望月 鏡翠
2026-01-15 12:53:04
946文字
Public 日課
 

#1959 泥の味を知るものたち9

#毎日最低800文字のSSを書く/我らが王の身罷りて 二次創作


 戦の気風が高まっているが、まだ内戦は起こっていなかった。
 冬の寒い日に歩くような気分が続いた。骨に響く痛みを感じながらも、歩くことはできる。そうして歩くうちに徐々に冷気がしみてくる。この忍耐が必要な時間は、南に生まれたものにはどうにも居心地が悪かった。
 それでも情報収集と身の回りを整える時間ができたのは、幸いだった。
 エリセオは少しは使えるようになったし、他の家の背景も少しは見えるようになった。ディルストーンは幼い王の後見人の立場を固くして、そのまま玉座を取りたいようだ。
 オーキはそれを支持する態度を見せながらも、サンドリエイルと繋がっている。首をすげ替えようという流れが生じているのだ。
 しかし状況は硬直していて、もしこのまま状況が進展しなけば、リュネストが動くことになるだろう。
 時間は十分にあった。国内の軍備も概ね整っている。
 そのタイミングで、会食の機会が設けられた。
 呼ばれたのはバンデイアに連なる五名家の公子、公女。主催はディルストーンのガニメデだった。やはり顔を合わせたことがある彼女が、今回表に出てくるのかと、その選択を以外には思わなかった。
 ただ、王が倒れるまでその存在をひた隠しにしていた王家の人材の厚さは、やはり油断がならなかった。
 トルガはそこで全ての家のものが集っているのを見た。
 つまり、まだ表立って反抗するものはいないということだ。今一度、首輪をかけ直すという意味合いもあったのだろう。当然トルガも出向いたわけだが、ここで全ての家のものと縁故を繋ぐことができるというのは、幸いだった。
 王族以外の家を訪う用件を作ることが難しく困っていたのだ。知らぬ者を訪ねる道理はない。それは無礼にすら当たる。商人だった頃ならば商談があると言って気軽に訪問もできたのだが、立場を得ると動きにくくなってしまう。
 顔を合わせたことが一度でもあるのなら、なんとでも口実を付けようがあるというものだ。
 アンタイアーの人間が、戦以外の用件で領土を出ているところを初めて見た。第一印象は野生児である。
 士族の中でもっとも話が通じるものがきているはずなのだが、彼が政治の話を好むようには見えず、ただ提供された豪華な食事を楽しんでいるように見えた。