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望月 鏡翠
2026-01-15 19:07:58
902文字
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日課
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#1962 星は西に流れた2
#毎日最低800文字のSSを書く/チェス盤戦争
オドは、この地を訪れるのは初めてだったが、決して世間知らずではない。
ただ、人間がいたことに驚いていた。広大な草原は、容易く生きられる土地ではない。凍るほどに冷え込み、水はなく食べるものも僅かである。ここで生き抜くことができるのは草を食む毛皮を持つ生き物で、脅威となるものは渇きと毒蛇と、そして敵対士族である。
移動の足を持たぬ人間が何人か纏まって山中にあるという状況も、それがおそらくは人の財産を奪うためにあるという状況も、意外性があって愉快だった。
確かに草原の民も財を蓄える。移動に耐えうるように身につけられるものが多い。しかし、金を持っていたところで、食うものがなければ死ぬだけだ。黄金を抱いた骨は愚かしさと虚無の象徴だが、ここでは違うのだろうか。
手入れの行き届かぬ刃を構え、血走った目でにじり寄ってくる。彼らの状態は貧困を意味していたが、その状態でも生存が可能なのは、この地の豊かさを意味している。
(興味深い)
新しい土地の戦い、新しい土地の生き方。この地のことを聞き出すために、何人か生かしておいてもいいかもしれない。
武器を取る。馬上での戦いを主とするオドの武器は弓矢だ。遮蔽物が多く馬を狩ることができない森の中で、通じる戦法ではない。
「馬と、金目のものを置いていきな。その弓もだ」
仕方がないと馬を降りる。訓練された馬はどんな財よりも貴重だ。こんな下賤との小競り合いで傷つけられたら困る。
背の弓を下ろすと、彼らは無造作に手を伸ばしてきた。弦を張っていない弓など、武器に当たらないと考えていたのかもしれない。愚かな考えだ。
弓を振るう。しならせてより先端速度を増したそれは、鞭のように野盗の手を弾いた。乾いた皮膚が破れて血が出る。汚い悲鳴と共に男は唾を飛ばした。不愉快な飛沫を避け、矢筒の矢を抜く。
仰け反った男の喉に、刺した。
男の頭を掴んで仲間の方に向けさせてから、矢を抜き去る。喉から溢れた血を浴びせかけると、野盗たちは塞がれた視界と血の匂いに悲鳴をあげて顔を覆った。
視界を塞がれた男たちは反応が遅れる。オドは、姿勢を低くして切りかかった。
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