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風花莉亜
2026-01-16 08:51:52
6363文字
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ノンフィクション。
第18回とどち版ワンドロワンライ参加作品。千早くん視点で、両片想いからの両想いの話。2年生の夏ごろイメージ。こんなんばっか書いてるなぁって感じのやつです
いつも通り何でも大丈夫な方向け!文章下手なのと誤字脱字は絶対あります!
「千早っっ!!」
教室の後ろ側から大きな声と共に血相を変えた藤堂くんが顔を出す。
朝なのでまだ人の疎らな教室内は、突然響いた声に驚き、シンと静まり返った。
注目の的となっている事にも気付かない藤堂くんは、軽く息を乱しながらも俺の前に立って「大丈夫か!?」と言うが、大丈夫、とは?
全く意味を理解していない俺を余所に、徐に伸びてきた手が前髪を上げ、顔が近くまで迫る。
突然のドアップに、俺の心臓は飛び跳ねた。
「な、ななななんですか!近い!近いです!!」
「いでっ」
腕を突っ撥ねて藤堂くんの顔を押しやった。
グキっと嫌な音がしたが、今の俺には気遣う余裕なんてないってか、それどころではない。
少し動いたら唇が触れてしまうような距離感なんて、片想いを拗らせてる童貞野郎には刺激が強かった。
近い近い近い近い!!いやさっき遠ざけたから近くはないんだけど、あぁぁぁ、なんかもうわけわかんなくなってきた!!
大混乱である。
「─────や」
「──は──や」
なんだ、何か、聞こえる?
グルグル目を回す俺の耳に、少しずつだが外界の音が聞こえ出す。
聞き馴染みのあるような、ないような、やっぱりあるような。
「千早!!」
「はいっ!?」
「お、やっと戻ってきた」
聞き馴染みがない訳がなかった。
生きてきた中で一番と言っていい程耳にした事のある単語、自分の苗字を呼ばれていたのだから。
やっと反応を見せた俺に眩しい笑顔を振り撒いてくる藤堂くんとの距離は、三十センチもない。
なんで!?
遠ざけた筈の顔がまた近くに迫っていて、コイツ距離感バグり過ぎだろがと悪態をつく。
にかっ、と笑う顔が眩しい、くそ、顔が良いな!?昭和のヤンキーの癖にっ!!
近い距離感にドギマギしながら、明後日の方向に顔を背けて視界から藤堂くんを消す。
これで少しは平常心に戻れる、はず。
バグバグいい過ぎて少し痛いくらいの胸元に手を置いて宥め、大きく息を吸い込んだ。
「
……
あの、首、痛かったですよね?」
絞り出した心配をする声は小さくて、果たして藤堂くんにちゃんと届いただろうか?
確認の為に目だけを藤堂くんへ向けると、キョトンとした顔をしていた。
「首?」
なんの事だと言わんばかりの態度に驚愕する。
おい、ついさっきの事だぞ、正気か!? それとも脳筋が過ぎると三歩も歩けば忘れるようになってしまうのか!?うそだろ!?
