Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
。
2026-01-18 18:08:49
1740文字
Public
Clear cache
coin
ヒュビビ9作目
付き合っている二人
コインを盗まれるのは、選択権を奪われてしまうほどゾッコンということです(説明しすぎ?)
「はあ
…
。今日はもう疲れました」
「そうだな」
波の音と、風の音。不揃いの足音。それだけの、静かな夜だった。遠くに見える無数の明かりと、鮮やかなふちどりの巨大な半円は、ただそこに佇んでいる。
半歩前を歩く彼に小走りで近づいて、斜め前から顔を覗き込んだ。
「貴方のせいなのです、反省してください」
「返す言葉もない」
尻尾髪が月明かりにあてられて、銀色にひかる。本当に反省しているのやら、応える口調は軽い。
「そう思うなら、今後はあんな行き当たりばったりの行動はやめてほしいのです」
咎めるが、こちらを向いた彼の、甘く細められた瞳は紅かった。
「
…
はあ
…
」あきれて言葉も出ない。
「知っていただろう?」言いながら、どこから取り出したのか、コインを弄び出した。
「開き直るのですか」
「俺は俺だ。本質が変わることはない」
二人の足音に、時折、コインのはねる金属音が混じる。
「
……
不器用な人」
「
…
昔から手先は器用な方だが」
「本気で言っているのですか?」口元に手を添えて、眉を吊り上げる。
「
…
いいや。まあ、なんだ。俺も存外疲れているようだ」
適当に答える彼を横目に、ビビアンは思わずふ、と笑みをこぼした。
「
…
貴方、気づいていないでしょうけど。数年前に比べたら、よっぽど柔らかく笑うようになったのですよ」
「
…
そう見えるか?」わざとらしく、聞き返される。
「ええ」
「ならば、それは君のおかげだな」
「当然なのです。私が一番長くそばに居たのですから」
「
……
」コインが手に収まると同時に、ゆるやかに足が止まった。
「
…
なんて、言えたら良かったのですけれど」遠慮がちに、付け加える。
「もう、あれといた時間より、君との時間の方が長い」
「
……
そうだったのですか?」驚いて、見上げる。
「
…
と、言ったら満足かな」
「
…………
」また踊らされたことに、怒りと呆れで気分が冷えていった。
「おい、勘違いしないでくれ。時間は関係ないという話だ」諸手を上げて、大げさに否定する姿を見て、余計に腹が立ってくる。
「流石に怒りますよ」
「なに。実際、俺は君にこうして甘えているだろう」
「
…
私はあなたのママではないのです」
「当然。君は俺の恋人だ」
「
……
」長い沈黙の後、ビビアンは呆れ顔で深いため息をついた。
「その自信に満ちた顔、本当に、ムカつくのです」
「そう見えるか?」
「なんですか、その言い方
…
」
「いや
…
。
…
正直、君の前では、投げたコインが、どうか何度でも表向きで手の甲に落ちてくれ、と願ってやまないのだよ」
「
…
裏を向いたところで、結末は変わりませんよ」
「
……
」言葉の真意をつかみかねるのか、ヒューゴは不思議そうな顔で、彼女を見つめていた。
「悪い意味ではないのです。結局のところ、選択するのは私たち自身、でしょう」
「貴方が私を選んでくれて、私も貴方を選んだ。それを、コインに委ねた結果、なんて考えるのは、つまらないと思いませんか」
「
……
ビビアン、君、俺に似てきたか?」
「
…
不名誉なのです」
「傷つくぞ?」
「なんて。これだけ一緒にいれば、似てもきますよ」
「
…
正直に言って、あなたのやり方に賛同できないところは多々あります。そう思うたび、何度でも咎めて、叱って、悲しんで。それでも、ずっとそばにいるのは、私の意志なのです」
「この言葉の意味、よく考えてくださいね」
月下、真っ直ぐな思いを告げられ、ヒューゴは惚けたように立ち尽くすことしかできなかった。
「
…………
プロポーズ?」
「誰もそこまでは言っていません!!調子に乗らないでほしいのです」
「冗談だ」
「目が本気で怖いのです
…
。というか疲れすぎです。貴方、何も気づいていないでしょう」
「どういう
…
?」
「ほら」ビビアンの細い指の間からは、先ほどまで彼の手元に合ったはずのコインが出てきた。
「
……
」
「ね。早く帰りますよ、ヒューゴ」
「
……
仰せのままに」
自分には勿体ないと感じてしまうほど、美しくしたたかな彼女の笑顔を眺める。
そんな彼女と過ごす未来が、きっとあたたかいものであると思えるこの夜が、たまらなく愛しかった。
足音は、いつしか混ざり合う。風は優しく、二人を祝福した。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内