Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
asahito
2026-01-17 09:31:41
5076文字
Public
Clear cache
Corpse Reviver⑦
前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
一部R18です
続編である今作の第1章(錦上京キャラ中心)はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/14625442
一部R18です
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
何だかんだ言ってイオンモールって便利ですよね。
蛇に喩えるのも悪いとは思っても、行動の端々にそれらしい振る舞いや特徴を見てしまうと。
だんだんと全てがそれに紐づくように視えちまうのは。ユイマンって奴がぶっ飛んだ奴であっても失礼かもしれない。
だが度数30の酒をこう何杯も水の様に飲まれると。急性アルコール中毒で倒れて救急車を呼ぶ羽目になりそうなので。流石に止めるべきだろう。
「ねえ駒草さん」
「はい?」
おかわりのグラスを置くと声を掛けられた。ショートグラスのカクテルはすぐに飲んでもらいたいからそうなってるにしろ。
すぐ飲み干したりしないように目は光らせる。
こいつ、飲むスピード一杯目から全く変わってない。会話をしていればその間飲むのは抑え込めるので話は聞いてやろう。
「話したければでいいんですけど、いつからこのお店始めたの?」
「この店ですか。私が店主になってからは数年ですけど、元々は違う方の店でその方が高齢を理由に譲ってくれまして」
オーナーが経営していた店を引き継いで数年。私が受け継ぐときに色々あったが、往年の客が足は運んでくれることもある。
一緒に年を取れば客も引退はするが、それでも元気な人はやってくる。店も生き物みたいなものだ。入れ替えしなきゃ、いつか腐りゆく。
「設備を今の環境に合わせるのは大変ですが、まあなんとかやってます」
何か気になる部分があるのかと思いグラスを拭きながら答えてやると。ユイマンの方はうちの店中を見渡し色々なものを眺めているようだった。
その目は酩酊ではなくしっかりしており。とても酔っているようには見えない。どちらかというと目が据わってるようにも見える。
「そっか
……
だから椅子とか棚が懐かしい気がするのね。長くあるお店って素敵」
「そう思ってくださるなら維持してる甲斐がありますよ」
私が上京してきて、仕事がうまくいかず自棄になって腐っていた頃に出会った店。あの頃の自分を、誰かに。魅須丸にすら語ったことはないが。
もしもあの頃のやらかしがうちの店にまた戻ってくるとしたら。それは自業自得しか言えないだろう。
そうなるのも私のせいであり。そういったツケはどこかで払わされるのは珍しくない。
「あの埴輪も駒草さんの趣味?」
窓際に並んでいる袿姫から押し付け、いや貰った小さな埴輪たちは、相変わらず陣取って間抜けな面とポーズでうちの客を眺めてる。
「
……
あれは、お客さんから頂いたものですよ。陶器や陶芸を勉強されてる方もいましてね」
「色んな人が来てるのね。あの埴輪とか可愛いなあ」
呑気に窓際の間抜け面を可愛いと言ってるが。その作者を目にしたらどんな顔をするだろう。というか、会話成立自体するのか。
そういや袿姫と磨弓は最近来ないが何をしているのやら。学業で忙しいのであれば結構なことだが、あいつらも突然来て引っ掻き回して帰っていくタイプのため。
正直いない方がうちの店が平和なのは事実だろう。
私の水飲めお小言が流石に効いたのか、ユイマンは水を今は飲んでいる。そうだ、少しは体を休めろ。
あとは少し何か食べさせてやらないと胃に悪いんだが。注文なしに追加を出すわけにもいけない。
「それにしてもお酒強いですね。普通の人なら一杯で結構酔うカクテルなんですが」
「実家の家族がみんなお酒が好きで。私も飲める年齢になったら色々飲ませてもらえたからかしらね」
だから、お酒に躰が慣れてるのかもと言うが。下戸は下戸のままだから生まれついての体質だろう。今なら蛇とか蟒蛇の化身って言っても信じるぞ。
