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roku
2026-01-15 19:36:35
1307文字
Public
松イチワンドロライ
第10回『視線』
※同級生モブ子目線
席替えで窓側一番後ろという特等席をゲットした私はクラス全体を観察することにハマっている。
毎日飽きもせず同じメンバーとくだらない会話をする男子。
毎回違う友達が集まってくる人気者の男子。
休み時間になればすぐにどこかへ消えていく男子。
ひとり静かに読書をする男子。
色んなタイプがいる中、私の前の席に座る一之倉の視線はいつも同じ場所へと注がれていることに気づいてしまった。
廊下側から二列目の真ん中。よくわからない語尾をつけて話す隣のクラスの男子と笑い合っている、そう、松本稔。
私は一之倉の背中をシャーペンでつついて「ねぇ」と声をかける。
邪魔すんなよと言わんばかりの一之倉は「なに?」不機嫌全開の怪訝な顔で振り返った。
「一之倉ってさ、いつも松本のこと見てるよね」
ふふっと意味深な笑いを含んでみる。するとさらに不機嫌を上乗せしたような低い低い声で「は?」と返された。
見てるよねって言っただけなのに。
「カッコいいもんね」
「
……
お前何なの?」
話を続けた私に、体ごと横に向け座り直した一之倉。私は親指と人差し指を顎にあて、しっくりくる表現を探す。
「うーん
…
強いて言うなら一之倉の味方かな」
「
……
意味わかんない」
そう言いながらも私が松本に気がないことは伝わったのか、一瞬表情を緩めて前を向き直す。ただ、その視線は松本へ戻ることはなく、一之倉はチャイムが鳴るまでの間、雲ひとつない晴れ渡った空を眺めていた。
松本から私たちの方に向けられていた視線には気づかなかった。
――
「そっちはオレがやる」
頭の遥か上から降ってきた声に顔を上げると「それ」と私の手にある黒板消しを指差し、貸せよと手を出したのは松本。
そういえば今日の日直の相手だった。
「ありがとう。じゃあ日誌は私が書くからそっち終わったらバスケ行ってね」
黒板消しを手渡し日誌を開く。今日1日を思い出しながらペンを走らせていると教壇から刺さるような視線を感じて手が止まる。
ゆっくり顔を上げると黒板を半分ほど消し終えた松本と目が合った。
「えっと
…
何か?」
「一之倉と仲良いんだな」
「へ?」
思いもよらない角度から切り込まれた質問に間抜けな声が漏れた。
「
……
付き合ってるのか?」
続いた質問を理解するのに時を要してしまい、暫しの沈黙が流れた。
「やっぱり
…
」
そうなんだな。と呟いた松本の眉根がきゅっと寄り、瞳に悲しみの色が宿る。くるりと黒板の方へ体を反転させ残りの作業を再開した彼の背は、憂いを帯びている気がした。
これってもしかして
……
?
「ちょ、ちょっと!!」
「
…………
」
「付き合ってないから!!」
私たち以外誰もいないしんと静まり返った教室で、その背に投げかけた否定の言葉は思ったよりも随分と大きくなった。
「
……
そう、なのか?」
声のボリュームに驚き振り返った松本の瞳が、ゆっくりと喜びの色に変わっていた。
「そうだよ。だって一之倉は
…
」
言いかけて口を噤む。
ここから先は私が伝えることじゃない。
「何だよ?」
「ん?何でもない」
「気になるだろ」と言う松本を無視して日誌を書き終え、荷物を纏めて教室を出た。
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