イヌノカニ
2026-01-17 01:22:42
8415文字
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【創作BL】キューピットは、タイムマシンに乗ってやってくる。

・ジェットコースターがタイムマシンになっているという噂を信じて毎回乗りに来る受け
・未来から来たという攻め

SF要素はふんわり知識。展開は継ぎ張り

どうしてこのタイトルを付けたのか、思い出せない。ここで書かれていない思いついた結末から付けたと思うんだけれど、それが思い出せない。

メモ
26/02/03から記録
同日:修正

何時〇〇分
第三便のジェットコースターは
タイムマシンに、変わって時間が戻る。

そう言われているジェットコースターに毎週金曜日、花金と言われている曜日に僕は、過去に戻ることを期待して、そのジェットコースターに乗る。

入場料はない古びた遊園地の、回数券を自販機式のチケット売り場で購入している。

別に過去にいいことがあった訳じゃない。
ずっと平凡な人生だった。
特別に暗いことも、特別に輝かしい記憶も、なにも持っていない。
そう、他人が経験しているようなことは何も持っていなかった。
ーーだから、過去に戻って、やり直せれば、特別な何かになれることを期待している。

ガタン、とジェットコースターが不自然にコースに乗り上げた音がする。最初はこの振動に期待で胸を膨らませたものだったが、今ではもうただの動作だということを知っている。ジェットコースターが進む。目の前に座っているカップルが「あんまりスピード出ないね」とガッカリしたように会話をしている。
こんなスピードではきっと過去どころか、空を勢いよく駆け抜ける鳥にだって負けるだろう。申し訳なさ程度の坂を駆け抜ける。そうするとあっという間に終わってしまう。

たった5分。
850円
5回の回数券で、4,000円。

くだらない。
くだらないのに、やめられない。

楽しそうに笑い合うカップルを横目にアトラクションを降りる。すると、いつものように遊園地のキャストが「ありがとうございました。お気をつけて〜」と陽気に挨拶をするのだ。今日も、

「ありがとうございました。お気をつけて〜」
「はあーい!」

陽気に答える低い声が聞こえた。
驚いて振り向くと、向こうも驚いたように目を見開くと僕を見て目を細める。

「成功した、成功した、成功した!」

そう何度も繰り返しながら言うと、僕を強く抱きしめた。

「やっと、会えた」

耳元で啜り泣く声が聞こえる。
状況が読み込めずに呆然としていると、キャストが慌てた様子で彼を引き剥がした。

「ちょっ、なんなんですか、あっ違う、お客様の迷惑行為になるので、やめてください」
「よく聞け、俺」
「俺?」
「このジェットコースターは来週の金曜日、夜の第三便で崩壊する。不自然に乗り上げるレールがあるんだ。そこが外れて一気にだ」
「は?」
「そこに乗っている客は一人、お兄さんあなたです」

二人の掛け合いを傍観していたところ、急に話を振られて、訳のわからないことを言われても出てくる言葉は「え?」だけだった。つまり、俺は来週……

「お兄さん、毎週金曜日に来てますよね」
「えぇ」
「俺は貴方のことがずっと気になっていました。どこか寂しげで、ほっとけない気持ちになるのに、声をかける勇気がなかった」
「ちょっ、アンタ急に何を……

目の前の男は急にキャストの彼に向かって指を指す。
「それが、あそこにいる俺です」

「え?」

僕は驚きを込めて、キャストの彼は図星を突かれたような声で同時に言う。

「お兄さん、どうしてももう一度僕は貴方に会いたかった。そのために未来から来たんです。絶対に来週の金曜日はここには来ないで。もし、お兄さんがあの噂を信じて過去に戻りたいと言うのなら、その方法を教えます。その代わりに一つだけ、俺の願い事を聞いてくれませんか」

状況が全く読み込めないまま、頷いた。

「俺……未来から来た俺と、今そこにいる俺と、デートしてくれませんか」
「デ、デート!?」

キャストの彼が大きな声で叫んだ。

「ちょ、俺は確かにこの人の事が気になっているけれど、恋愛感情はないというか、ただ」言い訳するようにゴニョゴニョと言っている彼の言葉を遮って「分かっているから大丈夫だよ。そもそも、僕は彼の言うことを信じた訳じゃないんだ」そういうとキャストの彼は、ホッとしたような、少し残念そうにしていた。

