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こばと
2026-01-15 21:25:05
1775文字
Public
タキ書♀
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書記生に怒られるタキ先輩のお話
レイの行動は自分のためのもの、と驕り高ぶっていルーカス・スタンリーが、書記生にガチ怒られしてあたふたする姿が見たかった
当たり前にお付き合い済みのタキ書♀です
ここは特別寮の談話室、時刻はおやつどき。
窓の向こうには晴れ渡る青空が広がっていて、このあと開かれる予定だったティーパーティにもってこいの気持ちのいい昼下がりだ。
けれど俺、オリヴァー・クノスペンぴちぴちの二十歳は、そんな平和なはずの空間で繰り広げられている光景を固唾を呑んで見守っていた。
あとからやって来る予定のマニたちの到着がこんなにも待ち遠しい瞬間、もう二度とやってこないかもしれない。
目の前には、いつも笑顔を絶やさない穏やかなレイが、ほかの誰でもない大好きなタキ先輩に向かって声を荒げている。
キッと睨みつけるように先輩を見上げる瞳はうっすらと涙の膜が張っていて、そんなレイを前にしたタキ先輩は、見たこともないくらいに狼狽えていた。本当にこの人があのタキ・ルーカス・スタンリー? とか目を擦りながら思っちゃうレベルで、レイに気圧されている。
「ひどいです、タキ先輩
……
!」
「わ、わりぃ。まさかオリヴァーたちと食べるつもりで作ってたとは思わなくて」
でもこればかりはレイの気持ちもわかるから、タキ先輩の肩を持つわけにもいかず、俺はお口にチャックで二人の動向を見守るしかないわけで。
事の顛末はこうだ。今日開かれる予定だったティーパーティではそれぞれお菓子を持ち寄ることになっていて、レイは以前タキ先輩に振る舞って好評だったひとくちパイクッキーを焼いたのだと、談話室へやって来る途中の道すがらうれしそうに話していた。
そして、不幸にもカウンターの脇に置いたカゴに盛り付けて冷ましていたクッキーを見つけたタキ先輩が、うっかり食べてしまったらしい。
「なんで勝手に食べちゃうんですか?」
「
……
お、俺に作ってくれたやつかと思って」
「
……
タキ先輩が人のものを勝手に食べるような人だなんて、思わなかったです」
「いやほんと、まじで俺が悪い。そうだよな、人のものを勝手に食べちゃ駄目だよな」
「なんで勝手に食べちゃったんですか?」
「
……
うん。なんで、だろうな
……
」
なんで勝手に食べるの、と壊れた蓄音機のように繰り返すレイに、返す言葉もないのだろう。弱りきった様子のタキ先輩が右手で顔を覆うようにして、肩を落としている。心なしか右手の甲に刻まれた双翼双剣のステラも、しょぼくれて見えた。
「言い訳にしかなんねーけど
……
ほら、前に俺に同じクッキー作ってくれたことがあっただろ? だから、また俺のためにレイが焼いてくれたと思って
……
自惚れて、すんませんでした!」
「た、タキ先輩っ?」
すごく綺麗な九十度の直角で頭を下げたタキ先輩に、空気に徹していたはずの俺もさすがに声を上げてしまった。まさかタキ先輩のガチ謝罪姿を目の当たりにする日が来るとは思わなくて、まじでビビる。
ていうか普通に、置いてあるクッキーを見ただけでレイが焼いたってわかるのもすげーし、ナチュラルに自分のために用意されたものだって思えるの、すごくないか? 何この、愛されてる自信。そりゃもう、うっかり食べますわ。だって『かわいいレイが俺のために焼いてくれたクッキー』だもん。いやむしろ、そんな思い出のクッキーを俺たちがティーパーティで食べさせてもらおうとか、そっちのほうが図々しいし烏滸がましいだろ。
さすがにこれは許されるだろ
……
と思いながらそっと隣を窺うと、くちびるをへの字にしながら顔を真っ赤にしたレイが、ジークの腹の音みたいな声を出して唸っていた。すごく、何かに葛藤している顔だ。でも、見た瞬間わかった。こんなこと言われて、絆されないわけないって。
「
……
レイ?」
「
……
もうっ、タキ先輩のばかっ! ずるいっ!」
「いてっ、いてて。わ、悪かったって!」
ぐるぐると唸り声を上げるレイの顔を心配そうに覗き込むタキ先輩は、ポカスカ殴ってくる拳に痛いと声を上げながらもされるがままで。困ったように笑いながら、でも、感情を爆発させるレイをかわいいなって思っていそうな顔をしていた。
最終的に、ぎゅーって抱きつきながらかわいい恨み言をモゴモゴと言い連ねるレイの背中をさすってあげてて、あの、俺
……
もう部屋戻っていいかな?
とりあえず、今日のティーパーティは延期ってみんなに言ってこようと思う。
以上、談話室から、オリヴァー・クノスペンでした!
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