「なんかよくわからんが、大丈夫だぞ?」
「さいですか
……
」
首を傾げる藤堂くんに脱力する。
大丈夫そうなら、良い。
もう、なんでも良い。
こんな時、何で自分はこの男の事が好きなのかと言いたくなる。
見た目も性格も、考え方だって正反対。
根っこの所に同じ物を見付けた気がするけれど、それだってどうか怪しい。
何故、藤堂くんなんだろう。
しかし気付けば目で追っているし、他の人が横に立っていればモヤッとする。
まして仲良さそうに話してたりすればもう、心中穏やかではない。
流石に野球部の面々相手にはそんな気持ちにはならない、
……
やっぱり、あまり仲良さそうだとちょっと嫌だ。
ちょっと嫌だと思っている事も、本当は嫌だ。
恋愛って実は面倒臭いのだと、藤堂くんを好きになって初めて知った。
「千早ってさ、睫毛長いのな?」
これだよ。
静かにしてたと思ったら、なんだいきなり。
人が脳内でアレコレ考えてるってのに、こんな風に藤堂くんはその思考を霧散させてくる。
ちゃっかり前の席の椅子に腰掛けて長い足を組み、覗き込むようにして俺を見ているのが気に入らない。
……
待って、もしかしてずっと俺の顔を見ていたのか? 何で藤堂くんの事が好きなんだろうとか考えてる間ずっと?え、マジでやめてくれ。
逆は良いけれど、こちらが見られる側なのは落ち着かない。
また心臓がアップを始めてしまって、気を紛らわせる為に慌てて話題を探す。
今日は暑いですね? いや、今日だけじゃない上に一瞬でラリーが終わる。
おにぎり持って来てます? これじゃまるで食い意地が張っているみたいで俺が嫌だ。
何か他に
……
あぁ、そう言えば、うってつけのがありましたね。
朝一番の、俺にとっては全く心当たりのない心配が。
そうと決まればと、早速口を開く。
「あの、最初に言ってた大丈夫かって何の話ですか?」
「なにが?」
「こんの阿呆!」
「ンだとコラ」
「あっ!すみません、間違えました」
「間違えたようには聞こえなかったけどな!?」
ついうっかり口から本音が漏れてしまったので、ササッと口を押さえて、形だけの謝罪をする。
藤堂くんはそんな俺に向けて握りこぶしを作るが、今の今まで、一度たりとして俺を殴った事はない。
腹パンするぞとか言いつつ、本当にした試しが無いのだから、完全にフリだけだという事はわかっている。
何だかんだ言いつつ、俺に甘いよなぁ藤堂くんも。
「何がって、来て早々に人の前髪上げてきたアレですよ」
そう言えば、「あー
……
」なんて言い淀むから益々気になってしまった。
藤堂くんの態度に、そんなに言い難いような、俺にとって良くない事なのだろうかと不安になる。
自分的にはこれと言った不調もなく、極めて好調だけれど、自分自身では気付けていない可能性もゼロではない。
目の前の男が意を決したようにこちらを見てくるので、何を言われるのかと身構えた。
「おめェが夢に出てきた」
「はい?」
斜め上の答えすぎて素っ頓狂な声が出た。
だって誰が予想しただろう、あなたが夢に出てきました、だなんて。
「だから、千早が夢に出てきたんだよ」
「聞こえてなかった訳じゃないんですけどってか、勝手に出演させるのやめてくださーい」
「うるせェ、そっちが勝手に出て来たんだっての!って、そんな事はどうでも良くってだな。その、俺の事庇って怪我したから、だから、何か千早に良くない事でも起きたんじゃないかって、目覚めてからすげー不安になって
……
」
「はぁ。でもそれ、夢でしょう?」
「そうなんだけど、心配になっちまったんだからしょーがねーだろ」
全く、構えて損した。
たかだか夢一つで焦って、おはようの挨拶もなしにいきなり人の前髪を上げてきたのかコイツ。
酷く心配そうな色を乗せた瞳を思い出して、でもまぁ、こんな風に心配されるのは悪くはないと思う。
夢に出演するのだって、本当はちょっと嬉しかったり。
どうしよう、藤堂くんは眉を寄せて不安そうな顔をしているのに、俺ときたら嬉しくなってしまっている。
いかんいかん、ニヤけようとする表情筋を叱咤して、努めて柔和な笑みを浮かべて藤堂くんを見た。
「俺はこの通り、なんともないですよ」
「だよ、なぁ」
「何て顔してるんですか、バカですねぇ」
「うっせーよ」
サムズアップする俺を見て苦笑する藤堂くんの眉はまだ八の字になっているが、さっきよりかはマシになった。
力なくうるさいと言いつつも、少しだけ笑ってくれて安堵する。
藤堂くんには、悲しい顔も辛そうな顔も似合わない。
いつもみたいに、白い歯を見せて大きく笑ってるのが一等似合うから。
「でもまぁ、それが正夢になったとして?もし傷跡が残ったら、藤堂くんが責任取ってくださいね?」
「!」
茶化すように下から覗き込みながら、口元に弧を描く。
そうすれば、普段はお世辞にも目付きが良いとは言えない目がまんまるになって、あ、ちょっと可愛いかも、なんて。
でも、そんなに驚く事ですかね?ちょっとした冗談なのに。
「そんな顔しなくても、冗談ですってば。藤堂くんがあまりにもらしくない顔してたので揶揄っただけですよ」
「っ、とる!」
「え?」
「責任取るから!!」
「ちょ、声がデカイ!!」
少し顔を赤くしながらも真剣な顔で責任を取るだなんて言われて、嬉しくない訳がなかった。
釣られるようにして頬が熱くなるのを感じたが、正直それ所ではない。
予想外の言葉にときめく俺を無視して、何故か湧き起こる拍手。
中には「おめでとう」なんて言ってる人もいて、何が『おめでとう』なのかと首を傾げた。
だって、意味がわからないのだ、クラスメイトから向けられるこの拍手の意味が。
と言うか、ずっと会話を聞かれてたのかと思うと羞恥心で死ねる!!あ!ヤメロ!そこの集団、微笑ましいって顔するな!!
