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風花莉亜
2026-01-15 07:25:13
4043文字
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そんな、もしもがあったとしたら。
第7回とどち版ワンドロワンライ参加作品。藤堂くん視点。シニア時代捏造しながら不思議設定なので読む人を選びます。いつも以上に何でも大丈夫な方向け。誤字脱字もいつもの如くあります
もしも、シニア時代に千早と出会っていたら、どうなっていただろう?
いやまぁ、対戦した事はあるし名前も知ってたし、全くの関わりがなかった訳ではない。
しかし、今のように会話をするような間柄ではなく、ただ存在を知っているだけの他校生で、だからもしもシニア時代に出会うような事があったとしたら、どんな感じだったのだろうか。
そんな事を考えていたせいだろうか、気付いたら目の前には眼鏡をかけていない千早が心配そうに俺の事を覗き込んでいた。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ?」
千早越しに青い空を見付けて、自分がひっくり返って居ることに気付く。
確か俺、教室で椅子に座ってなかったっけ?
あれは確か放課後の事だったはず。
千早を教室で待ちながら机に頬杖をついて、うたた寝をしてしまっていたような。
それなのにどうしたことか、いつの間に外に出ていて、しかも道路に寝転がっているとかどんなオカルト?
何も言わず動きもしない俺に、千早はおずおずともう一度大丈夫かと声を掛けてくる。
その声音に何か、違和感。
確かに千早なのに、眼鏡をかけていない事を抜きにしても、何かが違うと俺の勘が告げている。
とは言え考えてもわからないと一旦諦め、地面に手をついて上体を起こすと、千早は少しだけビクリと肩を揺らした。
何でビクビクしてんだ?
よくわからないが、とりあえず。
「おう、大丈夫。つーか、ここどこ?俺、教室で千早の事待ってた筈なんだけど?」
頭をガシガシ掻きながら尋ねると、千早は元々大きな目を更に大きく開いて固まった。
ここまで来た記憶のない俺に驚いたのだろうか?
そりゃそうか、記憶喪失だなんて笑えない、どっかの誰かさんでお腹いっぱいだ。
しかし次の瞬間、全く別の事に驚いているのだと知る。
「何で、俺の名前
……
」
無意識だろうか、ポツリと俺に聞こえるか聞こえないか程度の音量で千早は呟いた。
俺に言ったと言うよりも、思っている事が口から出てしまった、そんな感じだ。
それよりも、どういう事だろう。
まるで俺が千早の名前を知っていたらおかしいみたいな反応
……
。
ん?
んー?
脳みそをフル回転させて、違和感の正体を探る。
そうして、漸く合点がいった。
眼鏡をしていない事以外に、髪の毛が刈り上げられていない上に毛先を遊ばせていない、さらさらストレートだと言う事に気付く。
それから、何故か学ラン。
え?コスプレ?
千早に限ってそれはねェよな。
つまり、これは。
「えっと
……
大丈夫そうですね?俺、そろそろ帰らないとなので」
そう言ってそそくさと逃げ出そうとする千早に、待て待て待て!と静止の声を掛けつつ、利き手でない方の腕を掴んだ。
その瞬間『パンッ!』と盛大に手をはたかれ、今度は俺が目を大きくする番だった。
俺の知っている千早瞬平はパーソナルスペースこそ広いが、こんな風に俺の手を払い退けた事は一度たりともない。
これは、いよいよだと思った。
そんな訳がない、有り得ない、けれどそう考えると全ての辻褄が合う。
有り得ない事だが、信じられない事だが、どうやら目の前にいる千早は、俺と出会う前の、シニア時代の千早らしい。
確かにどんな感じだろうかとか考えたけどよ、本当にシニア時代の千早連れてくるとかどーゆーつもりだよ神様。
「あ
……
すみません、びっくりして
……
手、痛かったですか?」
「大丈夫だ。俺こそ、急にすまん」
「いえ
…………
あの、その怪我って
……
」
「怪我?」
素直に謝る千早に、大丈夫だと笑いかける。
多少ってか、かなり?手を振り払われた事は堪えたが、俺の事を知らない千早相手なのだから仕方がない。
自分に言い聞かせつつ、千早の言う『怪我』とやらに首を傾げ、そこで初めて己の身体へと目を向けた。
あ?
学ラン
……
?
目に映ったのは、上下黒色の布。
千早も着ているソレと一緒だった。
何で俺は学ランなんて着ているのか、そして千早が言うには怪我もしているらしい。
つまり、俺自身もシニア時代の俺になっているって事なのか?
