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山本
2026-01-17 22:28:05
4095文字
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幼馴染シリーズ
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幼馴染との恋愛論・前日譚
しぶにて連載中の現パロ幼馴染夫婦🐯🕒♀の付き合うよりももっと前のエピソード。
ダメ人間製造機🐯がフラれた直後の話。
「ねェ、尽くしてくれるのは嬉しいんだけどもう少し放ったらかしてくれない?このままだと人として駄目になっちゃいそうなの、私」
ピンクグレージュに染めた女性が躊躇いがちに告げた。場所は駅のほど近く。時刻は冬の夕方にさしかかった頃で、女性はアルバイト先へ彼氏に送ってもらっている途中である。
「何か困るのか?将来の話か?大丈夫だ、ちゃんと責任をとって一生涯おれが何でもしてやるつもりだ」
躊躇いがちに、しかし思い詰めたような様子で言った恋人のミランダに恋人のトラファルガー・ローが心底疑問といった様子で怪訝そうに首を傾げる。
髪色を変えようか悩んでるがお金使い過ぎちゃってと言った彼女のために美容院をデートに組み込み好きな髪色に変えられるよう連れて行ったのは今日だ。かかる費用だってミランダが負担しなくていいようローが支払い、困惑するミランダにプレゼントだからと押し切ってカットやヘアカラーからヘアケア、他ヘッドマッサージなど諸々込みで予約をした。
ひょっとして何か足りなかったか、もしくは自分が同行したのがマズかったかと考えたが問題視しているところが決定的に間違っている。ミランダは何でもしてくれるローに、このままでは自分がやってもらうのが当たり前のダメ人間になりそうで怖いと思っているのだ。
しかしローの勘違いと暴走は止まらない。
「おれが一緒に行ったのが良くなかったか?それなら今度からは一人でゆっくり行けるよう手配しておく。もちろん送り迎えはするから心配しなくていい、不自由なんてさせない。それともバイトか!?バイトが憂鬱だって言うなら欲しいものは言ってくれりゃある程度は」
「そういうとこ!!そういう何でも満たそうとしてくれるのがダメ人間になりそうで怖いの!私は貢いでもらって何でもやって欲しいんじゃないの。自分でやりたいこともあるし、ダメな人間になりたいんじゃないの!ごめん、もう別れよう。このままだと本当にダメ人間になりそう」
何を言っても尽くす方向での修正しか提案してこないローに、ミランダは大きな声で叫ぶように言い放ち視線を下へ向けた。ローはショックで頭は真っ白だ。
「な、何でだ?せめて理由を!」
「ここまで言ってわかんないなら価値観が違うよ。ごめん、バイバイ。連絡先は消して」
ミランダは苦しそうに顔を歪め言い放つと、ローに背を向けてアルバイト先の裏口へ駆け込んでいった。それを偶然見かけてしまったのがローの妹、ラミ。うわぁといった顔で見て、駆け寄ってきたサンジに向け自身の口に人差し指を当て静かにするよう言っている。
しかし状況説明をするのが間に合わなかったか、サンジがローの後ろ姿を見かけて暢気に声をかけてしまう。
「あれ?ロー!!どうしたんだよこんなとこで。おーい!ロー!!」
ローが振り向くと気まずそうな顔のラミと元気に挙げた右手を振っているサンジ。サンジは何も知らない様子でローに向け流行りのポップコーンを買ったと言っていて、ラミは気まずそうにローをチラ見している。
「どうしたんだよこんなとこで。道にでも迷ったか?てか聞いてくれよ!すっげー並んでやっと買えたんだ!!今流行ってんの知らねェ?コニスポップってポップコーン屋さん。ローも食ってみろよ、パンプキンキャラメルオールスパイスミックス!看板商品なんだって!」
パタパタと駆け寄ってきたサンジに、止めきれず渋々着いてきたような気まずさの権化と言わんばかりのラミ。ニコニコと無邪気にストライプのポップコーン容器を差し出すサンジに、本来ならば食べる気力も湧かないが一つとって食べると思ったより美味しくて目を丸くした。
「えへへ。美味いだろ!?甘いだけじゃなくてスパイスの刺激もあって、更にかぼちゃの種!パンプキンシードとピンクペッパーが食感と味のアクセントに入ってて結構ゴージャスって噂なんだよ、コニスポップのポップコーン!!散々並んでやっと買えたんだ〜!ほらラミちゃんも食べて食べて!」
散々並んだと言いながら自分は食べず味も伝聞形。ローやラミが食べるのを見て嬉しそうにニコニコとしているサンジに、周りに食べさせるばかりで本人が食べないのはもったいないとひとつ摘んで口に運んでやる。
「んむ
……
うまっ!!やっぱすげェな!美味しい!コニスちゃん綺麗だったもんなァ〜」
口に運んでいってやって食わせれば味を褒めつつ店員なのか、誰かを絶賛し始める。中学三年生の妹のような幼馴染のその姿に、何だか微笑ましくなってきてちょっと表情が緩んだ。
「兄様、サンジちゃんったら並ぶのは疲れるだろうからって一人で並んで買ってきてくれたのよ。優しいわよねー?」
