スナック核融合5 ここは俺のおごり

2025年1月発行した道行天尊&韋護の本『黄金花園伝』のペーパーに載せた小話です。
スナック核融合シリーズ。韋護っちが師匠のために一肌脱ぎます。
「師匠には世話んなったからなあ」

狭いカウンターで、その人はいかにも狭そうに身を屈ませていた。たしかに狭い店だけれど、普段よりさらに狭く見えるのは、カウンターにずらりと並べられた皿のせいだった。そのすべてに、いかにもおいしそうな料理がのせられている。どれも野菜と果実ばかりとは思えないほどいろどり豊かだ。
「こんなもんでどうだい」
料理を盛る手を止めないまま訊くので、普賢は「完璧」と答えた。
「すごいね。どこで覚えたの」
「ちょっとあちこちでな」
得意げに口の端を上げながら、キッシュにパセリを添えている。

韋護がふらっと店にやってきたのはひと月ほど前のこと。
ここぞというときに駆けつけてくれた若い道士のことは、もちろん覚えていた。見た目によらず情に厚く、実力も師の折り紙付き。そんな彼が「ここで新年会を開きたい」という。
「だれを呼ぶの?楊戩とか哪吒くんとか?」
「まあいろいろ。主賓は道行師匠」
「道行?」
「師匠には世話んなったからなあ。なんか気持ちを伝えてえなって」
こんなに師匠冥利に尽きることがあるだろうか。心から感激して、二つ返事で快諾したのだけれど、
「酒も料理も俺が用意するから」
……じゃあ、僕はなにをすれば?」
「場所を貸してくれれば」
大丈夫だろうかと戸惑ったものの「ま、任せときな」と目配せをするので、そのまま任せることにした。そして迎えた当日、朝から仕込みに入った韋護は、手際も酒のチョイスも料理の腕前もすばらしく、思わず「ずっとここで働いてくれない?」と真顔で聞いてしまったほど。
「さーて、あとは客を待つばかりだ」
満足そうにカウンターをみわたす韋護の横で、普賢もうんうんと頷いた。
夜はずいぶん気温が下がる。もしかしたら雪も降るかも。店をあたためて、カトラリーやグラスはピカピカに磨いた。みんなよろこんでくれるかな。
道行もたくさん飲んでくれるといいけれど、酒癖悪かったような。まあいいか。
扉が開く音がして、冷たい夜風が吹き込む。
あかるい笑顔で、韋護は腕をまくった。
「よく来たな!今夜は俺のおごりだ!」