「でも僕は嘘でも良いから、教えて欲しい。……とても僕は退屈な人間なんだ。その話を聞いても、来週またこれを乗ってしまうだろうくらいね」

二人は悲しげな表情を作り何か言いたそうにしたが、すぐに口をキュッと結んだ。そんな仕草が全く一緒で、本当に二人は同一人物なのかもしれないと思った。

「僕は君とデートするよ。スマートに出来ないかも知れないけれど許してね」
なにせ、人付き合いが苦手過ぎてこの歳まで恋人ができたことはないのだから。

「お、俺がエスコートします」

顔を真っ赤にして手を差し出す彼が、可愛く思えてしまった。見た目は三十代後半くらいに見えるのに、急に20代前半の若い男の子のような、純粋で眩しい、自分にはない輝きを持っていた。
頭の中には自分への失望と、他人への羨望と、仕事の不満しかない自分とは大違いだ。きっと職場と狭い家を行き来するだけの小さな世界にいる自分とは違い、広い世界で生きているのだろう。時空を超えているらしいのだから、それもそっか。

その手を握り返した横から、もう一つ手が添えられた。
「お、俺もやっぱり行きます」
さっきの彼と同じようにキャストの彼も言った。

「エスコート、任せてください」

ふふと空いている手を口に添えて笑う。
こんな平凡な冴えない僕に、こんな事を言わずに同世代の女の子に言えばいいのに。

「よろしくね」

そう言った僕を二人は顔を真っ赤にして口を開けて見ていた。

並んだ二人の顔を見ると、ソックリだということに気がつく。ただ、よく見ると首にある三連に並んだホクロが、左右対称の位置にあった。

彼らはとてもよく似ている。
年齢が異なっているが、それは、まるで鏡写しのようだった。



高級レストランに連れて来られた僕は、少し緊張している。ウェイトレスが席を案内して、イスまで引いてくれた。

渡されたメニューをくまなく見ていくが、価格が載っていなくて冷や汗が出てくる。

「ここ高そうだけど、いくらくらいするのかな」

ウェイトレスから隠れるようにコソコソと話す。
今月はいくら使っただろうか。消えていくのは生活費くらいで高い買い物はしていないが、来月のカードの支払いが今から心配になってくる。

「大丈夫です。俺は未来から来たんですよ。俺自身の貯金額は把握済みです。こっちのフルコースを二人分頼んで、ワインを二人分頼んでも、問題ないくらいにはあります。最期のデートくらい格好つかせてください」

そう目尻を細めて笑う彼は、僕に敬語を使っているのに、普段からこういうところに通い慣れているようで、急に年下には思えなくなってしまった。

「君は、いったい何歳なの?」
「43歳です」
「えっ、うそ。てっきり三十代くらいだと思っていた……ました」

自分よりも年上だということに驚いてしまい、慌てて敬語に変えたから不自然になってしまった。彼は「敬語じゃなくて良いですよ」と笑いながら言った。

「俺は、んー、簡単に言うと、タイムマシンの研究をしている発明家をやっています」

「は、発明家」

まるでお伽話を聞いているかのように、彼の語るものは不思議であふれていた。
自嘲するような表情で笑うと、彼は続けてこう言う。

「正確には発明家であり、詐欺師です」

また彼から不思議な言葉が出てきた。

「受けさん知っていますか?国ってね、簡単に騙せるんですよ」

ちょうどその時、ウェイトレスがこちらへ歩いて来て前菜が届いた。「こちらが本日オードブルでございます」とそれから、なんの食材を使ったテリーヌや、なんの食材を使ったマリネやら、丁寧にウェイトレスが説明してくれるが、そんな事が耳に入らないくらい僕はさっきの話の続きが気になっていた。

「美味しそうですね」
ウェイトレスがいなくなってから、ナイフとフォークを手に取り嬉しそうに笑っている。

「詐欺師って、国を騙した……の?」

「俺のひねくれた言い方ってだけで、真っ当なことですよ。研究の費用を国から出してもらうために、真っ当な研究理由と目的を作り上げたんです。さっ、そんなことよりも食べましょう」

