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roku
2026-01-16 10:33:15
936文字
Public
松イチワンドロライ
第5回『デート』
学生のふたりはこんなことでもデートだったのかも…という話
高校二年夏。
インターハイ前の最後の追い込み練習を終え、監督から差し入れをもらえることになった。だがそこに現物はなく、買い出しは学年ごとに代表して行くようにとお金を渡された。誰かが口にした「最初はグー!」で始まったじゃんけんに、示し合わせたわけでもないのに一之倉と松本が見事に負けたのだった。ジュースかアイスで二分された意見。半々を買うことに決めふたりで学校を出た。
「あの人数分のジュース買ったらなかなかの筋トレなんだけど」
「まぁ
…
そうだな」
「アイスだってさ、溶けないように走れってこと?」
「ははっ!確かにそうだな!」
一之倉の言葉に目をまん丸にして驚いている松本は、そんなことを微塵も考えていなかったようだった。
「そういう適当なとこあるよな」
一之倉自身は、物事を深読みすることが多く、松本のそういうおおらかでざっくりしているところに惹かれていた。
「オレは一之倉とふたりで買い出しに行けるなら何でもいいけどな」
再びははっと声をあげて笑う松本に、「そういうこと、さらっと言うなよ!」と照れ隠しのグーパンチをお見舞いした。
しばらく他愛もない会話をしながら歩いていると、「あのさ、」と松本が足を止めた。そんな松本より一歩先で足を止めた一之倉は振り返り「何?」と訊ねた。
「これってデートみたいじゃねぇか?」
「は?
……
な、何言ってんの?」
買い出しをデートだと言った松本の不意打ちに、いつもは冷静なはずの一之倉が戸惑いを隠せなくなる。
「だって恋人とふたりきりで出かけるのはデートだろ!?」
松本は一之倉と目線を合わせ、当たり前に言ってのける。
“恋人”という響きがやけにくすぐったくて、「ただの買い出しだろ!!」と精一杯の照れ隠しで駄菓子屋目指して一直線に走り出した一之倉。
「ちょ!おい!一之倉!!」
後を追った松本がものの数秒で追いつきパシッと手を掴んだ。
「松本!?」
「嫌なのか?」
唇を尖らせ不服そうな松本に、誰かに見れたら困ると訴える一之倉。狭い町なのだ。誰かひとりでも目撃者がいればあっという間に噂は広まってしまう。ただでさえバスケ部は注目されているのだから。にも関わらず松本は「誰も見てねぇよ」と掴んだ手をぎゅっと繋ぎ直して笑った。
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