風花莉亜
2026-01-15 07:33:23
7753文字
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その問の答えを、俺はまだ知らない。

第13回とどち版ワンドロワンライ参加作品。千早くん視点→藤堂くん視点と進みます。2年生のある日の事。イヤホンを巡ってのお話で、圭ちゃんが出張ってます。そして安定のご都合主義!
いつも以上に文章が無理矢理なのと、こんな事、千早くん言うかなぁ?とか思いつつ書いたので、いつも通り何でも大丈夫な方向け

(千早くん視点)

「瞬ちゃん、何聴いてるの〜?」

朝、まだHRの始まる前の時間。
他人をシャットアウトする為に、自分の席で有線イヤホンを耳に付けてオウテカを聴いていた。
頬杖をつきながら考えるのは、自分の想い人の事。
二年になってもクラスは同じで席も隣、これは運命意外に何がある?なんて考え込んでいたので、その気配に気付けなかった。
突然、頭上から降ってきた声に顔を上げれば、いつの間にか要くんが人懐っこい笑みを浮かべて俺の事を覗き込んでいてびっくりする。
予期せぬ事にビクリと肩は揺れたが、大声が出なかっただけ褒めてほしい。
バクバクと鳴る心臓に、口から心臓飛び出るかと思ったとはこの事か。
グッと胸元を押さえ、片耳だけイヤホンを外して何でもない風に口元に弧を描く。
カチャリ、と眼鏡を押し上げる事も忘れずに。

「おはようございます」
「え、あ、おはよー?」

朝会ったらまずは挨拶だろ。
普段通りの声音で言えただろうか?動揺を悟られたくなくない、だって悟られてしまえば、何をそんなに考え込んでいたのかと聞かれるのがオチ。
馬鹿正直に藤堂くんの事を考えていました、なんて口が裂けても言うものか。
とは言え、要くんはこれでいてなかなか聡い人なので、もしかしたらバレているのかもしれないが。

「聴いてたのはオウテカですよ」
「オウテカ……

変に詮索される前に、先手を打って要くんの質問に答える。
俺がオウテカを好きなのを知っている要くんは『またか』という顔をするが、好きなんだから別にいいだろ。
誰だって好きな曲、好きなアーティストの曲は何回だって聴くだろうし、それと同じなんですけど?
要くんは普段J-POPしか聴かないだろうから、俺が何を聴いていたとしてもさして興味もないだろうと思っていたのに。
何故かその日は違った。

「俺にも聴かせて?」
……え?」

手のひらを見せるように、こちらへと向けられる右手。
一瞬何を要求されているのか理解できなかった。
え?なんです?お手? 思わず右手をその上に乗せそうになって、違う違うと頭を振る。
要くんは「俺にも聴かせて」と言った。
それはつまり、イヤホンの片方を貸してくれという事だろうか。
仲の良い友人や恋人がやる、イヤホンを半分こ。
有線イヤホンで見かける事はそうないけれど、無線イヤホンではそれなりにある。
パッと見だとわからないが、注視してみると校内や駅や電車の中、いろんな場所で目にした事のある風景。
俺と要くんだって仲の良い友人と言って差し支えないが、それでも俺は要くんに片方を差し出す事はしたくなかった。
別に要くんが嫌とかじゃなく、山田くんや清峰くんだって同じ。
ただ、一人を除いては。

「すみませんが、イヤホンは貸せません」
「少し、少しでいいから〜」
「ダメです」
「えぇ〜、瞬ちゃんのいけず〜」
「何と言われようと、要くんに貸す事はできません。コレは……好きな人にしか貸さない事にしてるんです」

口元に人差し指を持っていき、内緒ですよ?なんて茶目っ気たっぷりに言えば、要くんは「ええええ!?」なんて大きな声を出すので軽く腹に拳を入れておいた。
うるさい、恥ずかしい、目立ち過ぎる!!
要くんのデカイ声に教室にいた全員がこちらに注目しているのがわかる。
自ら言っておいてミスったなとど考えるが後の祭りで、ジワジワと熱くなる頬に手の甲を当てるも、熱いと感じるだけで何も起こらなかった。
せめて俺の手が冷たかったなら冷やす事も可能だっただろうに、悲しいかな俺の手は頬と同じく熱い。

