コット
2026-01-16 11:40:38
1025文字
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いちにのさん! でしねたなら 3(前半)

もうそろそろエロに入りたい(願望




「レッドホットぉ! 殺す気で殴れ!」

 折れた腕を抱えて膝をつき、脂汗を垂れ流したまま叫ぶ。――分が悪い。あまりにも。

 長引けば不利になることは、最初からわかっていた。ダンシング・グリーン戦で見せた、底なしのスタミナだ。
 だから、二人で立てた作戦は『速攻』だった。
 小手調べに数発殴ったらすぐに乱入。タッグ技を解析させる隙を与えず、立て続けにぶち込んで倒す。
 だが、初撃はあっさりとかわされた。そこから、泥沼になるのはあっという間だった。
 こちらも伊達にタッグマッチで鳴らしているわけではない。一対多数の闘いは、誰かが注意をひきつけ拘束し、死角から攻撃をするのが定石だ。
 派手な水球。目眩しの蒸気。背後からの渾身の一撃。
 だが、コイツにはそれが通用しない。背中に目でもついてんのかと疑うほどだ。
 その上、こちらのスタミナが切れてきたとわかるや、ひょいと軽く、まるでその辺の枝を折るかのように、オレの腕を折りやがった。もちろん、反則だ。
 
 そこで、ようやく気づく。――コイツは、『本物』なのか。

 トラル出身のシャトナ族に聞いたことがある。戦場帰りの男の話を。
 裏路地のチンピラ同士の殴り合いなどとは格が違う、あたりまえに殺し、殺される世界。ルールなどない無法地帯。コイツが、そういう世界から来たのなら、何もかもが納得できる。
 ……っつーか、なんでそんなヤツが、興行のリングに立ってんだよ!

 闘技場の熱気は今や最高潮。会場を揺るがす大波のような声援は、もちろん、ベビーフェイスのものだ。
 ジムを襲撃し、挑戦者の持つ唯一の命を狙うヒールに対する慈悲などない。

 レッドホットの炎を纏う太い腕が唸りをあげ、挑戦者の腹をえぐる。だが、挑戦者は、妙に軽くポーンと後方へ吹き飛び、ふんわりと受け身を取っただけで立ち上がった。……クソッ。頑丈すぎんだろ。

……今のは、ちょっと痛かったな」

 あの勢いなら、内臓ごと胃液が逆流してもおかしくないはずだが、挑戦者は軽く口元を拭っただけだ。
 息が上がり、食い縛る歯の間から熱気を吐くレッドホットと、なんとか立ち上がったオレを交互に眺めて、ふわりと笑う。

「でも、そっか。で、ね」

 挑戦者が、とんとん、と指で自分のこめかみのあたりを叩いた。

「ね。……魂のストックはあといくつ?」

 その質問の意味を理解するよりも先に、――世界が、暗転した。