家族と仲の良い話を聞くと。円満な家庭の生まれだというのが分かる。私は早くに両親を亡くして祖母に育てられ、高校くらいで祖母も亡くした以上は。
それっきりの天涯孤独故。そういった帰省などの気持ちがあまりわからず。家族というのも理解が乏しいのが客との会話で感じることがある。
「あと前頂いたお酒、美味しかったですよ。磐永さんにもありがとうございますとお伝えください」
「気に入ってくれたなら嬉しい。阿梨夜にも伝えておきますね」
普通の返答の中に。一瞬の違和感を見逃すような阿呆ではない。水をまた口に含むユイマンは明らかに動揺した。
「あのお酒すごく地元で有名な酒蔵さんのお酒なんです。見学もできますよ」
試飲もたくさんできるし地元でしか流通してない酒もあると。饒舌に酒の事を語ってくれるのは、阿梨夜から話題を逸らすため。
「車で行かないといけないのが辛いですねえ。酒が有名なところはみんなそうだ」
だからこそ私もそちら側に話題を合わせるが。なんでこんな、阿梨夜が禁句みたいな会話ゲームを延々と蛇の前で繰り返してるんだ。
その酒飲んだら、もう帰らせた方がいいだろうか。
「そうなの、車がないと地方って本当足がなくて
……
最寄りのショッピングモールも車でしか行けないから子供の頃は山が遊び場だった」
「私も似たようなモンです。廃坑の近くだったんで、結構地元の不良とか廃墟マニアが肝試しに行ったりして事件になったり」
私の場合ショッピングモールすら手の届く距離ではなかったが。地方出身者の田舎自慢というのは、本当似たり寄ったりだな。
ショッピングモールと、国道沿いならまだある程度有名チェーンがあるなら救いはあるだろう。ネットである程度買えるにしてもそう言うのは別の話だ。
山出身とはいっても生まれが違えば思い出も違う。それでも、共通の思い出もある。私は過疎の生まれなので同い年の友人もあまりいなかったが。
ユイマンの思い出の中にはいつも、その隣に阿梨夜がいるように聞こえる。
「そういうの好きな人はすごく好きみたいね。怖くないのかしら」
レトロが持て囃されている時代とは言え。廃墟と思っても実は所有者が遠方にいて管理を怠ってるだけだったり。
中毒者や、家のない奴が勝手に住み着いたりしているので近づくなとさんざん言われてたが。それでもまだ入る奴は絶えないのだろうか。
動画サイトでも勝手に根も葉もない噂を立てられて曰く付きの廃墟にされてる所もあり。うちの地元もそういうので頭抱えてそうだな。
「お化け屋敷に入るのが好きな感覚、みたいなものでしょうか。変なモノを食べてのたうち回ってる配信者とかもいるでしょう」
味は美味だが食べ過ぎると死に至る危険性があるとか、変なモノが躰から流れ出すとか。
「そうね。でも私も小さい頃山のキノコを食べようとして阿梨夜に止められた事も結構あったから人の事言えないかも
……
」
「
……
」
コイツがなんで今まで無事だったかを瞬時に理解した。阿梨夜の気苦労がありありと浮かび。早く家に帰ってやれと本気で思った。
「今は大丈夫よ。キノコもスーパーで流通してるものしか買わないし、地元だと名人の人が判定してくれるから」
本当小さい頃って怖いもの知らずよねー、と笑って誤魔化すも。笑えない話である。
「まあ、山菜採りでスズランとか水仙を間違って持ち帰る方もいますから
……
要は素人判断は危険ってことですね」
毎年そういったニュースを聞く身としては。何故大丈夫だと思うかが理解できないが。AIに聞いて大丈夫だと言われた、という話も出ているため。
いつか私のカクテルもAIに質問されて判断されるような時は来るだろう。レシピはその時正しく伝わるのだろうか。
「
……
そろそろ帰ろうかな。お勘定お願いします」
阿梨夜、という名前を出した途端蛇の目は普通の目に戻り。この会話は私の勝利で終わった。
紙に書いた値段が間違っていないかを見るが。とても一人で飲んだ時の値段ではないと改めてコイツの肝臓の力に驚く。
払えない額ではないにしろ。この辺の回らない寿司屋の一番いいコースくらいの値段はするぞ。
「これでお願いします」
心配など無用で。釣りの出るくらいの札を乗せると、ユイマンは笑いながら美味しかった、と可愛らしく私に伝える。
私はお釣りを用意しながら色々と考えて。外の通りの喧騒を聞き、やはり今夜お節介は焼いてやるべきかと決める。