なんだか納得いかないが、話を切り上げられてしまったので大人しく僕もフォークナイフを手に取った。

……約束してしまいましたからね。これがデートの最後なので教えましょう。過去へ戻る方法について。

それはね、僕が発明した時空設定装置を、あのジェットコースターがあるあの場所で走らせれば可能です。

そう、未来の話です。現代を生きる受けさんは過去には戻れません」

えっ、と思わず声が溢れた。なんだか狐に摘まれたような気分だ。

「あのジェットコースターを使えば過去に戻れるという噂を流したのは、〇〇大学の教授です。俺はその方の元へ学び、タイムマシンを発明しました。とても残酷な機械です」

「残酷?なんで。だって過去や未来に行ける夢のようなマシンを作ったんじゃないの」

「夢を追うだけでは国は投資してくれません。何か利益を産まないといけなかったんです。だから俺が作ったマシンは過去にしか行けない」

「どういうこと?」

「俺の作り出した発明は国の「国家〇〇プロジェクト」の一環にしか過ぎません。人生は一回きりしかない。失敗は経験になるが失敗した経験は消えない。でも、もし失敗だけを経験して取り戻す事が出来たら、さらに優秀な人間が育っていくのではないかというプロジェクトです」

まさに自分が憧れていた事だった。
過去に戻れたら、過去に行けたら、あの時の選択をやり直したい。あれをなかったことにしたい。

「だからね、このタイムマシンは過去にしかいけないんですよ。このプロジェクトには条件があるんです。過去を変えて成長を遂げてもいいが、大まかな事件や歴史は変えてはいけない」

「バタフライエフェクトってやつだよね。過去を変えたら、歴史も変わっちゃうんじゃないの」

「大まかな歴史は良いんです。例えば、エジソンの直流送電を発見した歴史は変えてはいけないが、テスラがエジソンと同じ時期に直流送電と交流送電を発見しても良いということです」

エジソンは分かったのだが、なにせ学生時代は遠い昔の記憶で、文系の自分にはすっかり頭から抜け落ちてしまった知識だった。頭の中で理解しようと一生懸命に考えていると彼は「もっと分かりやすく言うとね、」と「大きな枠組みと優秀な発展を遂げた事実さえ変わらなければ、他はなんでも良いってことなんです。科学的なことに限らず文化的な事も全て含みます」

彼はワインを一口飲み、口の渇きを潤すと冷たい目をして僕を真っ直ぐと見つめた。

「もっと酷いことを言うと、ある年の人口が1億2,000万人いたとして、その事実は変えてはいけない。でもね、その一億二千万人に内訳はなんだって良いんです。その人口の割合が優秀な人が多ければ多いほど良い。

過去へ行き失敗を何度もやり直したら、今自分達のいる世界が、未来の発展を手に入れているかもしれない。そうやって何歩も進んだ発展した世界の、優秀な人間でいっぱいにしていこうというプロジェクトです」

「み、未来の人はすごいことを考えるね。僕にはサッパリ、難しいことだらけで理解するには時間がかかりそうだ」

「あはは!」

声をあげて急に攻めが笑い出した。

「僕は過去にだけ戻るタイムマシンを作り上げるために得た研究知識よりも、貴方を知っていく方が楽しい。大人ぽく見えていた貴方は、意外と子供らしいところもある。……一日じゃ足りないな」

メインディッシュの平らげると、フォークナイフをお皿に寄せて腕についている時計を見た。

「もうそろそろ時間ですね」

本当に彼の言うとおり、今日、あのジェットコースターは事故を起こすのだろうか。

「今の攻めくんが、ちゃんと誰も乗らないように誘導してくれているはずだけれど、……やっぱり不安だね」

「あんな寂れた遊園地の夜遅くのジェットコースターなんて、わざわざ誘導しなくても誰も来ませんよ。貴方以外ね」

茶目っ気に言う彼は年上の男性に見えた。

「このお店、デザートも美味しいんですけれど今の俺ではフルコースを頼むのは出来なくて……。すみません、……未来の俺に奢ってもらってください」

そう言う彼は、急に年下の男の子に見えた。

「ふふ、今度は僕が奢ろうかな」

と言うと、「……未来に」と呟き、席を立った。彼の表情は見えなかった。

レストランから出ると、彼は自分はあのジェットコースターの様子を見にいくから送れないけれどと説明されて「今日はちゃんと家で休んでいてください。家から一歩も出ずに」と何度も何度も言った。

