望月 鏡翠
2026-01-15 14:05:25
951文字
Public 日課
 

#1960 泥の味を知るものたち10

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作


 アンタイアーがリュネストと手を組んでくれればいうことはない。しかし、かの家が既にどこかと懇意にしているのなら、その提案は彼らの機嫌を損ねるだろう。
 例えばオーキ家である。誇り高き騎士と山に住まう戦闘民族は縁が遠いように見えるものの、戦いの道に生きるものとして通じ合うものがあるのだろう。
 合同で儀式を執り行う祭壇もあるというし、実のところ文化的には手を取り合える関係なのだ。
 オーキの代表としてこの場にいるグングニルは、生真面目な武人という印象だ。ガニメデ主催の食事会だから、ディルストーン寄りの人材をよこしたのかもしれないが、裏でこっそりサンドリエイルと手を組むようには見えなかった。
(いつまでも人任せというのもな」
 玉座とは血を流さずには取れぬものだ。
 海の監視のためと行って築いた砦がある。あそこに人と物資を集め、海の守りを固めて、海岸から攻める。
 アンタイアーのものが何を考えているのかはわからないが、一つだけ確かなことがあるのだ。
 彼らは戦と血を好む。争いの匂いをさせれば動くだろう。
 今のトルガが戦を起こすのに足らぬものは、戦力ではない。
(大義というやつか)
 俺のために命を捨てろというに足る輝かしい言葉。それが定まらねば、誰を打てば良いのかも決まらぬ。状況が硬直して埒が明かぬから、では流石に士気に関わる。
 人民が飢えることのない国。全てが富める豊かな町。そのあたりを掲げてみるか。如何にも平民出身の男が掲げるのに相応しい国の姿ではないか。
 例えばあのグングニルという男、何が理由なら動くのか。誇り高くあったとして、謀と無縁でいられるわけではない。むしろ、行動原理がはっきりしている分、御し易い。
 サンドリエイルに与するつもりがあるのなら、その野心を刺激してやればいい。それが許せぬというのなら、その義憤を刺激してやれば良い。オーキないの不穏分子を処分するために、制御された戦を起こして気に入らぬものを負ける戦場に送り込めばいいのではないか。
 都合のいい陣営が確実に勝つことができるように、同盟を結んで戦局を制御することも、可能だ。
(誘いに乗ってくれればいいが)
 ダンスでも、誘ってみるか。
 凪いだ海面にようやく風が吹き込む。いい会食だった。