父さんが本や漫画を読むところは見たことはないが、映画はかなり好きだったようだ。部屋の棚にはテープが並んでいた。金曜の夜は棚の中から一本選び、俺を誘って晩酌しながら鑑賞するのが唯一の趣味のようだった。土日が休みの生活をしていたわけでもなかったのに、どうして金曜日だったのかは分からない。柴さんや薊さんが来る確率が高かったからかもしれない。柴さんが来ようが来まいが、金曜日は映画の日であり続けたけど。
俺は金曜日はコーラが飲める日だから好きだった。父さんは「映画は!コーラ&ポップコーンだろ!」というTシャツを持っていたから、そういうことなんだと思う。聞いたことはない。聞いたら面倒なことになるからだ。コーラは美味い。それでいい。
映画を見ながら父さんは「おぉ」とか「うぉっ」とか「いいぞいけっ!」とか「ばかやろう!」とか場面ごとに叫んだりする。映画館では静かなのかな?と想像したが、父さんが映画を静かに見るイメージは全く沸かない。一度だけ、柴さんと二人で映画館に行ったことがある。「父さんも黙って見てるの?」と聞いたら、柴さんは明後日の方向を向いて黙っていた。無理らしい。それはそうだろうな。
キスシーンの父さんは「うぉぉぉぉ!早回ししねえとな!」とでかい声で叫び、落ち着きなくビールを煽るが、実際のところ早回しをしたことはない。父さんが煩いから、キスシーンは少ない方はいい。なんで毎回、必ず尺があるんだろう。
「なんでキスシーンが必要なの」
たぶんその日は虫のいどころが悪かったんだろう。そんなことを聞くつもりじゃなかったのに、父さんの煩さに黙っていられなくなった。お腹が痛いか、お腹が空いていたかのいずれかだったのだと思う。もう忘れてしまった。
「そりゃ、ヒロインが好きだからだろ」
「好きなら、キスするの?父さんとも?」
父さんとはしたくなかったのに、口が勝手に動いた。売り言葉に買い言葉というやつだ。機嫌が悪いにしても、言いようがあるだろうに。
聞くとモヤモヤとした気持ちになるのが想像できたから、でもある。ポップコーンが食べたいわけではない。あんまり美味しそうではない。羨ましいとも思わないし、ポップコーンを知らない自分がかわいそうとも思わない。色んなことを知らないが、この世の14歳は日本刀の作り方は知らないのだから、知ってることの分野が違うだけ、と思っている。それを
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