く。
普段は部活の先輩や友人と並び立って帰る事が多いが本日のお隣さんは少しばかり違う。しかも男子じゃなくて女子だ。
あ、もしかして彼女とか想像した? それならこれって放課後デートって事になる感じ?
……まぁ、全部違うんだけどさ。隣の彼女の名前はリンウェル。ロウのクラスメイトでそれなりに仲の良い異性の友人。
リンウェルは部活動に所属してはいない為、こんな時間に下校する事は珍しい。どうやら今日は図書室にリンウェルが前々から楽しみにしていたシリーズ本の新刊が追加されたらしく、それを夢中で読み耽っていたら気付けば最終下校時間になっていたらしい。んで、偶然部活終わりのロウと鉢合わせて一緒に帰る事になったって訳。
本なんか借りて家で読めばよかったじゃんと言えばどうやら新刊は一度に借りれる本数が決まっているみたいで借りれない本数分を一気に読んできたと言う。

「新刊って何冊入ったの?」
「五冊」
「ふーん……んで?借りたのは何冊」
「二冊!だから残りの三冊は頑張って読んできた!」

これこれと鞄の中から出された本の分厚さに思わず目を瞠る。辞典並みの分厚さ。立派な鈍器じゃん。それがいの一番で出てきた感想。その分厚さ故にやはり重さもあるのかリンウェルも片手で持つのは厳しいみたいで両手で掲げている。これで小説って事は文字がびっしりなんだろ?
……想像しただけで頭が痛くなりそう。きっとロウが読むとなると開始二ページでリタイアしそうだ。それをリンウェルは三冊分も読破してきたというのだから流石は本の虫。本人に言ったら怒られそうだから言わないけど。

と、まぁそんな感じで他愛もない会話をしながら下校道を歩き、中盤に差し掛かった辺りでロウの腹の虫が騒ぎ出す。
グゥ~……となんとも間抜けな鳴き声を出す腹の虫は空腹の限界を訴えてくる。

(腹減った~……)

今日の部活は練習試合が主だった為、普段よりも多く動き回った。それに今日の試合中の動きを次のスタメン決めの参考にすると言われればそりゃ気合いも入る訳で。おかげさまで今のロウは疲労感・空腹感共にMaxケージだ。

「なぁ、リンウェル。ちょっとコンビニ寄らね?」

そう言ってロウが指差す先は先程視界に留めたコンビニエンスストア。どうやら今日がオープン日らしく、店の前には開店祝いのフラワースタンドが飾られている。
しかし、ロウが一番に目を引いたのはそれではない。窓に大きくディスプレイされた【オープン記念 中華まん・ホットスナック類 全品半額】の文字。常に懐が寂しい学生にとって、半額の文字はまさに救いだ。

「えー……私早く帰って本の続き読みたいし」
「良いじゃん、ちょっとだけ。……な?腹減りすぎて死にそうなんだって!」
「もう少しで家に着くんだから我慢したら?」

よほど本の続きが気になるのか、リンウェルは中々賛同する姿勢を見せない。その間にも腹の虫は空腹のメロディを奏で続けている。こうなったら奥の手だ。

「奢る」
「え?」
「リンウェルの分も俺が奢ってやる」

これでどうだ!
先程も説明した通り、常に懐寂しい学生が奢るなんて行為はまさに最終秘奥義ぐらいの価値と犠牲がある。だが、その対価を払おうとするぐらいロウの空腹度は限界を迎えていた。
リンウェルは「うーん……」と顎に人差し指を添えて少し考えた素振りを見せた後、

……乗った!」

ニヤリと悪戯な笑みを浮かべるとスタスタとコンビニの入口へと向かって行った。
あんなに渋っていたのにロウが奢るとなったらけろりと態度を変えやがって……。もしかして最初からこういう展開になるようにわざと渋ってた……とか?
リンウェルならあり得る。それにあの笑顔がなによりの証拠なのでは?
ともあれ、ロウの財布を生贄とした最終奥義は見事に決まったわけで。
一刻も早く腹の虫を落ち着かせようとロウもリンウェルの後を追った。




ピロリン~ピロリン~♪

自動ドアが開き、店内へと足を踏み入れると来店を知らせるコンビニ特有のメロディが流れる。
ロウは一目散にご飯コーナーの方へと駆け寄っていった。よほどお腹が空いていたのだろう。
その様子に小さく笑みを零すとリンウェルはお菓子コーナーの方へと向かった。

「えー……っと、あった!」

商品が陳列する棚からお目当ての商品を見つけ、思わず声音が弾む。

”オウルグミ”

これがリンウェルのお目当てであるお菓子だ。
フクロウの形をしたグミでおまけにフクロウのシールが付いている。シールは十七種+シークレット一種の全十八種類。
自他ともにフクロウ好きであるリンウェルはこのシールを全種集める事が最近の目標でもある。

