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roku
2026-01-16 15:22:56
859文字
Public
松イチワンドロライ
第30回『目印』
「いつかオレすげー有名なプレーヤーになって、あそこに広告で載りますね!」
多くの人が行き交う遠征先の駅前。はるか頭上の大きな看板を指差してそう宣言したのはエースである沢北だった。
「ぶさけたこと言ってねぇで行くぞ」
松本が先を行けば「ふざけてませんよ!」と不服そうに背中を見つめる。
「はいはい。じゃあいつかそうなったら待ち合わせの目印にしてあげるからそれでいいだろ」
沢北の腕をぽんと叩いて松本の後を追うのは一之倉だ。
「あー!絶対そんなこと思ってないですよね!?」
ぶすぅ〜と一之倉を睨めば「早くしろよ」と振り返った松本が笑っている。
「もおっ!バカにしたこと後悔させてやるんで!!」
一之倉と松本を抜き去りズンズンと進む沢北。
「深津さーん!!オレあそこに
―――
」
数メートル離れた先から大きな溜息が聞こえ、ふたりは顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
あれから幾度となく季節は巡り、一之倉はスマホ片手に待ち合わせの相手を探している。
『今どこだ?』
「んーと
……
東口、北?松本は?」
東口北は東なのか北なのか、出口が1か所しかなくすべてを見渡せるような田舎で暮らしてきた一之倉にはわかりかねた。そして電話口の相手も同じだった。
『中央口
……
南?』
「都会マジでわかんない!」
『何か目印ねぇか?』
松本に問われ辺りをキョロキョロと見回すと、目線の随分上、とても目立つところにある大きな看板に掲載されているのは、かつて「ここに載りますね!」と大きな口を叩いていた後輩だった。
「
………
すげぇでかい沢北の看板」
そう伝えれば松本はわかったようでそこで待ってろと電話を切った。
「一之倉!」
名前を呼びながら駆け寄る恋人に綻んでいく頬。だが何だか沢北に見られているみたいでいたたまれない。一之倉はすぐさま松本の腕を掴んで「早く行こ!」と歩き始めた。
「どうした?」
「何か沢北に見られててやだ」
「ふ、ははっ!見せつけてやればいいのに」
松本は一之倉の肩を寄せ人込みを避けるように目的地へと向かうのだった。
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