キョロキョロと辺りを見回して、見付けたカーブミラーの中の自分にドキリとした。
やっぱりそうだ。
顔に傷作ってた頃の俺の姿だった。
*****
奇妙な出会いをしてから数日、俺は未だにシニア時代の姿のままだった。
帰る方法も、ましてこれが現実なのか夢なのかもわからない。
八方塞がりだった。
それでも時間は流れていくもので、あれから何度か千早と再会した。
ある時はコンビニで、ある時は駅で。
その度に俺から積極的に会話をして、今では向こうから声を掛けてくれるまでになっていた。
懐かない猫に懐かれた気分。
今の千早よりも表情に影を落とす事が多いシニア時代の千早は、笑う事がない。
高校生の千早はあんなに馬鹿笑いするのにな。
笑った顔を見てみたい、何とかして見れないものだろうか、そんな風に思っていたある日の事。
「あ」
「また会いましたね」
今日は道端かー。
曲がり角で偶然鉢合わせた俺達は、そのままだべりながら座れる場所を求めて公園へと向かった。
一番近くて、金がかからない。
最高じゃねーか。
空の色が段々と黒に塗り替えられていくのを長めながら、人っ子一人いない公園のベンチに腰掛ける。
ポツリポツリとする会話は、やっぱりどこか寂しくて、笑ってくんねーかな?なんて。
そう考えると高校生の千早は本当に良く笑うんだなァ。
くだらない事で笑い合うのは勿論、ふとした時にクスリと笑う事もあって、笑うとすげー可愛いのに。
そんな事を考えつつ、ふと足元を見ると野球ボールを模したゴムボールが転がっていた。
子供が持ち帰り忘れたものだろう、拾って握ってみると柔らかくて、野球のボールとは全く違う。
手に馴染んでいるあの白球は、こんなに軽くなんてない。
「千早、キャッチボールしねェ?」
「え
……
」
千早の目が大きく見開かれる。
野球は辞めたと、このシニア時代の千早から直接聞かされていたけれど、そんなもん知るか。
未来のお前は俺達と楽しく野球やってんだよ。
「ゴムボールだしさ、何も考えないでただ投げればいいだけだって」
「藤堂くんって
……
」
「ん?」
「いえ、なんでもないです。キャッチボール、しましょうか」
「おうっ!」
お互い何も言わずに背中を向けて歩き出す。
あまり遠く離れ過ぎると暗くてよく見えなくなるから程々に。
グローブもないけれど、ゴムボールだから痛くない、はず。
痛かったらどうすっかな、やめる?それはあまりにも、あんまりすぎる結末じゃね?
兎にも角にも、やってみない事には何も始まらない。
最初は様子見を兼ねて千早にいくぞー、なんて声掛けをしてから放物線を描くようにゴムボールを投げると、吸い込まれていくかのように千早の手にソレは収まった。
「なー、手、痛くなかったかー?」
「大丈夫ですよー」
そうか、痛くなかったか。
それなら良かったと、今度は受ける側として大きく手を振って合図すると、千早はゴムボールを見詰めて、それからニヤリと笑った。
え、なに?
何か、嫌な予感。
次の瞬間大きく振り被る千早に、俺は慌てた。
待て待て待て!
いくらゴムボールと言えどそんな振り被って投げられたら痛いだろうし、そもそもこの暗がりじゃそんなん受け止められるかっての!
どっかへ飛んでいくのが目に見える。
やめろ、早まるな千早!
ワタワタと手を振りながら静止を要求する俺に、千早はピタリと動きを止めて、それから前のめりになりながら肩を震わせ始めた。
あ、何かこの格好すげー見覚えある。
「
……
っ、ふ、ふふっ、あはははは」
あー、うん、やっぱり千早は千早だわ。
突然笑いだす千早の姿に、呆れと少しの感動と脱力感が同時にやってくる。
笑ってくれた事は嬉しい。
笑た顔が見たいと思っていたのだから、そこは嬉しい。
が、焦る俺を見て笑い出すってなんだよ。
めちゃくちゃ千早瞬平そのものじゃねーか。
「なぁ、千早」
「
……
っ、なん、ですかっ」
「お前さ、笑ってる方が良いぜ」
「ハァ?」
「その内、クソくだらない事で笑うようになるからよ、今の感覚忘れんな?」
「どーゆー意味です?」
「その内わかるんじゃね?」
「なんですかそれ。意味わかんないです」
「ははっ」
グッと腕を伸ばしてから千早に笑いかけると、何とも言えない顔をされる。
眉間に皺を寄せて、可愛い顔が台無しだぞ?なんて。
言ったらぶっ飛ばされそうだから口にはしないが、心の中ではきっと何度だって言う。
笑っててくれよ、千早。
「藤堂くん」
「どした?」
「俺は
……
」
千早が何かを言いかけたと思ったら、突然『ドタン!』というデカイ音と共に背中に衝撃が走った。
一瞬息が止まって、はっと目を開けると、そこには眼鏡をかけた千早が心配そうに俺を覗き込んでいて。
あれ、これってデジャブ。
シニア時代の千早と出会った時のような構図だと、そう思った。
「藤堂くん、いくら藤堂くんと言えど道端で寝転んでたら危ないかと」
「好きで寝転んでた訳じゃねー」
「えっ、そうなんですか?」
「いやそうだろ!?誰が好き好んで地面と仲良くする奴がいる!?」
「そこはほら、藤堂くんなので」
「何が藤堂くんなので、だよ」
「あはは。ほんと、藤堂くんと一緒にいるのは飽きませんねぇ」
「そりゃよかったなー」
「はい
…………
藤堂くんが、『感覚忘れんなよ』って言ってくれたお陰ですね」
「あ?」
「ふふっ」
あれは夢だったのか現実だったのか。
でもひとつハッキリしたのは、あの邂逅は俺一人だけのものではなかったって事。
一人ニコニコ笑う千早に、今日だけは千早の嫌味も甘んじて受け止めてやろうと、何故だかそう思った。
END
夢でも現実でもどっちでもOKって事で。読んだ方にお任せ!
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