2026-01-18 16:36:59
1340文字
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disgelo

ヒュビビ3作目
割と積極的なビビ。かわいいね。

 柔らかい風の吹く夜だった。もう少し風に当たっていたかったが、そろそろ寝ないと明日に響く。ビビアンは、立ち上がって窓を閉めた。その足で、空になったカップをキッチンに置きに、階段を下る。すると、リビングの明かりがついていることに気づいた。
「ヒューゴ、まだ起きているのですか?」
 確か明日は商談があると言っていたような。人のことは言えないが、流石に3時過ぎまで起きているのはまずいだろう。そんな風だから隈が消えないのですよ。なんて言おうとソファに座る彼を覗き込むと、スマホを手にしたまま眠りこけていた。
「ヒューゴ」
 声をかけるが、起きる気配はない。細く繊細な金色の髪が、彼の表情を隠している。
よく、寝ていますね」
 ビビアンはひとりごちた。こんなふうに、無防備に眠ってくれるようになったのは、いつからだろうか。初めて会った時は、常に壁がある人だったな、と思う。厚い厚い氷の障壁は、共に過ごすうちに、少しずつ溶けていった。それでも、彼はまだ私に多くを語ってくれてはいない気がする。それも許せるぐらいには、今の関係が続いていくと信じられているのも、確かなのだけれど。
「風邪をひきますよ、ヒューゴ」
 肩をとんとん、とたたいてみるが、それでも起きない。
「もう!」
 いくら長年のバイトで培った力があるといえど、ビビアンの体躯では眠っている成人男性を運ぶことは出来ない。諦めてここで眠らせておくか。ああ、そうだ。今こそこの間の仕返しをするチャンスなのではないか。それに、眠り姫はそれで目覚めると相場は決まっている。
彼の前髪をゆっくりとはらい、その表情をあらわにする。幸い、穏やかで安心した。苦し気に眠る彼は過去に何度も見てきたが、それでも慣れない。どうしても苦しくなる。
腹が立つほど整った顔立ち。長い睫毛、すっと通った鼻筋、私と同じ、左眼のしたのほくろ。目線をゆっくりとうつしていく。こんなにまじまじと眺めたことは無かった。

 見つめれば見つめるほど、今からしようとしていることが恥ずかしく感じてくる。瞳を閉じて、彼の頬に手を添え、意を決して顔を近づけた。
、ふ
 心音がうるさい。ふらふらと彼から遠ざかった。耳の先まで熱が巡っている感覚がある。
ビビ?」
 ようやく目覚めたヒューゴは、ふわふわと口の中で転がすようにその名を呼ぶ。まだ寝ぼけているのか、半分閉じた瞳でこちらを見て、首をかしげた。
「は、はあー!やっと起きましたね!まったく、次起きなかったら傘の餌食にしてやろうかと思っていましたよ」
どうした、そんなに興奮して」
「こ、興奮なんてしていません、変な言い方しないでください」
そうか、悪かったな……
 そう言いながら、ヒューゴは立ち上がり、去り際にビビアンの髪に優しくキスを落とした。

「ありがとう、マイレディ。良い夜を」得意げにほほ笑み、颯爽と立ち去る。

 ビビアンは固まったままその背中を見送ることしかできず、ドアが閉まりかけて、ようやく言葉を発せた。
「な、な!!あなた、いつから起きていたのですか!!」
 怒りたいのか逃げ出したいのかわからなかった。確かにわかることといえば――今夜は眠れない。