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roku
2026-01-16 10:41:00
1410文字
Public
松イチワンドロライ
第20回『こたつ』
・大人軸/同棲中
・こたつにはみかん!なのに皮むきが嫌いな松本と、何だかんだ甘い一之倉の話
⚠カッコイイ松本はいません
ここに出てきた【有田むき/和歌山むき】ぜひみなさんもやってみてください!すごいので!
「また箱で来たんだけど
…
」
玄関で受け取ったみかんの絵柄入り段ボールをリビングへ運んできた一之倉が不服そうに漏らした。もちろん中身はその絵柄に違わずみかんが入っている。これは毎年この時期になれば一之倉の実家から送られてくるものだった。ふたりだからこんなにいらないと一之倉が何度言っても、「松本くんみかん好きでしょ」と息子の一之倉ではなく、その恋人の松本に宛てて送ってくるのだ。
「ありがたいじゃねぇか」
「まぁ
…
そうだね
……
」
別に一之倉だってみかんが嫌いなわけじゃないし、ありがたいとは思っている。だけど一之倉が素直に喜べないのには理由がある。
それは、みかんが好きだという松本が皮むきを嫌がるからだ。
普段の松本は、背筋が真っ直ぐ伸び、パリッとしたワイシャツに濃紺のスーツがこれでもかというほどよく似合う、仕事のできるサラリーマンのはずだ。だが今一之倉の目の前にいる松本は、スウェットの上に半纏を羽織り、背中を猫のように丸め、寒い
…
と顔を顰めて指先までもこたつの中に仕舞い込んでいる、言うなれば、だらしない姿だった。
一之倉は運んだ段ボールを開封し、中身をふたつ取り出すと、そのひとつを松本の前に「はい」と置いた。
「むいてくれよ」
「やだよ、毎年毎年。子どもかよ」
松本の願いを突っぱねると、こたつから手を出せば寒いだの、みかんを剥いたら手が黄色くなるだの、不服そうだ。文句があるなら食うなと言いたくなってしまうが、一之倉は松本の文句など聞こえない、とばかりに黙々とみかんを剥く。そんな一之倉の手元に視線をやる松本が口を開いた。
「イチノさ、そんなむき方してたか?」
例年と違うみかんのむき方に松本が興味を示した。
「ん?あ、これ?」
一之倉の前には皮付きのまま4等分されたみかんが置かれている。
「普通はこっちからむくだろ?」
こたつから手を出した松本がヘタの方を指差した。
「まぁそうだね。松本がむいてるの見たことないけど」
軽く悪態をついてジト目で見やれば、きまり悪そうに視線を下げた。
「これ、有田剥きって言ってね
…
」ともうひとつのみかんのヘタのない方からふたつに割り、そしてそれをさらに2等分した。
「はい。ヘタの方から果肉外してみて」
「ん?こうか?
…
お、すげえ!」
「ね、綺麗に取れたでしょ。これなら手が汚れることもないから松本にもできるね」
口端を上げた一之倉は新しいみかんを取り出し松本へ手渡した。
「そうだけど
…
」
「けど?」
「そしたらイチノから貰えなくなるじゃねぇか」
相変わらず背中を丸めたままムッと突き出した唇。その姿に何かに気づいた一之倉はハッとした。
「
……
なにそれ。面倒だから嫌がってたんじゃないの?」
「
…………
」
「ふ、ふはっ!」
「なっ、なんだよ!?」
「いや、松本ってかわいいところあるなって思って」
そう言って笑えば恥ずかしそうに額をコツンとこたつにつけて、「かわいくねぇし」と吐いた。
一之倉は4等分したみかんの果肉を皮から外し、突っ伏したままの松本の口もとへそっと持っていく。緩やかに顔を上げた松本に「はい、あーん」と差し出せば、口を開けた松本がかぷっと指まで咥え込んだ。
「
……
怒るよ?」
「すまん!」
申し訳なさを微塵も感じない謝罪に呆れていると、「やっぱりこたつには一之倉からのみかんだな」と嬉しそうに笑いながら、再び〝あーん〟と口を開けるのだった。
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