山本
2026-01-17 15:02:36
2224文字
Public 手負いの野良猫と外科医
 

手負いの野良猫と外科医【6】

外科医(人間)🐯×元野良猫🕒♀予定の現パロファンタジー。






風呂は一言で言っててんやわんやだった。
お湯がかかることを大暴れで避け逃げ回るサンジ。風呂の感覚が戻ってねェからもう少し待てと怒鳴り逃げ回る姿に、前は風呂に入ってたのかと思いながら少しずつ慣れさせ体を洗ってやり、髪に顔にと洗ってやってまるで介護だ。入浴介助なんてもんじゃねェ。
だが、それも少しずつ感覚を思い出すのを待ってやれば構えるモンじゃねェと思い出すのはすぐでおれより寛いで湯船に浸かってた。
おれは湯船に浸かるのがあまり好きじゃない。あの脱力感が苦手で長時間は浸かれない。
湯船が気持ちいいってサンジに付き合って長風呂をして、やっと上がったらドライヤーするんだろって座って待ってるサンジに服を着せてドライヤーして。風呂ってだけで上がって全部終わるまで一時間半近くかかった。まあ、湯船に浸かってたのが一時間近いんだが。
で、結局下着も何も着けてねェサンジに買ってやらなきゃと通販サイトを開いたところで気付いた。ブラなんてもんのサイズの測り方がわからねェ。
結局、戸惑ってテンパってフリーサイズって調べてもどんな体型でも大丈夫なんてモンでもないらしく断念。理解から遠い存在過ぎる女物の下着に悩み、家から出ないなら問題ないと思い直すことにして服の件は終了。考えるのをやめた。
そこから弁当をデリバリーしてサンジにおれが和食派でパンと梅干しが嫌いだってことを教え、いつ猫に戻るのかを確認。が、サンジにもいつとは言えないらしく、戻れるようになったらってことらしかった。
何てアバウトな。だが、まあ家から出なきゃいいと思ってサンジにそう言い、夜もふけた頃ベッドに向かおうとして立ち止まった。
「ついてくるのか?」
「だっておれの寝床この格好にゃ小せェだろ」
言われてサンジが指さしたサンジの猫サイズの寝床のクッションを見る。確かに人間が寝るには小さ過ぎる。まあ、その通りだが。
……わかった。他にベッドはねェからおれと添い寝だぞ」
疲労感に早々に諦めを打ってベッドに向かう。おれの寝室は二階。黙ってそこに向かってベッドに入ってサンジもベッドに入れる。サンジの服装はおれの渡した服。ダボダボでデカくて体の華奢さにちっとも合ってねェが気にならないらしい。
ベッドに入ったサンジに薄手の掛け布団を下ろして目を閉じようとしたところでサンジが広めのベッドで掛け布団の中に潜り込み違和感を覚えた。
おれの胸に頭を乗せて体を丸めて寝に入る気配。猫だからなと思えば納得ではあるが、人間の体でと思うと複雑な気持ちになる。
「苦しくねェのか」
「ん?何で」
「いや、布団に潜り込んで苦しくねェのかと」
「全然。何かマズかったか?」
問われて何とも言えず、何もと返すと掛け布団を下ろして仰向けで黙り込んだ。
サンジは話しかけられたことで一度変わった姿勢が気になるのか、掛け布団の中でもぞもぞと動いて態勢を変えてる。それがやっと納得のいく位置を見つけたのか、おれの股間付近に陣取って大人しくなった。
何故そこ。
ものすごく気になる位置だったがおれも眠い。もう聞くことも諦めて目を閉じ、眠りについて朝を迎えた。
朝、アラームでゆっくり目を覚ます。
おれは比較的寝起きが良くない方らしい。他人と比較したことがねェから言われたことを信じるならって注釈付きだが、寝起きは悪い方になる。
ぼんやりする意識で手をさまよわせてスマホを探し、変化とこに変な感触がと思って掛け布団を持ち上げ覗き込む。と、そこにはおれのみぞおちに頭を置いて寝て、下腹部から股間にかけてを手でフニフニ押してるサンジがいた。
寝ぼけた頭で金色の後頭部が誰かわからず一気に覚醒。大声で誰だと言いかけてサンジだったと思い出す。サンジはうにゃうにゃ言いながら両手でおれの朝勃ちの股間をフニフニ押すように揉んでて、どういう状況かと混乱した。
だがまず、そんなとこを揉まれて朝から変な気分にさせられても困る。なので極力静かに体を起こすとみぞおちからサンジの頭が落ちて目を覚ました。
おれが着る部屋着の腹の辺りの生地がぐっしょり濡れて皺が寄ってる。まるで吸われたみたいな生地のよれ方に、寝ぼけて母猫に甘える感覚で吸ってたのか?と、思うと寝起きのサンジに怒れなくなってしまう。
「おはよ。ふあぁ……よく寝たなァ」
……いい夢は見られたか?」
「え?多分。いや、何で?てか何の話?」
思わず聞いたおれに寝起きで困惑して戸惑うような様子のサンジ。まだ母猫が恋しい歳なのか、早くに母猫と離れたせいか。そう思うと不憫に思えるのに、フニフニ揉まれたせいで微妙な感覚の朝勃ちに微妙な気持ちだ。
「まァいいけどよ。おはよ、朝メシどうすんだ?顔洗えよ」
するりとおれに抱きついて頬を擦り寄せ耳の下をペロペロと舐める猫流コミュニケーションの強いサンジに複雑な感覚に陥る。これは精神衛生上良くねェ。いつか間違いを起こしかねない何かがある。
「わかった。まずトイレに行くからお前は先に顔を洗ってこい」
「了解。ちゃんと起きろよ?シゴトってとこ行くんだろ?」
おれの頬をペロッと舐めてベッドから降りていくサンジの背中が見えなくなってから大きな溜息を吐き出し頭を抱える。
……まずトイレでヌイておくか」
すっかり朝って意味だけじゃなくなった息子に自己嫌悪しつつ、今後はこうなりにくいよう自家発電もこまめにしようと思い直した。