大丈夫なのに。と思ったが、僕は大人しく帰ると、その日はすぐに寝た。
明日、あの遊園地に行ったらまた会えるだろうか。
ほらね、大丈夫だったよ。と笑ってみせよう。



翌朝、あの遊園地で、あのジェットコースターが事故にあったことがニュースで流れていた。
そのジェットコースターには乗客がいて、身元不明の三十代後半から四十代くらいの男性だったと、キャスターが冷静に伝えていた。

彼の言っていた言葉が頭に浮かぶ。
ーー過去にしか戻れない。
ーー大まかな事件や歴史は変えてはいけない。



攻め目線

受けとレストランで別れた後、あの遊園地へやって来た。真っ先にあのジェットコースターの場所へ行き、俺に声をかける。

「お疲れさま。もうそろそろだね、誰も乗っていない?」
「あぁ。この時間は誰も来ないよ」

そうとだけ答えると「じゃここは俺が見ているから、来場客の誘導をやって来てよ。俺よりも遊園地の従業員の方がスムーズに行くでしょ」ともっともらしい事を言う。

どうやら自分は口が上手いらしい。
そのことに今は気付いていない自分に向かって言う。

この頃の自分は、全てがどうでも良かった。
楽そうという理由だけで受けた、寂れた遊園地のバイト。
本当に暇でつまらなかった。
週五日。土日はそこそこ混むが大手の遊園地に比べたら可愛いらしいものだろう。帰って、コンビニの弁当を食べて、風呂に入って、タバコを蒸し、ぼうとする。
体に良くないタバコを吸うのだって、いつどうなったって構わなかったからだ。

そんな人生を送っていた。
彼が現れるまでは。

空を眺めながら、ぼうとしているサラリーマンに「チケットお預かりしますね」と声をかけると会釈して渡された。隈酷いな。第一印象は、疲れた様子のサラリーマン。

「いってらっしゃい〜」と声をかけて、スイッチを押すとジェットコースターが動き出す。
わずか五分後、彼は目をキラキラさせて戻って来た。

「ありがとうございましたー。お忘れ物にはお気をつけて」
そうマニュアル通りの言葉をかけると、彼はそんな大きなカバン忘れないだろうと言いたくなるが、律儀に席をキョロキョロと確認してから降りていった。

「ありがとうございました」

ボソリと言う彼は、恥ずかしそうに少し微笑んでいた。

それから彼は毎週金曜日の夜にやってきた。
あの可愛らしい笑顔がもう一度見れるかと思ったが、彼はくたびれた顔のままだった。

どうして毎週乗るんですか?
ジェットコースターが好きなんですか?
どうしたら、もう一度笑ってくれますか。

彼が来る度に、聞きたい事が増えていった。
いつもは簡単に出てくる言葉も、彼の前では緊張して何も出てこない俺は、若かったと思う。
でも、あの時は楽しかった。

あの事故が起きるまでは。

自分の前でジェットコースターが崩れて落ちていく。
大きな衝撃と、ガラガラと落ちていく崩れた木の塊。
必死にかき分けるが、力が足りない。
あの人の名前を呼んで確認したいのに、名前が分からない。代わりに怒鳴るように誰か、誰か、救急車と叫んだ。

人だかりが出来ても、誰も一緒に助けようとはしない。
ある人は俺の様子を心配そうに、ある人は好奇心を持って、見てくる。
しばらくするとマネージャーが来て、またしばらくすると救急車が来た。それでも彼は助からなかった。

俺はバイトを辞めた。

引きこもって、救えなかった彼の足取りを探るように、ひたすらスマホを片手にあの事件のことを調べていると、ある都市伝説を見つけた。

彼は過去に行ったんじゃないないか?