「瞬ちゃん、好きな人って……

そこまでいった所で、要くんは首根っこをヒョイっと掴まれて俺から引き剥がされた。
近くにあった顔が遠ざかる。
こんな風に要くんを扱うのは藤堂くんか清峰くんぐらいなもので、今回は前者だったようだ。

「何をコソコソしてんだァ?」
「あ、葵ちゃんっ」
「藤堂くん、おはようございます」
「はよ」

チンピラに絡まれたかのように縮こまる要くんが気の毒で、助け舟を出してやる。
注意を俺に向ける為に藤堂くんへと挨拶をすると普通に返されたが、藤堂くんの手は要くんから外される事はなかった。
と言うか首根っこを掴むのを止めた代わりに、ヘッドロックキメにかかっている。
ギブギブ!!と藤堂くんの手をペシペシと叩くが外されない手に、要くんはどんどん涙目になっていった。
流石にちょっと、白いタオルでも投げてあげないと可哀想か?
要くんも必死にこちらへ視線を寄越して、SOS!SOS!と口パクで伝えてくるのを見て実は余裕かもしれないなんて思ったりもしたが、あまり放置しては流石に可哀想だと助ける事にした。

「藤堂くん、要くん苦しそうですけど?」
「あー?」
「瞬ちゃんナーイス!俺もう苦しくってツラい」
……まだいけんだろ」
「えぇぇぇ!?」

要くんの元気っぷりを見てまだいけると判断した藤堂くんは、そのまま続行する事にしたらしい。
これはもう俺にもどうこう出来ない、すみません要くん、頑張ってください。
心の中で手を合わせていると、イマジナリー要くんが『そんなんいらないから早く助けてよ!』と叫んでいた。
やかましい。
パッパッと手を振れば、簡単に掻き消えてしまった。

そんな事よりも、何と言い訳すれば良いのだろうか? 先程きていた要くんとの話を馬鹿正直にする気は毛頭ない。
好きな人にしかイヤホンを貸さないとか、好きな人は誰だって話になるのは火を見るより明らか。
そんな公開処刑、ただ死ぬよりも嫌だ。
全くもってなんであんな事を口走ってしまったのか俺にもわからないが、ただひとつ言えるのは、俺の好きな人が誰かを要くんは気付いている。
他人を観察する事に長けているから、俺が藤堂くんを目で追ってしまっている事もバレている筈で。
だから多分、今の話をこの場で藤堂くん相手に言ったりはしないと思う。
となると今起きている、このちょっとした危機を乗り越えるには、俺が口火を切らなければならないのは確かであって、けれど何と言ったらいいものか。
普段は良く回る頭も、今日は全く働かなかった。

「で?二人で何の悪巧みだよ?」
「悪巧みだなんて、人聞きの悪い」

もう一度藤堂くんに何を話していたのか聞かれ、とりあえず何か言わなければと口を開きかけた所で、要くんが藤堂くんの手をもう一度ペシペシと叩いた。

「葵ちゃん、ギブ!早くこの腕外してクレメンス!」
「しょーがねーな」

そこで漸く外された腕に、もー、苦しかったんだからね!なんてそこまで苦しくはなかっただろうけど形だけ怒っていて、そして藤堂くんも悪いとは思っていない軽さで、わりー、なんて言っていた。
その間も二人を眺める事しか出来なくて、そんな俺を見た要くんは仕方ないなぁという顔をしてから腰に手を当て、得意げに話しだしす。
人差し指を藤堂くんにピシッと向けるオマケ付きで。

「瞬ちゃんっていつも音楽聴いてるじゃんね?だからちょっと聴かせて〜って言ったら断られた。イヤホン他人と共有したくないんだって〜」
「まぁ、千早だから。仕方ねーな」
「くっ……仕方ないで片付けるなんて……葵ちゃんも断られれば良いのに……
「あ?」
「ひぇっ……あ、葉流ちゃん良い所に!」
「テメェ、清峰盾にすんじゃねー」

