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三善ヨミ
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書きたいところだけ書く
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【レオカリレオ】雪の日【書きたいところだけ書くシリーズ】
・レオカリレオ
・二人が付き合ってます
・書きたいところだけ書くシリーズなので急に始まり急に終わります
・2026年の新春イベントに関するネタバレが含まれます
「お前が俺に一発当てる前に、そっちが雪だるまになるのが先だと思うが
……
なッ」
俺は足元の雪を無造作に掴むと、指先で瞬時に圧をかけ、作り上げた雪の塊たちを勢い良く投げつけた。
放たれた雪玉は鋭く風を切り、狙い違わずカリムの胸元に数回衝撃を与えて上着に真っ白な弾の跡を残して落下していった。
「うわー!」
雪玉を喰らったカリムは情けない声を上げて背中側から深々と積もった雪の中へと倒れ込んだ。
呆気ない。前回はジャミルがいたから多少は骨があったが、今回はカリム一人だ。挟み撃ちにする小賢しい策も、息の合った連携もない。
となれば、アイツが選び取る反撃など知れている。
ガキがやるように勢い任せに雪玉を乱射してくるんだろう。
そう次の反撃を予測すれば俺は雪玉を淡々と固め始めた。
だが、いくら待ってもアイツは一向に起き上がってこない。
カリムが倒れ込んだ場所からは時折、冬の空気に混じって白い吐息が溶けて消えていく様が見えるだけだ。
まさか、このクソ寒い中で寝てるなんてことはねえだろうな。
「
……
おい、いつまで転がってんだ」
雪玉を握ったまま近寄り声を掛けると、雪に埋もれたカリムは空を仰ぎ、どこか遠くを眺めながら呟いた。
「んー
……
冬だなーって思って、ぼーっとしてた」
「あぁ?」
さっきまで雪合戦で白熱してたっていうのに、急な切り替わりにどんな心情の変化だと毒づきたくなる。
戦いの最中に、これほど無防備に天を仰いで和む奴なんて、コイツくらいしかいないだろう。
「雪って触ると目が覚めるほど冷たいのに、こうして眺めると不思議と落ち着くよな」
カリムは奥の景色を見つめ、子供のように目を細めた。
その顔には、さっきまでの勝負の熱など微塵も残っていない。周囲には無防備で穏やかな、平穏に満ちた空気が流れ続けていた。
「楽しいな、雪合戦。レオナがこうして付き合ってくれるのが嬉しいし
……
何より、レオナが楽しそうだから、それが一番嬉しいんだ」
体が雪に半分埋もれたまま、アイツは心底幸せそうに、いつもの笑顔を浮かべた。
さっきまで自分を打ち負かそうとしていた相手に、よくもまあそんな顔ができるなと思う。
「そうかよ」
完全に毒気を抜かれ、俺は手にしていた雪玉を無造作に地面へ捨てると、その場に腰を下ろす。
冷たい雪が尻尾に付くのを嫌って持ち上げると、漸くカリムがゆっくりと体を起こした。
雪をまぶしたままの髪が陽の光を受けて輝いている。顔や鼻先に雪の結晶を残し、カリムは無言で俺のことをジッと見つめた。
慈しむような柔らかな微笑み。俺の心の奥底、その薄暗い場所にまで光を届かせるような、温度のある視線。
その穏やかさに引き込まれれば強固に結ばれた警戒心が音もなく解けていく自覚があった。
そうして、意識を絡め取られた直後、顔面に衝撃が走った。刺すような冷気とともに視界が一瞬で真っ白に染まると、それが至近距離から放たれた雪の塊のせいだと気が付くのに数秒を要した。
鼻先から冷たい雫が滴り落ち、睫毛に纏わり付いた粉雪が未だ視界を白く遮る。
顔に張り付いた雪を、苛立ち紛れに払い除けて漸く視界が開けると、そこには勝ち誇ったように輝く瞳があった。
「一点だな!」
溌剌とした表情と声音が何の後ろめたさもないことを伝えてくる。
まさかコイツの中に『無防備な姿で相手を油断させ、隙を見せた瞬間に一撃を喰らわせる』なんていう選択肢が存在していたとはな。
「
……
へえ。油断を誘って不意打ちなんて卑怯な技、一体どこで覚えてきやがった」
声を低くし、喉の奥で唸り声を上げたが、カリムは少しも怯まない。むしろ、どこか誇らしげに首を傾げてみせた。
「へへっ、誰からだろうな?」
その小生意気な笑みに、不思議と苛立ちは感じなかった。
むしろ、胸の奥を突き動かすような奇妙な高揚感すらある。
いつもなら、こんな見え透いた手に引っかかった自分自身に舌打ちの一つもしたくなるところだが、それ以上にあの底抜けにおめでたい坊ちゃんが俺の手法を学び、出し抜いてみせたという事実が酷く愉快に思えたからだ。
余程満足したのか、カリムは「やったぞー!」と叫びながら、無防備な背中を見せて雪原を駆け回り始めた。
そんな姿を見送る俺の指は、無意識のうちに再び冷たい雪を掴んでいた。
教え込まれたのは俺からだってか。
なら、師匠直々に小癪な戦法を取ってきた相手にどんな仕返しをすべきか、その作法もたっぷりと叩き込んでやらないとならない。
「おい、カリム。一点取っただけで勝った気になってんじゃねぇぞ」
そう呟いた俺の口角は、自分でも驚くほど自然に、愉しげな形に吊り上がっていた。
END
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