ローの表情の変化に気分が少しは落ち着いたらしいと察してラミが話しかける。まるっきり何かお強請りをする時の様子だったが、敢えてその流れに乗ってやることにする。
事実、たった今彼女にフラれたというのにサンジの無邪気な明るさに救われた気もしたのだ。暢気で無邪気な姿に落ち込む気持ちを掬い上げられ、仕方ないと思えるくらいにはなれた。この短時間で。
「そうか。なら、そんな大事なポップコーンを分けてくれたんなら礼をしなきゃならねェな。何がいい?外で飯を食って帰るのも、何か欲しいものでも何かひとつずつ、二人の言うことを聞いてやる」
「本当!?サンジちゃんどうする?アレ買ってもらえるわよ!!」
「えっ!いいのか!?でもラミちゃんあれ高かったし!」
「大丈夫よ!兄様あちこちで家庭教師しててお礼もらってるものねェ〜?」
ローの言葉にラミがサンジを焚き付けて、躊躇するサンジを煽るように暴露する。ローがどこかの家庭教師派遣組織に属さず、親の知り合いや親戚などへ時給をもらって家庭教師をしていると知らなかったサンジが目丸くして驚いた。
なので、苦笑で飛びついてきたラミの頭に手を置き押して剥がし口を開く。
「お礼じゃなくてバイト代だ。まァ、だから収入は一応ある。バカみたいに高いもんじゃなきゃ買えるから取り敢えず言ってみろ」
フッと笑顔で言うと頭を押されたラミは素直に離れてサンジがオロオロと狼狽える。
「もしかしておれがローに勉強教えてもらってんのって悪かったんじゃ
……
」
「何でだ?」
「だってお金払ってねェのに」
「アホか。お前は妹みたいなモンだしジイさんには昔からメシを食わせてもらってる。だからおれもラミも父様や母様が忙しくなっても困らなかったんだ。それで更にバイト代を寄越せなんて言わねェよ」
小さく笑って金色の頭に手を置きくしゃりと撫でる。すると、オロオロとしていた幼い顔がぱあっと明るく晴れる。
「じゃあ、これからも勉強見てくれるか!?」
「ああ、当然だ。で、何か欲しいモンや食いたいモンはあるか?」
「靴!厚底靴が欲しいんだ!でも高いから買えなくてよ」
サンジの口ぶりにこの辺だとあのブランドの靴かなと推測する。そこへラミがサンジに腕を絡める形でくっつき、ローに上目遣いで強請ってきた。
「私はサンジちゃんとお揃いでうさ耳のコートが着たいの、でもお年玉じゃ足りないし
……
二人分、ダメ?」
ローに向け却下されないとわかってるかのように強請るラミと慌てて自分はいいと訴えているサンジ。その姿にダメなんて言えなくて、仕方ないとばかりに笑みを零すと二人の頭を撫でた。
「わかったわかった。どっちも買ってやるから先にATMに付き合え。いいな?」
「やったー!!さすが兄様!」
「ええっ!?いいのか?やっぱり靴はいいよ、おれ!」
ラミとサンジ。同じ歳なのにそれぞれ違う反応をする二人の違いが面白いなと感じてちょっと笑う。
サンジの頭を撫でラミの頭をちょっと強めにポンと撫でる。ラミは悪戯っ子のようにペロッと舌を出して笑い、サンジを見て微笑んだ。
「それなりに貯金はしてるからたまに買ってやるくらい困らないからいい。それに二人と買い物なんてのも滅多になくなってきたしな。行くぞ」
歩きだしたローに顔を見合せたラミとサンジがぱあっと笑顔になり喜んでローの両脇に飛びつく。
「兄様!私ホワイトモカが飲みたァ〜い!」
「ローロー!甘いの苦手じゃなかったよな?今度のバレンタインすっげー美味しいチョコ作ってやるよ!!ローってもう酒大丈夫だっけ?」
「兄様車で来てるのよね?やったー!帰りは兄様の車ね!電車で立ってなくて済んだァ〜」
「ローが酒イケるんだったらジジイに
……
いや!おれが自分で考える!!待ってろよ、ロー!おれが自分で美味いチョコスイーツ作ってやるからな!あ。ほらポップコーン食えよ。ほらラミちゃんも!」
「ありがと、サンジちゃん。サンジちゃん、今夜泊まっていってよ!一緒にさっきの話の続きしましょ!」
「泊まる泊まる!おれもまだ話せてないこといっぱいあるんだ!!」
「楽しみ〜!あ。兄様、サンジちゃんとお揃いのパジャマ着たァ〜い」
「えっ。お揃いのパジャマ?ちょっと待ってね、ラミちゃん。財布ん中いくらあったかな」
「大丈夫よサンジちゃん!ね?いいわよね?兄様!」
「わかった。わかったから少し静かにしてくれ。どっちが何を言ってるのか
……
」
「えー!私たちそんなにうるさい!?兄様ひっどーい!」
「待った待った待った!ローおれパジャマくらい自分で!ああ!ちょっと誰かポップコーン持ってくれ!財布がバッグから出せねェ!落としちまう!」
「サンジちゃん貸して。私がお財布見てあげる!
……
うーん、パジャマ買うには足りないかも。ね、兄様。お願い」
「いやいやいや!そこまで買ってもらったら悪いって!」
「兄様〜!」
「いやいや!」
「わかった!わかった、買うのは構わねェから少しゆっくり交互に話してくれ。頼む、おれは聖徳太子じゃねェ」
右側のラミに左側にサンジ。二人の中三女子に振り回され二十歳の大学二年生としてすっかり形無しのロー。しかし、彼女にフラれたばかりなのに無理せず笑っていられるのは間違いなく二人のお蔭で、敵わないなと思いながら声を出して笑っていた。
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