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二ノ宮てとら
2026-01-16 06:52:14
2120文字
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泣かされた日
城海 高校生
城之内 海馬 付き合って半年位の城海
海馬を外に連れ出す城之内の連作の一部 基本海馬視点
放課後デート 05
泣かされた日
少し離れた公園にお茶屋さんがあって、飯がおいしいんだと、城之内が言った。
「飯?」
「茶飯っていうのかな」
公園は隣町だったので学校からは車で移動した。
横に長い池があり風情があった。柳の下には眼鏡橋があり反対へ渡れるようになっている。進むと大きな岩が壁を作っていた。かつては城があったのだという、名残だ。奥まった池の端には小さな浮島があり社が見えた。
穏やかな午後で池にはボートが数台浮かんでいる。目的地はスポーツ施設を併設した別の区画だという。池の端を歩いて店を目指した。
「反対側につけてもらっちゃった。悪い」
「散歩にはちょうどいい」
紅葉が始まり、赤や黄色に色付く木々は美しく思え、気分は良かった。
「ここだ!」
垣根を抜けた平らな場所に小屋が立っている。入り口はガラスの引き戸で、地方で見かける道路脇のドライブインにも似ていた。茶屋から連想していた風雅なものが一切消え、トタン屋根でできたバラックのような建物に案内され、混乱しそうにはなったが腹を立ててはいなかった。雑木林を切り開いただけの場所にも見えるが、のれんにはお茶屋と書かれているのも確認した。
凡骨は顔なじみなのか「おばちゃん、いつものちょうだい!」と店員に話し掛けている。
オレは店に入ったときから漂う香りに、まさかという思いでいた。
金属のトレイに載った食事がテーブルに置かれた。
コップに入った水と茶飯と漬け物と、大きな器にぐつぐつと煮えたおでんが見えた。
こみ上げるものがあったがどうにか耐えた。ハンカチを出して口を覆っていると凡骨は訝しげな顔をした。
「どうかしたか?」
四人掛けの席に対面で座っていた。隣の空いている席を必死で指さすと奴は不可解だという顔で寄ってきた。
声を精一杯潜めて打ち明ける。
「食べられん」
「え?」
「あたったことがある」
「好き嫌いないって」
「吐きそうだ」
青くなってきたオレに気付いたのか「ちょっと外出てきます」と断りをいれ、連れ出した。
家庭菜園の脇を抜け、茶屋が遠くに見える位置まで移動した。赤いプラスチック製の簡易ベンチに腰を下ろした。
「まじか」
何にかかっている本当なのかという言葉なのだろうか? 城之内が歪んで見えた。吐き気を耐えていたので涙腺がゆるんだ。
「苦
…
しい」
「悪かった。そこまで苦手だなんて知らなかった」
「嫌いだとは知っていたのか」
「昔何かで読んだんだ。ゲーム雑誌? てっきり、笑いをとるためかなって」
「
…………
」
「ここで待ってろ」
そう言うと一旦店に戻ったが、ビニールの手提げを持って現れた。
「おばちゃんにはうまく言っといたから、帰ろう」
迎えの車に城之内は乗らなかった。
「一緒だと匂っちゃうから」
明らかに傷心しており、固い表情で手を振る姿が気にはなった。しかし運転手には出してくれと告げた。
その後しばらく城之内と会う機会がなかった。何を聞いても口論になりそうで考えないことにした。
食す機会はないだろうと油断していたのだ。
後日、城之内はおでんを勧めてくるようになった。奴の家だったが食べ物の匂いはしていなかったのに。
……
どういうことだ?
「海馬、好き嫌いをなくせ」
「食べられんのだ!」
「わかってるよ。オレだってあるよ、トラウマ食」
張り倒そうかと思った。けれど凡骨からは思い詰めたような悲壮感が漂っていた。
どうしてそちらが辛いという表情をするのだ。
「本当の弱点を誰でも知ってるところに公開しちゃったんなら、もう克服するしかないだろっ。
お前は『海馬瀬人』っていう、会社の顔なんだろう」
痛いところを突かれた。城之内のいうことは『弱点のない海馬瀬人』として必要なことだったので承知した。
「オレも、だめなものを食べられるようになるように、一緒にやるから」
吐いても蹴っても泣いてもいいからとも重ねて言った。
多少は普通の顔をして食べられるようになった頃に、城之内が漏らした。
「本当は好きなものを、嫌いって言ってたくさん食べるって話があるじゃん」
「少し違うが、落語の『饅頭こわい』のことか」
「それかな。だからオレが一番おいしいと思ってる店につれていったんだ」
きっかけが茶飯だったわけがやっとわかった。城之内はあの日ずっと楽しそうだった。
終
――――――――
今週のデュエリン、高橋さん生アフレコに萌えました。こんな喋りで合ってるかなと、嫌いなものおでんから勝手に妄想したこの話を上げます。
後で消すと思います。(全体的にまとめたい。2026年に印刷したい希望!)
初出 260116
メモ魔筒16より
転載・使用禁止(生成AI含めて禁止)。
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