あのジェットコースターの夜の第三便に乗ると過去に行けるらしい。

それって〇〇大学の教授が言ってた話でしょう。都市伝説でも何でもない。理論上の空想話だよ。

その翌日。俺は、〇〇大学へ乗り込んで行った。
まるで学生かのように振る舞えば簡単に大学に進入できた。「〇〇先生に興味があるんですけれど、どこに行けば会えますか」と自分の顔に興味がありそうな子に声を掛ければ簡単に教えてくれた。

教授の元へいきなり乗り込んだが、その質問すると、言い切る前に話題を奪い取られるように難しいことを語られた。相槌もなく、一方的に話した後に教授は「有意義な時間を過ごした。さて、君はどこの学部の子だね?」と聞くから「俺はここの学生じゃありません」と答えると「まずここの学生になりなさい。君はさっきの話を聞いているだけで何も参加しなかった。知識が足りていない」と急に冷たく追い出されてしまった。

そこから勉強をし、翌年にはその大学に入学できた。
自分は要領が良かったらしい。

大学に入り、彼の元へ学び、本格的に研究に乗り出した時、資金が全くないことに気がついた。
教授は国からの申請は全く降りないとぼやいていたから、あのプロジェクトの企画書を提出したら簡単におりた。

「なんてことをしようとしているんだ。そんなことのために、私たちは研究をしていない」
「あれは方便です。本当に実現しようなんて思っていない!」
「そうであっても、お前は許されないことをしたんだ。この美しい研究に、悪魔の使い方を見つけ出した。お前とはもうやっていけん。出て行けっ!」

追い出されてしまった俺は師を失った。
とはいえ、俺は孤独ではなかった。
簡単に人は寄って来たし、さらに資金を得るために、興味のない会食に行ったり、自分に寄せられた好意を利用したりもした。

何がそんなに自分を掻き立たせるのか分からない。
話したこともない、もう思い出せもしない、あの人の笑顔をもう一度見たいからとか、きっとそんなくだらない理由ではないだろう。

もう戻れないところへ来てしまった。
そんな自分でも変わらない事が一つだけあった。
自分がいつどうなっても良いという事だ。

自分は詐欺師であった。
適当なプロジェクトを発案したが、それをやり遂げるつもりは始めからなかった。
これは俺の、あの時に戻ってもう一度、あの人に会いたいだけの、あの人を知りたいと言う、あの人に笑って欲しいという欲望を叶えるための願いを叶えるためだけにあるものだった。

過去のことばかりしか話していないのに、どうやって過去から現代に戻るのかは誰も気にしなかった。
忘れているかのように、みんなが過去に戻る研究を必死でやっていた。

このプロジェクトは反対意見の方が大きかったのに、プロジェクトの中心にいる政治家達はみんな夢物語に夢中で、耳を傾けなかった。

だから大々的に、記念式典なんかできたんだと思う。
あの時の寂れた遊園地の面影は消えて、華やかに花吹雪が舞う中、俺はタイムマシンのエンジンをかけた。

最後のサービスに協力してくれた人たちに手を振ると、その中の三人程の婦人達が涙を浮かべながら自分に手を振ってくれたと勘違いする。

もう戻ることのないタイムマシンは進んでいくと、ガタンとあの場所でレールから外れて空に向かって駆け上がっていく。

ちょうど今走っている、この寂れたジェットコースターのように。

ーー過去にしか戻れない。
未来に戻るつもりは無かった。戻ったところで彼はいないのだから。

ーー大まかな事件や歴史は変えてはいけない。
そんな約束、守る必要なんてなかった。
一方通行の旅路で、矛盾した自分の存在を消すしかなかった。違う、本当はそんなのは言い訳で彼が目の前から消えて悲しみの中で生きた人生を、幸福に満ちた時間の中で終わらせたかったからだ。

ガタン、とレールが外れた。
そこから一気にジェットコースターが崩れていく。
彼があの日、最期に感じた痛みを知りながら、俺は涙を流してあぁ、幸せだと、思った。




メモ

今の彼と二人で、この彼が生きている世界の時間に行き救っても良いけれど、ここで終わるのが綺麗な気がする。