「リンウェルは何買うんだ……って、まさかそのグミ?」

リンウェルが手元に持つものを見つけた途端、ロウは苦虫を潰したような表情を浮かべた。その理由はロウがグミが嫌いな訳でもフクロウが嫌いな訳でもない。理由は一つ。

「うん!これを三つ!よろしくね」
「三つも!?」

はい、とロウにグミを渡すと「あのー……リンウェルさん?せめて二つにしませんか?」なんて下手に出ながら交渉を持ち掛けてくるが「奢ってくれるんでしょ?」とニコリと笑って交渉決裂の意を見せればロウはがくりと肩を落として、大人しくグミ袋を三つ受け取った。
なんと言ってもこのグミはお菓子にしては値段が高すぎるのだ。
人気イラストレーターがデザインを手掛けたという事もあるのか、恐らく価格の殆どがおまけのシール代として持っていかれていると言っても過言ではないだろう。
リンウェル自身も中々に値が張る故にそう気軽に購入出来る訳ではなく、購入出来ても一袋が基本。だから一度に三袋もなんてお菓子界隈の中では大人買いに値するようなもの。
少し可哀想な気もするが元々はロウから奢ってあげると話を持ち掛けてきたのだし、折角ならその言葉に存分に甘える事にした。

「あれ?ロウのは何も持ってないけど……

入店早々、ご飯コーナーの方へ駆けて行ったはずのロウの腕の中にはリンウェルが渡したオウルグミ以外の物がない。てっきり大量におにぎりやパンなどを抱えているものばかりと思っていたが。

「それがさーあまり良いの残ってなくて」

ひょこりとご飯コーナーの方へと目を向けると少し離れた位置からも目視出来る程、商品棚はスカスカだった。
どうやらオープン初日で人の出入りが多かった事+夕方という事もあって大方人気や定番の商品は既に完売してしまっているみたいだ。

「まぁ、半額対象の中華まん系とかは残ってるみたいだし」

そう言ってロウはグミ三袋を手にレジの方へと向かった。

最近はどのお店もセルフレジが導入されている事が多い。このコンビニも三つあるレジの内二つがセルフレジとなっていた。
簡単に自分で済ませれるという点からセルフレジを好む人が多い。その証拠に対人レジが空いているのにも関わらずセルフレジの列にわざわざ並んでいる人がいるぐらいだ。
ロウも最初はセルフレジの方へと向かおうとしたが空いているレジがあるのにわざわざ混んでいる方を選ぶ気は起きない。それにロウ自身は特にこだわりがない為、並んでいる列の間を通り抜け、対人レジの方へと向かう。

「いらっしゃいませ」

マニュアル通りの挨拶をし、店員がバーコードを読み取っていく。読み取り終わったタイミング辺りで「肉まん一つとからあげ串一つ」と追加の注文をすれば店員が同じように内容を繰り返しながらレジのタッチパネルを操作するとディスプレイに表示されていた金額に二つ分の料金が加算される。

【1693円】

ディスプレイに表示された最終金額に「まじかよ……」と心の中で呟く。追加注文分は元々の値段から半額になっている為、二つ合わせても400円……いや、300円にも満たないはず。という事は残りは全てあの高級グミに持っていかれているという訳だ。
……くっそー!折角半額で手軽に腹を満たせると思ったのに……。なんなら普通に飯を買う時より高くね!?
だが、元々奢ると言って豪語したのはロウ自身だ。文句は言えない。諦めて財布からお金を取り出そうとした時、

「Iカードはお持ちですか?」
「へ?Iカードですか?」

店員の言葉をそのまま繰り返せば店員はコクリと笑顔で頷いた。
Iカードと言えば専用のレンタルショップでレンタルする際に必要な会員カードだ。ロウもCDや漫画などを借りる際に作成したものを持っている。
Iカードは専用レンタルショップのみならず、最近では色んなお店と提携して購入時にポイントを貯めたり、使用したり出来るという事は知っていたがどうやらこのコンビニも提携の一つだったらしい。
ロウが財布からカードを差し出せば、店員がカードの裏面のバーコードを読み取る。

「ポイントはお使い致しますか?」
「ポイント貯まってます?」
「はい、745ポイントございます」

意外に貯まっていた事に驚いた。せいぜい貯まっていたとしても200ぐらいあれば多い方だとも思っていたから。
1ポイント=1円から使用が可能らしい。現在ロウは745円分を所持しているという訳だがこういうポイントってどうしてだろう。貯まれば貯まる程、使いたくなくなるというか。そりゃ、使った方がお得なんだろうけど貯めておきたくなる心理が働いてしまう。
少し迷った末に「大丈夫です」と言いかけたその時、

「じゃあ、693円分お願いできますか?」
「畏まりました」

店員がタッチパネルを再び操作するとディスプレイには【1000円】とキリの良い金額が表示される。確かにこれで細かい小銭などを用意せず、支払いやすくなったなーなんて一瞬思ったがそうじゃない!