生暖かく見守られている状況に耐えられなくて、少々乱暴に藤堂くんの左腕を引っ掴んで教室を出た。
もう少しでHRが始まるとか、そんなもの知らん!
ほぼ人がいない廊下を二人で疾走する。
走る事にだけ専念している俺と違い、藤堂くんは楽しそうに笑っていた。
逃避行みたいとか言ってる気がするけど、きっと空耳だ。
……
あながち間違いではないけれど。
藤堂くん曰く逃避行の末やって来たのは、誰も居ない屋上。
煙と何とやらは高い所が好き。
そんなつもりはなかった、ただ開放的な場所に行きたかっただけなので、断じて馬鹿ではない。
ただ、今日は天気が良過ぎたから、太陽に近くなる屋上は失敗だったかもしれない。
扉を開けた瞬間に後悔した。
暑い
……
。
ジワリと汗が出始めてしまって、どうしたものかと思案しようとした所で、いつの間にか移動していた藤堂くんにこっちだと手招きされる。
そんな所に日陰が。
出入口が太陽の反対側に日陰を作っていて、そこに入ってしまえば風も吹いていて案外涼しかった。
ドカリと座り込む藤堂くんの隣へと、膝を抱えて座る。
そよそよと吹く風が心地よくて、目を細めた。
「これってさ、授業も始まっちまうんじゃねーか?」
「そうですね」
「いいのかよ、優等生?」
「仕方ないです。またあの生暖かい目で見られるのは嫌ですから」
「ははっ、全然優等生じゃなかったな」
「そもそも優等生だなんて一言も言ってませんし?まぁ、藤堂くんよりは優等生ですけどね?」
顔を見合わせて同時にニッと笑う。
千早くん不良〜、なんて言ってくるが、そっくりそのままお返しします。
でも、たまにはこうしてサボるのも一つの青春だと捉えて良いのでは?
雲一つない青い空の元、好きな人とこうしてサボる、ほらやっぱり青春漫画みたい。
しかも恋愛系の。
……
なんと言うかこれは、本当にしてしまうのも吝かではないと言うか、つまり、ノンフィクションにしてしまおうか、なんて考えが頭を擡げる。
藤堂くんではないけれど俺の勘が『イける』と言っているので、それに従うのもアリよりのアリではないだろうか?
