結論から言えば、オレたちは死んだ。
いちにのさんで、あっけなくだ。
アルカディア闘技場において、
殺すのは反則ではない。
生身の挑戦者ヘビー級第二戦は、興奮の嵐に包まれたまま幕を閉じた。
……と、医務室のベッドに伏せるオレたちにメテムが語った。
いつもどおり多少のお説教が終わり、メテムが去ってから、大きくため息を吐き白いシーツに倒れ込む。
――完敗だ。
アイツは、やろうと思えばいつでも殺れた。それこそ、初手から。だが、それをしなかった。
きちんと興行士として場を温め、しっかり盛り上げて、会場を最高潮にしてからきっちり幕を引いた。
あれをシナリオも知らずにやっているのなら、闘士としても興行士としても、勝てる要素が見当たらない。もう一度言うが、完敗だ。
「
……すまない。兄者」
隣のベッドから、低い声が響いた。それに応えて、手だけを持ち上げひらひらと振る。
「気にすんなよ。てか、作戦は二人で一緒に決めただろ。どっちかのせ〜ってヤツじゃねェよ。
……あ〜、ちくしょう。アイツ、腕折りやがった。治ってるからいいけどよォ」
「違う。
……殺す気だった」
物騒な声色に、「ん?」と首を傾げ顔を横へ向けた。弟は、ベッドに寝たまま両手で顔を覆い、かすかに震えている。
「最初から、殺すつもりで殴っていた。
……ずっと」
泣いているのかと慌てて身を起こすが、どうも様子が違う。寡黙な弟が、顔を覆ったまま唸る。
「
……オレの殺気を、気取られたのだと、思う」
目眩しが効かなかったのは、殺気が漏れていたから。そう言いたいのだろう。
いつもと違う雰囲気の弟に、慎重に言葉を選ぶ。
「
……そんくらい本気で殴らなきゃ、そもそも通用する相手じゃなかっただろ」
「
……すごいな」
そして、ようやく気づく。
――笑っているのだ。弟は。
巨躯を震わせて、心から愉しそうに。
「あぁ、兄者。あんな、暴力の権化が、いるんだな。世界には。
……暴力の、女神が」
その姿を、オレはベッドの上で呆然と見つめる。
――駄目だ。
長い時間をかけて、暴力と無法から、ようやく切り離したというのに。
ようやく、明るい場所に立てるようになったのに。
世界には、オレたち二人きりでいい。
今までも。これからも。
……だから、オレは。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.