「おい!リンウェル、勝手に……!」
「じゃあ、お先に」

そう言うとリンウェルはしっかり自分の分のグミを手に取るとロウを置いてコンビニの外へと出て行った。
待てよ!と追いかけようとしたが支払いはまだ済んでいない。やっぱりポイントは使いませんなんて言って一度は使用したポイントを元に戻せるのかも分からない。仮に出来たとしても色々と面倒な処理をしなきゃいけないのだとしたらこちらとしても面倒だし、処理する店員も同じ思いだろう。そうなればロウに残された取るべき行動は一つ。
大人しく1000円札を差し出してスムーズに支払いを済ませる事だけ。

「ありがとうございました~」

店員のマニュアル挨拶その二と共に見送られながらロウは肉まんとからあげ串が入ったビニール袋を片手にコンビニを後にした。




コンビニを出て直ぐにリンウェルは居た。そりゃ当たり前か。これでそのままロウを置き去りにして帰っていたら奢らせるだけ奢らせて後はポイなんて、なんとも薄情な奴だとはなる。

「お前さ、勝手に俺のポイント使うなよな」

先程言い逃した言葉をリンウェルに愚痴りながら、からあげ串を頬張る。カリッとした衣にジューシーな肉汁が口の中に広がり、腹の虫もこれにはニッコリだろう。

「もしかしてポイント貯めてたの?」
「いや、そういう訳じゃねーけど……それにまさかあんなに貯まってたなんて今日知ったし」
「ならいいじゃん?少しでも値引けるならお得でしょ?」
「それはそう……だけど。つーか、だとしても俺のポイントだからな!?」
「はいはい、これあげるから」

そう言うとリンウェルはオウルグミが入った袋をロウの手の平の上に傾けて、いくつかグミを分けてくれる。

(それだって俺の金で買ったやつだろう……)

不満が込み上げるがこのグミは高いだけあって、普通のグミよりもそこそこに美味い。つってもリンウェル曰くグミ代の殆どがシール代として持っていかれているらしいけど。
パクパクと小ぶりのグミをあっという間に食べ終わり、次は肉まんへ取り掛かろうとするロウの隣でリンウェルも開封した分のグミ袋に付属しているシールの開封を始めようとしているのを横目で見ながら肉まんへとかぶりつく。はぁ~うめぇ!!!
一口、二口と食べる口が止まらないロウとは対照的に隣のリンウェルはまるで時が止まったかのように固まっていた。

「ふぃんへる?」

口いっぱいに頬張った状態で隣の少女へと声を掛けるが反応がない。
もぐもぐ、ゴクリ。口の中の物を飲み込んでからもう一度声を掛けてみる。

「リンウェル?どうした?」
……た」
「た?」
……ちゃった」
「はい?」
「出ちゃった!!!シークレット!!!」

ズイと目の前に何かを突き出されたがあまりの近さに判別が出来ない。グッと身体を引き、距離を取ってから改めて確認するとそれは白いフクロウが描かれたシールだった。
可愛らしいフォルムで描かれたイラストにはロウにも見覚えがある。オウルグミのおまけシールに描かれているフクロウだ。
オウルグミのおまけシールは様々な色をしたフクロウのイラストが描かれている。赤、青、黄色、紫と主に単色だ。これはフクロウが生息する地域によって羽毛の色が異なる事から来ているらしい。全部リンウェルからの受け入り知識だけど。

「それがシークレット?なんか微妙だな」

シークレットと言うからロウ自身、レインボーみたいなめっちゃ豪華な色してんじゃね?と思っていたがまさか白色となんとも特別さに欠ける色だとは思わなかった。だがリンウェルはシークレットが白色な事に納得しているみたいだった。

「微妙なんかじゃないよ!フクロウは生息する地域で羽毛の色が変わるでしょ?だから何色にも染まってない白色は逆に貴重なんだよ!」

興奮気味に説明するリンウェルの気迫に思わず苦笑する。よほどシークレットが出た事が嬉しいのだろう。

「まさかシークレットが出るなんて!これもロウのおかげかな?」
「俺?」
「うん。だってロウって自分の運はないけど、人のお目当てを当てる運は強いじゃん?」

リンウェルの言う通り、ロウは比較的運が良い方なのだがいかんせん、何故だが自分にはその効力を発揮しない特殊な運の良さを持っている。
自分が得をする事がないのなら結果的には運が悪い方なんじゃね?と思ってはいるが。

「だからロウに奢ってもらったからシークレットが出たのかな~!って」

”ありがとう、ロウ!”

それはもう幸せそうな笑みを目一杯に向けてくる。その笑顔に胸の内が少し高鳴ったのが分かった。
……まぁ、この笑顔が見れたなら奢った甲斐があったのかも。ポイントだって勝手に大量に使われた羽目になったけど、そんなものよりいい物が見れたし。
こういうのってなんて言うんだっけ?確かーー。