2026-01-18 17:49:36
1744文字
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June Bride

初めて書いた悠柳
悠真はヒューゴよりカッコつけすぎないのがいいところで、要らんことまで喋りすぎなのが悪いところです。
度胸はあるから、多分ゴールインはこっちが先。

「はあ~あ、疲れた疲れた
 悠真は地下鉄駅から出るや否や、大きなため息をついて、わざとらしく伸びをした。
「そんなに、何度も疲れたと繰り返さないでください」
 遅れて追いついた柳は、隣に並んで、朝の陽ざしに目を細めながら言う。夜勤明けの二人は、帰る前に何か食べて帰ろう、と朝の通勤ラッシュに巻き込まれながら、やっとのことでルミナスクエアに降り立っていた。
「なんですか。市民を守る立場である執行官が、文句たらたらで歩くのは、体裁が保てないって?」
「違います。いや、違いませんけど。私が余計に疲れたと感じるからです」
 目の下に隈をつくり、弱々しく応える柳に、これは相当彼女も疲労がたまっているな、と悠真は笑った。
「それで、どこ行きます?」
ええと
 互いに回っていない頭で考えても、さっぱりいい案が浮かばない。そんな中、いきなり頭に響く高音が鳴り響いた。咄嗟に身構えるが、道路の向こう、海側の道を歩いていく集団を見て、その理由を知る。
「敵襲ですか!」
 柳はまだ気づいていないようで、もうほとんど薙刀を取り出しかけていた。こんな街中で武器を手に取らないでください、余計騒ぎになるんだから、と呟きつつ、柳の肩をつかんでぐいっと音の方に向ける。
「な!」
「ほらあれ、見てください」
 幸せそうに笑う集団が歩いている。列の中ほどで、純白のロングドレスを着て、照れながらも、居合わせた子供たちに手を振る女性が、ひときわ目立っていた。歓声と拍手が鳴り響く。高音の正体は、ファンファーレだったようだ。
結婚式?ですかね」
「晴れて良かったですねぇ。そういや、セス君があれの警備で駆り出されるとかなんとか言ってたの、今思い出しました」
「素敵ですね
 柳は安心して力を抜いたようで、惚けたようにそれを眺めていた。
こんな街中でやるなんて、物好きですよね。もっと眺めが良くて静かな場所なんて、いくらでもあるのに」イレギュラーな仕事を増やされた治安官たちに同情するつもりで、悠真はそう言う。柳はいたって真面目な顔でそうですか?と問い返した。
「彼女たちにとって、きっとここは大切な場所なんです。それに、祝福の日が、誰かの記憶の中に残るって、幸せなことなのかもしれませんよ」
……。」
 真面目に考えすぎですよ、と茶化すには、あまりにも真っ直ぐな答えだった。
「ああいう幸せを、これからも守っていけるように。私たちも頑張り続けなければいけませんね」
 柔らかい笑顔の彼女は、自分に言い聞かせているようだった。それに無理をしているような様子はなかったが、悠真はなんとなく納得できなかった。どうして、自分はその幸せを享受する気が無いような口ぶりなのか。
月城さんは憧れないんですか」
「え?」
ああいうの」
 柳は少し考えるようにうつむいて、しばらくして口を開いた。
もちろん、着てみたいとは思いますよ。ですが正直、そんな自分は想像できなくて」
「美人なんですから、きっとどんなドレスでも似合いますよ」
……。そう、ですか?」
「ああ、白無垢もありですね。隣に立てるお相手が羨ましいなあ、その時まだ僕が生きていたら、絶対呼んでくださいよ?」
 まわらない頭なのも相まって、口からするすると自虐が出てくる。ああ、間違えたかな、と思って彼女の方を見ると、柳は怖い顔でこちらを見つめていた。
「え?月城さん?」
 怒った顔も可愛いな、と状況にそぐわない感情が浮かんで、彼女に迫られてそれもすぐ消える。
っ!?ちょっと!月城さん、痛い!」
 柳は、無表情でいきなり悠真の足を蹴りだした。彼女は、意外と悠真の扱いが雑なところがある。それは常々感じていたが、こんな流れで非言語コミュニケーションに頼るとは思わなかった。
「暴力反対!おまわりさんこいつです!!」
「本職でしょう」
「これは治安官の管轄でしょ!」戯れながら、なぜか心が満たされていく。否定してくれるのを、いつだって待っている自分がいるのだ。

私が着れるか着れないかは、貴方の態度にかかってるんですよ」
……え、待って、それってつまり……だから痛いですって!蹴らないで!!」