リッパーは夜が好きだ。防犯と資金を天秤に掛けて、資金に傾いてしまったようなガス灯は、小道に入れば灯りは差さない。刺すのは薄闇ばかり。
リッパーはそこを好んだ。月夜を好む男とは少し違う夜だ。どうせ霧の街に、足下まで照らしてくれる月明かりは差し込まない。分厚い霧に、何処かで遮られて、薄れてしまう。それくらいが丁度良い。
さして明るくもないのに、霧が反射してさほど暗くないようにも思える。歩いて進める範囲の視界に、一人歩きの者が慢心している夜。そういう意味では、自分を見ている男の瞳は、決して明るくないが、真なる暗闇よりかは見える色だ。ミストグリーン。本人が好む月の明るさの前では霞むのに、皮肉なものだとは思わないか。
思わず笑ってしまう。
「人の顔見てにやにやするのは辞めてくれないか。」
「ならおまえこそわたしを見詰めるのを辞めればよろしいのです。」
じとっとした目がきつくなるだけで、やっぱり視線は注がれたまま。翳りの中でこそ真価を発揮するのなら、ずっと霧の中で包んでいれば良い。
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