だって最近のキミには悪い虫が群がり始めていて、知らない間に彼女なんか作られたらたまったものではない。
おめでとうございます、なんて口が裂けても言えそうにないし、藤堂くんの隣を誰かに明け渡す事だってしたくない。
本当はこの気持ちを墓場まで持っていくつもりだったのに、藤堂くんがあんな事言うから、だから欲が出てしまったじゃないか。
グッと握りこぶしを作って、ゆっくり力を抜いていく。
開き切った手のひらを見て心は決まった、後は言うだけだ。
膝を抱え直しながら、震えそうになる唇を動かした。
「さっきの」
「うん?」
「責任取るってやつ、本気にしていいですか?」
俺の言葉に藤堂くんが目を見開く。
少し前にもこんな顔を見たな。
決して大きくはない目を目一杯大きくしたやつ。
藤堂くんは大袈裟なくらいパチパチと瞬き、それから一言「いいよ」と言った。
あまり深く考えていそうなかったので、念を押す為にもう一度本当かと問えば、あっけらかんとしながら本当だと言う。
信用できない?なんて言われて、そうではないと首を振る。
信用出来ない訳ではない、けれど本気にしてしまうには少し怖かった。
言うって決めた癖に逃げ腰になってしまうのがダサくて嫌で、カッコ良くキメたいのに、なんだか上手くいかない。
恋愛ってやっぱり難しい。
「まさか蒸し返してくるとはな。なかった事にされるかと思ってた」
「だって、撤回されたら嫌ですし」
「しねーけど。つーか、どうした?やけに素直じゃん」
「だって」
「だって?」
まるで子供に接するように優しく微笑まれて、妹さんの見ている藤堂くんはこんな風なんだと、思いがけない追体験をする。
それを嬉しいと感じてしまう位には藤堂くんに惚れてると考えると、なんだか悔しい気もするが。
悔しいから、だから俺からも一つ、反撃を。
にーにモード入っちゃってる藤堂くんには悪いけれど、今から言うのはそんなモードの藤堂くんに向けてではない。
同い年の高校生、俺の好きになった藤堂くんへ向けて、だ。
精々、耳の穴かっぽじって聞きやがれ。
「
……
最近、藤堂くんの周りがやたら賑やかで、落ち着きません」
「ん?そりゃどーゆー意味だ?」
「誰かと楽しそうにしてるとモヤモヤします。俺と話せば良いのにって」
「ヤキモチ、か?」
「そうなりますかねぇ、最悪な事に」
「なんっで最悪なんだよ、バカ」
「誰がバカだバカ」
「バカって言う方がバカなんだよバカ」
バカバカ言い合う事すら楽しいだなんて、どうかしている。
けれど今、藤堂くんの目に映るのも話すのも考えるのも、全部が全部俺だけだと思うと、優越感で口元がニヤけてしまう。
そっか、俺は藤堂くんの、
「キミの、特別が欲しいみたいです」
「特別?」
「わかりませんか?」
「わか
……
んねーから、ちゃんと言ってくんね?」
「わかってる、って顔してるくせに。意地悪ですね」
「だって、千早の口から聞きたい」
だから言って? なんて、俺の頬に手を添えてくるのやめてくれませんか?
顔を逸らす事も目を背ける事も許さない傲慢さが狡い。
こんな事、他の誰かにしてないですよね? もししてたら許せないんですけど?
ジッと俺の言葉待つ藤堂くんの手に己の手を重ねると、藤堂くんの手が熱く感じた。
あー、これ、藤堂くんの手が特別熱いんじゃなくて、俺の手が冷たいんだ。
こんなにも外気は熱いのに冷たいだなんて、緊張するにも程がある。
落ち着かせる為にふっ、と息を吐いて、重ねた手をギュッと握った。
今を逃すな、ちゃんと伝えろ!
「俺は」
「うん」
「俺は、藤堂くんの事が好きです。だから俺を、キミの隣に置いてくれませんか?」
「いつも置いてるつもりだけどなァ」
「それはそうですけど、意味が違いますよ」
「違わねーよ。だって俺も、千早が好きだ」
「そ、れは
……
初耳ですね」
「今言ったからな。でもよ、俺の気持ちなんかとっくに気付いてただろ」
気付いていたか、否か。
完全に藤堂くんの気持ちをわかっていた訳ではなく、あくまで『もしかしたら』の域は出なかった。
なんなら『そうだったら良いな』が見せる幻の可能性すら考えていた。
自分に都合の良い風に見える、なんてことはよくある事だ。
恋は盲目なんて言葉があるくらいだ、恋愛なんて、目の前が見えなくなりがちですし? だから自分は大丈夫なんて言うつもりもない。
特に藤堂くんなんて眩しいくらいなので、目が眩んだっておかしくない訳で。
まぁ、だから、出来れば現実だって教えてほしい。
言葉も良いけど、行動で。
「藤堂くんが俺の事どう思ってたのかなんて知らぬ存ぜぬなので、わかりやすく教えてくれませんか?」
「どうやって?」
「どうってそりゃ、」
自分の唇をトントン、と指し示してやれば、ギラリとオリーブグリーンが光った。
……
選択ミスったかも。
そんな風に思った所で後の祭りで、ファーストキスがこんなに激しくなるだなんて、聞いてないんですけど!!
END
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