これは助けてくれたのか、いないのか。
要くんの余分な一言で藤堂くんの元ヤンっぷりが出現し、メンチを切られた要くんはタイミング良く現れた清峰くんの後ろへと隠れた。
とても良い盾を手にしましたね、要くん。
後ろへと回り込んでしまえば、無敵ですもんね?
それは兎も角として、ちょっとばかり余分な事を口にしてくれたなとも思う。
確かにあまり他人とイヤホンを共有するのは得意ではないけれど、実の所たった一度だけ、藤堂くんには貸した事がある。
ほんの数分の事だったし、藤堂くんは覚えていないかもしれないが。
いや、お願いだから忘れててくれ、忘却の彼方へと押しやっててくれ。
でないと、面倒な事になる。
要くんは断って自分は断られていない、それってつまり……? そう、そのつまりを藤堂くん本人に問い質されてしまうと非常にマズイのだ。
気分で?なんて理由はきっと通じない。
俺の気持ちが全部、暴かれてしまう未来が見えた。

「ちは「ほ、ほら、もうそろそろ先生来ちゃいますよ〜?要くんも清峰くんも、山田くんを見習って席に戻りましょうね?勿論、藤堂くんも」……お、おう」

藤堂くんの言葉を遮ってそう言い、大人しく席に戻るバッテリーを見送ってからはよお前も席に戻れと藤堂くんに目で訴える。
遮る時に何かを言おうとしていたのは明らかだったが、聞いてやる気はない。
何か言いたそうな顔でこちらを見ていたとしても、だ。
あーもう、これって追求されずに今日一日過ごせますかね? 無理ですかね? そうですよね!
遠慮もなくチラチラと視線を寄越してくるのに気付いたが、知らないフリをする。
目を合わせたら駄目だ、目を合わせたら終わると自分に言い聞かせ、授業中にも構わず飛んでくる視線を我慢し続ける羽目になってしまったのは言うまでもない。

────── 俺は、どうして要くん相手にあんな事を言ってしまったのだろうか?
ぬるま湯に浸かったような藤堂くんとの恋愛に、決着を付けたかったのだろうか?

その問の答えを、俺はまだ知らない。


*****
(藤堂くん視点)

考えを纏めたくて、一人屋上へとやって来た。
手にはここに来る途中、自販機で買ったストレートティー。
千早が良く飲んでいるものだったから、ついついボタンを押してしまっていた。
キャップを捻って中身を呷ると、紅茶の味が口の中に広がって、普段千早はこれを飲んでいるのかと思った。
甘すぎず、想像してたよりも後味がスッキリしていて飲みやすい。
紅茶も悪くねーな。
キャップを閉めてボトルを持ち上げると、太陽の光を受けて透明感のある赤茶色がキラキラと光った。
それが何処か千早の髪の色を彷彿させて、笑みを零す。
寝ても醒めても千早の事ばっかりだ。

人っ子一人いやしない屋上は空が近くて、風が穏やかに吹いていて心地好い開放感があった。
え?何で人っ子一人いやしないかって? そりゃ今が授業中だからだ。
簡単に言うとサボってしまった訳だが、どうせ教室にいたって集中できやしないのだから、いてもいなくても同じだろう。
後で千早には怒られそうだが、保健室にいたとでも言っておこう。
それはそうと、どうにも千早が変だ。
今朝、二人で何やらコソコソと話をしていたので要の首根っこを掴んで聞いてみたが、どうにも嘘か本当かわからないような事を言われた。
千早は他人とイヤホンを共有するのは抵抗があるから、要が貸してくれと言ったら断られた、と。
……では無い気がする、けれどそれが全てではないような気もする。
普段回りすぎるぐらいに良く回る千早の口からは一言も発されず、助け舟を出すような形で要の方がイヤホンの話をしてきた。
それにも少し違和感を覚えた。
きっと、何かを隠している。

