roku
2026-01-16 15:45:50
933文字
Public 松イチワンドロライ
 

第4回『嘘つき』

・一之倉の気持ちに気づいた松本が一之倉を好きになる話

時折視線を感じで顔を向けると一之倉と目が合うことがあった。初めは気にしていなかったが、しばらくして気がついた。
一之倉はオレのことが好きなのだ、と。
特別モテるわけではないが、過去に何人か好意を言葉にしてくれた女子がいた。その子たちと一之倉の瞳にこもる熱が同じだったからわかった。ただ不思議だったのは、オレと一之倉の接点が〝バスケ部〟であること以外にほぼなかったことだ。クラスも寮室も違う。たまに寮の共有スペースである談話室で会話をする程度。ましてや深津のように面白い話ができるわけでもなく、野辺や河田のように聞き上手というわけでもない。そんなオレを一之倉が好きになった理由に見当はつかなかった。
だが好意を寄せてくれているとわかると単純なもので、一之倉を目で追うようになった。内に秘めた闘志や、我慢強さを持っていて、物事に対して一本真っ直ぐ筋が通っているところがカッコよく、深津や野辺と馬鹿なことして笑ってる姿は可愛かった。
そしていつしか嫉妬心が生まれ、一之倉を手に入れたいと思うようになった。
その機会は2年に上がり同室になったことで巡ってきた。
「一之倉ってさ、オレのこと好きだよな?」
テスト勉強の終わりに投げかけた問いに一之倉は切れ長の瞳を大きく開いた。
な、に言って、んの?そんなことあるわけ、ないじゃん」
普段怒りや戸惑いを表情 そとに出さない一之倉が明らかに動揺している。
嘘つき。
「そっか。じゃあ嫌いか?」
「松本ってそういうキャラだった?」
立て直しの早さはさすがだ。
「知らなかったのか?」
「そうだね」
「ならもっと知ってくれよ。オレのこと」
キャスター付きの椅子を滑らせ一之倉との距離を詰め、覗き込むようにして唇を合わせた。
――っ!!!」
「キスするときは目瞑れよ」
「な、な、なに、して……
ガバっと机に突っ伏した一之倉にもう一度問いかける。
「一之倉、オレのこと好きだろ?」と。
「好きじゃない!むしろ嫌いだ!」
首も耳も真っ赤にして〝嫌いだ〟なんて〝好き〟って言ってるようなもんだろ。
「一之倉の嘘つき」
一之倉が嘘をつくならオレも嘘で外堀を埋めてやるよ。
「オレと一之倉、付き合うことになったから」と。