roku
2026-01-15 14:29:13
1314文字
Public 松イチワンドロライ
 

第13回『垂れる』

大人軸/同棲中

共に暮らしている部屋で映画を観るのがここ最近のオレたちの週末。
観る映画は週替わりでみたいものを選ぶ。
今日はオレが選んだ、オレたちが学生の頃とても人気のあったドラマのスピンオフ。とはいえオレも稔もバスケで忙しく当時のドラマは見てないけど。ただ、どんなものを選んでも稔は「聡が選んでくれたから」と真面目に最後まで見てくれる。それが嬉しくて、毎回緩む顔を引き締めるのが大変だ。

稔はソファを背もたれにしてラグに座り、足の間にオレを座らせ後ろから抱きしめたまま映画を観るのが好きなようだった。だけどオレとしては二時間身動きが取れないのは我慢できないほどではないけれど意外と大変なのだ。なぜなら時折垂れてくる稔の前髪が耳や首筋をなぞりくすぐったくて身体を動かすと、変にスイッチが入ってしまうから。そうなると映画どころではなくなってしまう。だから今日はソファに並んで座ることを提案した。稔は「聡がそう言うなら仕方ねぇな」と渋々ながらも受け入れてくれた。

再生ボタンを押す。
ソファに浅く座り胸の前で腕を組んでいる。その背筋はピンと伸びていて、まるで試合中のベンチに座っているみたいだ。だけどそれとは違うと思ったのはその表情だ。ほんの少し寄っている眉間のシワと軽く突き出した唇。あぁ、機嫌悪いな。
「稔、怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
「じゃあ拗ねてるの?」
「黙って見ろよ」
図星だったのかオレに視線をくれることもなく画面をまっすぐ見つめる稔。言われた通り黙って映画を観るも、稔の様子が気になり内容は一切頭に入ってこない。こんなことになるなら今まで通り、稔の腕の中で身動きが取れない方がよかったな。
ソファの上でひとり分空いている隙間が苦しい。
右を向き様子を覗うも、その横顔は垂れている前髪が邪魔をして表情までは見えない。
そっと手を伸ばし垂れている前髪を掬って耳へとかける。ピクッと反応を示し「何やってんだよ」と呆れたように視線をこっちへ寄越す。
「前髪のせいで稔の顔が見えなかったから」
オレじゃなくて映画を見ろって言われると思ったのに、「……なら切ってくれよ。聡がオレを見れるように」なんて少しばかり赤く染まった顔して言うのだから反則だ。
あーあ。
今日はオレのスイッチが入っちゃったじゃんか。
「ダメ。カッコいいから」
稔との距離を詰め、ソファに上がって向き合うように太ももに跨る。耳に触れていた手をそっと頬へと滑らせた。
「ねぇ、機嫌直った?」
膝立ちすると、オレが稔を見下ろす形になりいつもと違う景色に興奮する。そのまま顔を寄せて唇を合わせるとグッと引き寄せられた腰。
「聡、元気になってるじゃねぇか?」
嬉しそうに口角を上げ笑う稔。確かに稔のお腹に当たるオレのモノは徐々に硬くなり始めている。
「わ、わざわざ言わなくていいんだよっ!」
「可愛いな」
今日はオレがって思ったのに。気づけば稔に抱えられベッドに押し倒されて、結局主導権を譲ってしまった。

何度も抱き合って、ぐちゃぐちゃでべしゃべしゃになってもなおオレを組み敷き見下ろす稔の前髪から垂れてくる汗が色っぽくて好きだなんて、稔は知らないだろ?