千早は、有線イヤホンを愛用している。
何で有線なのか俺にはわからないけれど、千早の事だから色々な理由があるに決まっている。
そんなイヤホンを誰にも貸さないと言うのは、千早らしいと思った。
けれど、たった一度だけ、俺はイヤホンを片方借りた事がある。
ひとつのイヤホンを分け合って、一緒に聴いたのは千早が嫌いな筈のJ-POP。
耳が腐るだのなんだのと言って拒絶反応示してた癖に、どういう訳だかその時は俺の隣で普通に聴いていた。
あれは確か、ドラマの主題歌だったと思う。
テレビをぶっ壊してしまっていたから何のドラマかは知らないけれど、その曲は要のお気に入りで度々耳にする機会があった。
しかし聴いている内に段々と良い曲だと思うようになっていき、要のお気に入りだったその曲はいつの間にか俺のお気に入りになった。
ドラマが恋愛ものだった為に曲もそのような歌詞で、今の自分と重なる所を見付けてしまったのが原因か。
その曲はハッピーエンドだったから、俺のこの恋もハッピーエンドだったなら最高なのに、なんて隣を見れば黒目がちの瞳とかち合う。
ドクン、と心臓が跳ねて、顔に熱が集中する。
こんな事で顔を真っ赤に染め上げるなんて童貞かよって心の中で叫んだが、童貞なので仕方がなかった。
それよりも、こんな顔を見られてしまって、千早に俺の気持ちがバレてしまったのではないかと気が気ではない。
幸い、窓から差し込む夕日で元々顔は赤く染まっていたらしく、俺の顔が赤い事については千早から何も言われなかった。
ただ、勝手に熱を帯びる瞳は誤魔化せなかったかもしれないが。

曲の再生が終わり、イヤホンを耳から外す。
本日は部活が休みだったがあまり長居する訳にはいかなくて、名残惜しいけれど分け合ったその片割れを千早の手のひらにそっと置く。
「イヤホンありがとう」と言うと「どういたしまして」と笑う顔を綺麗だと思った。
愛おしさが込み上げてしまって、まだ一緒にいたいと願ってしまうくらいには。
そんな事を考えていた為にうっかり千早へと手を伸ばしかけてしまって、慌てて引っ込める。
それは駄目だと己の手をぎゅっと握り、深呼吸をひとつしてから帰り支度を始めた。
お互い何を言うでもなく黙々と支度をして、けれど千早が不意に口を開いた。
その時の言葉は、今でも耳に残っている。

『好きって、なんですかね?』

うっかり零してしまったというようなそれに、どういう意味だと聞こうとする。
しかしさっさと俺を置いて教室を出る背中に、この話は無かったことにしてくれと言われた気がして口を閉ざした。

好きとは何か。
その問の答えを、俺はまだ知らない。
哲学的な話だとしたら俺にはわからないし、感情論だとしても上手く答えられる気がしない。
どちらにせよ、あの日の俺は千早の問に答える事は出来なかった。

───なんて事もあったな。
あれから何ヶ月か過ぎ去ったというのに、俺は未だ千早に片想い中。
何であの時イヤホンを貸してくれたのか気になってる癖に、ずっと言い出せずにいた。
もしかしたら、俺は千早にとって特別なのかも? なんて浮かれた思考が頭の中を独占するが、そんな訳がないと冷静な俺に嗜められる。
どっちなのだろうか? 脈アリなのか、ナシなのか。
嫌われちゃいないだろうが、明確な恋愛感情の『好き』を向けられているかと言われると、自信はない。
嘘をつくのが上手で、自分の感情を抑え込む事の出来る奴だから判断が難しい。
もし間違えて千早に距離を置かれるなんざ、御免だ。
そんな事になるのなら、このまま友達のままでも良い……なんてのは嘘だが、強引に事を進めるのは怖い。
俺ってこんな臆病だっけ? 知らなかった一面に、知りたくもなかったと苦笑する。