小銭を渡すとユイマンの手はしっかりとそれを握っていた。飲み過ぎてはいないというか、精神がそういう状態ではないが正しいか。
「あの、一つ聞きますけど」
「?」
「
……
本当に今日は真っすぐ家に帰る?」
そう尋ねると。ユイマンはぎゅっと鞄のベルトを握って俯く。酒で少しだけ抑えている精神が弱くなったか。
「勿論帰ります。駒草さんそんなこと聞くなんてどうしたの?」
「あんまりお客さんのことは詮索しちゃいけないんですが
……
何となくそんな気がしたんですよ」
今夜このままコイツは家に帰るとは思えず。だからと言って、何も言わない奴にパートナーと何かあったのか尋ねるのも失礼極まりない。
時間としても曜日としても酔客の多い時だ。一人で歩かせたら阿呆が寄って来て警察案件だろう。
「帰りたくない気持ちは止めないけど。ちゃんと相手に連絡はしとくべきだ」
カマを掛けた質問ではあったが。図星ではあったようでユイマンは私の顔を見る。
「
……
駒草さん、分かるの?」
「まあ何となく。客商売やってれば分かりますよ」
失恋して阿呆の様に喚く男や、恋しさあまりの泣き上戸を初対面で見せたあんたのパートナーに比べれば。よく抑えてたとは思うが。
それでも人の纏う煙のようなものは、本能的に理解できる能力が私にはある。幼い頃の苦労と、やらかしと、商売で培った能力だ。
「阿梨夜と今顔合わせたくなくて
……
だから、今夜はどこか一人になりたくてここに来たの」
うちの店は避難所か。もし、阿梨夜も同じ考えでここに来たらとか考えなかったのか。そんなことも考えられないくらいに、怒っていたのか。
「それにいまの時間この通りを一人で歩くのはダメだ。この脇道通れば大通りに出るから、そこから交番のある通り沿いに駅に行きな」
パトロール中かもしれないがあの施設の前なら多少は抑止力にはなるだろう。万が一トラブルになるとしたら、大方は阿呆どもからコイツが狙われるか。
或いは、コイツがぶっ飛んで何か暴力行為に及んだりしないかだ。
猟銃の免許はあるとは言え今は持ってないからそういう射殺の危険はないが。かつて鞄で相手をぶん殴った身近な奴の顔を思い浮かべ。
多分ユイマンって奴もキレたら、同じ系統な気がしてならないのだ。魅須丸と同じ系統。
「うちでタクシーの手配もできるし、頭冷やしたいなら駅前のホテルにでも泊まる方が賢明だ」
CMもやってるようなある程度健全なビジネスホテルなら、大丈夫だろう。とにかくコイツを今夜安全なところに連れて行かないと。
トチ狂った阿梨夜って奴が、本当に何をしでかすやら。
なんで部外者の私がこんな痴話喧嘩連中に親切にしてるかはよく分からないが。うちの店のせいで客に怖い記憶を残すのは胸糞悪い。
「ホテルの予約アプリとかはある?」
それがあればこの周辺のホテルを探してもらうか。私の知っているビジネスホテルを検索してもらった方がいい。
尋ねてみるとユイマンは予約アプリはあるというので最寄り駅検索をしてもらう。
「ホテル
……
駅前のところは空いてるみたい。今夜はそこに泊まります」
「なら今私の目の前で予約して」
強い口調で近くのホテルの予約を促す。流石に私の剣幕に気圧されたのか、予約アプリで完了通知が来た画面を私に見せる。
「ちゃんとできてるね、気をつけて帰るんだよ」
ため息は安堵か、呆れからか。とにかく今夜は安全に帰ってくれ。
無事に全員朝を迎えりゃ何とでもなるだろう。
「ごめんなさい駒草さん。本当に親切なのね」
ぎゅっと私の手を握って素直にお礼を述べて来るが。その無邪気さと勘違いを誘発する要素に。私はひたすら阿梨夜に対し同情の気持ちしか起きなかった。
同性同士であっても手を簡単に握っては駄目だろう。しかもその顔立ちで。
「阿梨夜にもちゃんと連絡は入れておくから」
「
……
そうですね、その方がいい」
握っていた手を離し店を出る。私も外に出て見送ってやると、笑顔で手を振ってユイマンは脇道を歩いていく。
幸い脇道は店ではなく会社の事務所系列のビルのため人はおらず。ユイマンが大通りの人込みに混ざったのを見届けた後に。
私はまた大きなため息を吐き。煙草が吸いたいと心の底から思った。
続く
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内