roku
2026-01-16 10:32:08
1289文字
Public 松イチワンドロライ
 

第18回『夜更し』『お願い』


インターハイの雪辱をウィンターカップで果たし、バスケ部を引退したあとすぐに一之倉は松本を自室に呼んだ。
「いらっしゃい」
時間通りに訪れた松本を迎え入れベッドに腰を下ろした。
「松本」
ベッドをぽんぽんと叩いて、いまだ立ったままの松本を いざなう。
「今までできなかったこと、しない?」
付き合っているとはいえ、学校に部活に寮生活と、ふたりでいられる時間もほとんどなく今まできたのだ。引退したのだから少しくらいの無茶は許されるだろう。
「いっ……一之倉!?いや、それはだなえっと、」
同室者のいない部屋でふたりきり。相手は恋人である一之倉。見上げた一之倉と見下げる松本の視線はかっちりと合っている。あたふたする松本とは反対に余裕のある一之倉。
「早くこっち」
一之倉はもう一度同じようにベッドを叩いた。
松本は何かに弾かれたように勢いよく一之倉のもとへ歩みを進め、そのまま抱きしめ押し倒した。
「ちょっ!まっ、松本!?」
長年使い込まれたベッドは、ふたりの体重を受けミシッと音を立てて軋んだ。
「誘ったのは一之倉だろ?」
耳にかかる吐息に心臓がドクンと跳ねあがり身体を捩るも、強い力で拘束されて身動きが取れない。
「違っねぇ、松本ってば!!」
のしかかる松本の背中をバシバシと叩けば何とか解放された。
「す、すまんっ!!つい!!」
ベッドの上にちょこんと正座して背中を丸めている。
「松本は欲望に忠実だな」
一之倉がフッと笑うと、本当にすまなかった。と俯いてしまった。
「ごめん。オレ、松本と夜更ししたくてお菓子とジュース買い込んで来たんだ」
「は?」
今まで3年間、毎日規則正しい生活を送ってきたふたりにとって“夜更し”はとても魅力的なものだった。
「でもまぁ松本がしたいことでもいいかな?」
唇に綺麗な弧を描きながら、松本が膝の上で握る手にそっと手を重ねた。驚いた松本が目を丸くして顔を上げればフッと目尻を下げた一之倉と目が合う。
「一之倉
吐息混じりに名前を呼べばそっと瞳を閉じた一之倉。
優しく重なった唇は熱を帯びていた。
………夜更し、するか」
そう言うと一之倉が買ってきたというお菓子とジュースが入った袋を指で差す。一之倉の眉根が一瞬だけきゅっと寄った。
この流れでそんなこと言うのか?
正直そう思ったけれど、それがどこか松本らしくて「そうだな」と頷いた。
テーブルにパーティー開けしたお菓子を並べた。
「ジュースは?」
「こっち」
短い返事をして窓を開ければ、雪の中に突っ込まれたペットボトルが頭を出していた。
冷蔵庫には隠せなくて外に埋めていたのだ。
「冷たくなりすぎだろ」
「これすごいよねー」
自然の力に感心しながらお菓子を摘めば、月はもうだいぶ高いところまで昇っていた。
日付が変わる少し前ともなれば、規則正しい生活を送ってきた松本の上下の瞼がくっつきそうになっている。
「松本ー」
「んー?起きてるぞ
とはいえ一之倉の肩に頭を預けたまま動かない。

あともう少しだけ、起きててよ。
あと5分で、松本と同じ18歳になるから。