「好きって、なんなんだろうなぁ?」
「え、哲学的な話?」
「うおっ!」

一人だと思っていた屋上に、突然した聞き慣れた声。
バッと隣を見れば、ヘラりと笑う要がいた。
いつの間にこんなに近くに? 声がするまで気付けなかったとは、それだけ深く思考していたという事か。
……じゃなくて、今って授業中じゃなかったか? コイツ、まさかサボりか!?
自分の事を棚に上げて何を言ってんだって話だが、如何せん同じクラスの野球部二人がサボりは宜しくないだろ。
何でここにいるという意味を込めて睨めば、やっぱりヘラりと笑い返された。

「サボりじゃないよ?」
「あ?」
「今、放課後」
「んな訳…………あった……

ポケットからスマホを取り出して画面に触れ、表示された時刻に驚愕する。
マジかよ、授業終わってんじゃん!もう放課後じゃん!

「あはは〜、葵ちゃんは時間を忘れちゃうくらい何を悩んでいたのかなぁ?」
「別に」
「さっきの『好きってなんだろ?』ってやつ?」
「わかってんなら聞くなや」

意地が悪い。
これがヤマだったならばこんな風に聞いてきたりしないのに。
あははと笑いながら要はフェンスに背中を預けるので、何となく俺もその横に並んでみる。
見上げた空は、青かった。

「そろそろさぁ、圭ちゃんも焦れったいなぁって思うんだよね」
「なにが?」
「葵ちゃん達の事」
「たち?」
「わかってる癖にはぐらかすんだから」
「別に、はぐらかしてるつもりは」
「ないって言い切れる?」

垂れ気味の琥珀色の瞳がスっと細められ、どことなく智将を思い起こして背筋が伸びる。
まぁ、要の言いたい事は理解しているつもりだ。
十中八九、千早との事で、いつまでモダモダしているつもりだと言いたいのだろう。
とは言え、想いを告げるのって結構が勇気いるんだぜ? 友達としての千早を失うかもしれない賭けに出るには、俺の心はまだ決まっていない。
こんなん、ダセェよな? 藤堂葵様ともあろう人間が、こんな事でウジウジと尻込みしてるなんて。
でも、男なら当たって砕けろとか言われても、砕けたくはねーンだわ。

体の向きを変えてグラウンドを見れば、野球部の面々が集まりだしているのが目に入る。
そろそろ俺も要もその場に行かなければいけないのに、俺の足はその場に縫い付けられたかのように動かなくなってしまった。
ギュッとフェンスを握ると、ガシャリと金属が悲鳴をあげるのが耳障りだった。
隣の要もグラウンドの方を向き、「あちゃー、部活始まっちゃう」と零す。
けれど慌てた様子は一切なかった。

「そろそろ部活行かなきゃだね」
「あぁ」
……仕方ないから良い事教えてあげよっか?」
「良い事?」
「そ、良い事」
「ンだよ、勿体ぶらないでさっさと言え」
「せっかちな男は嫌われるよ?って、怖い怖い、そんな怖い顔で睨まないでクレメンス!もー、しょうがないなぁ? 朝話してたやつ、瞬ちゃんってね、イヤホンは好きな人にしか貸さないんだってさ」
……はっ、」

なんだそれ。
反応出来ずにいる俺を余所に、フェンスから離れた要は両手を広げてくるりと回り、俺の目の前で止まるとニヤッと含みのある顔で笑った。
コイツ、全部知ってやがる。
俺の気持ちも、千早の気持ちも。
要の手のひらの上で転がされるのは癪だが、それが事実ならば乗らない手は無い。
俺は千早の事が欲しくて堪らないのだから。

俺の顔を見て笑みを深くした要に、早く部活行こうと言われ、縫い付けられたと思っていた足が動き出す。
「今日も良い天気だね!」なんて言って空に手を伸ばす要に「ガキかよ」なんて悪態をついて、屋上を後にする。


ったく、イヤホンなんて回りくどい事してないで、はっきり言葉にしろっての!
絶対に好きだって言わせてやるから待ってろ千早!!

その問の答えを、やっと見付けた気がした。

END

可愛いお話が書きたかったはずなのになぁ