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まきわ
2026-01-14 20:42:24
3701文字
Public
クロリン
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浮かれつくして
界クロリンです
バーゼルでるんるんなクロリンです
出てこないトワ先とフィーちゃんは、知り合い技術者に話を聞きに行ってるトワ先輩にフィーちゃんが護衛かねて付き添ってる設定だったんですが説明を挟むところがなかったのでした…
「意外です」
バーゼル街中にある公園で、買い出しにいったクロウを待っている時突然アルティナにそう言われてリィンはきょとんと首を傾げた。
その前に心当たりのある会話の流れがなかったので問い返すようにアルティナを見ると、彼女は横目でリィンを見上げた。
「こういう任務ですし、帝国代表のようなものですから。ヨルムンガンド戦役での帝国の立ち位置を考えても、ただでさえ厳しい視線の中で立ち居振る舞いに気を付けないといけなくなるでしょうし、責任も大きいです。
…
だからもっとプレッシャーを感じてナーバスになられるかと思っていました」
「
…
うん、確かにそうだな」
到着以降思ったよりも好意的に迎えられたというものの、今回の任務が責任の重いものであることは間違いがない。
帝国代表として指名を受けたこと、そして黄昏の中で自分が担わざるをえなかった役割を考えるとプレッシャーを感じるべき状況ではある。
「ですが意外とリラックスされているようなので。やっぱり色んな事がありましたから
…
こういうと不遜ですが、成長なされたのだなと思いました」
自分が保護者として、そして教え子として面倒を見てきたアルティナにそんな風に言われてリィンは照れくさそうに頬を掻いた。
「はは
…
もしそうならうれし」
「でも違ったみたいです」
「え」
言葉尻にかぶせるように否定し、アルティナはリィン譲りのジト目で見上げてきた。
「オレドに着いて
…
正確にはマルドゥックの模擬訓練施設最奥に着いた時点でわかりました。リィンさんがリラックスどころか浮かれて
…
いえ、はしゃいでいる理由が」
「そ、それっ
…
て
…
」
アルティナの視線がついっと横に動く。
それを追うと向こうから駆けてくるクロウの姿が目に入った。
「おーい」
クロウは両手に蓋つきカップに入ったドリンクを器用に三つ持っている。
手が大きい彼だからこそできることだろう。
「わりぃ、待たせたな。ほれアルティナ、ホイップマシマシストリベリーラテだぜ」
「
……
これです」
アルティナは人を指さしちゃいけませんという教えを守って視線で『原因』を示した。
「ええっと
…
」
苦笑交じりの口元を引きつらせたリィンに対し、当のクロウは話の流れが読めずに不思議そうに首を傾げた。
「ん?どした?好きじゃなかったか?」
「いえ、美味しそうなのでいただきます」
アルティナはストロベリーラテを受け取って早速口をつけた。
「
…
ん、甘くて美味しいです。ありがとうございます」
きちんと礼を述べた後、アルティナは改めてジト目をリィンに向けた。
「久しぶりの旅行ですし羽目を外すのも構わないと思いますが、浮かれすぎて本来の任務は忘れないようにしてください。では」
拗ねたような口調で言うとアルティナはそのままスタスタと歩いて行ってしまった。
財団の入っているビルのある方向だったから、挨拶にでも行ったのかもしれない。
リィンは呼び止めようか迷ったままに半端に手を伸ばした状態で固まっていたが、ため息をつくとクロウに向き直った。
「なんで機嫌悪そうなんだ?待たせすぎたか?」
「いや
……
。えっとクロウ、その」
俺って浮かれてるか?と聞こうとして、でもその原因と言われた相手にそれを聞くのも変な気がしてリィンは言葉に詰まった。
クロウは小さく首を傾げてから、思い出したように手に持っていたドリンクを差し出した。
「トロピカルティーソーダだってよ。うまそうだったから同じもん買ってきたけどよかったか?」
「
…
うん。美味しそうだな、ありがとう」
リィンも礼を告げつつ受け取って、ストローに口をつけながら横目でクロウを見た。
確かに分校長経由で任務の話を聞いた時、その条件の一つを告げられてプレッシャーよりも先に嬉しさが湧きあがってしまったのは事実だ。
『叶うならば、
―
「灰色の騎士」「蒼の騎士」と呼ばれた両名を指名する』
クロウと同行できる、一緒に共和国を訪ねられる、そう思って喜んでしまった瞬間恐らくちょっと顔に出ていたと思う。
クロウと旅行をできるのは正直学院時代の特別実習以来だったからだ。
黄昏の時も色んなところに行きはしたが当然あの時はそんな心持ちには到底なれなかったし。
(い、いやいや特別実習も今回も旅行ではないから!)
慌てて軽く首を振って雑念を振り払う。
クロウはその様子には気付かずに買ってきたドリンクを楽しんでいる。
「ん、うめーな。
…
ん、どした?」
「い、いや、その」
「どっか行きたいとこあるか?学術都市っつってたからあんま遊べねーかと思ったけど結構見どころ多そうだよな」
そう言って笑うクロウも、普段に比べるとなんだか浮かれているように見える。
普段からあちこち飛び回っているようだし知らない街に来た事が原因とは思えないから、クロウの方も自分といられることを喜んでくれていると自惚れていいのだろうか。
「
…
そうだな。もう一回トラムに乗らないか?もう一度じっくり景色を楽しみたい。それと職人街から景色を眺めてみたいかな」
「おっけー。んじゃ行こうぜ」
そう言ってトラム乗り場へリィンの手を引いたクロウは、やっぱり結構浮かれて見えた。
渓谷をくり抜くようにして作られたバーゼルの町並みは上層に上がるほど全体を見渡せて、見事な絶景を楽しむことができる。
二人は新市街を見渡せる場所からドリンク片手に景色を楽しんでいた。
「あ、ほらクロウ、列車が通るのが見えるぞ。あそこにレールが通ってるんだな
…
」
「ルーレの辺りもそうだがこの辺りまで道だのレールだの敷いてくんのは大変そうだよなー」
そのレールは共和国を横断して更にその先の東方地域へと続いていく。
荒廃が進むという東方、そしてそこと恐らく関わりが深いであろう自身の師へ思いを馳せかけて、リィンは目前の使命へ意識を戻した。
「
…
クロウは緊張してないのか?」
それだけで通じるだろうというリィンの予想通りクロウは何を聞かれているのか察して苦笑を返した。
「お前はともかくなんでオレだよってのもあるが
…
ま、気負うような立場でもねぇしな」
あくまで軽い言い様にリィンは思わず笑みを零した。
確かにクロウが帝国代表という責任にプレッシャーを感じている姿は想像できない。
「それに
…
まぁお前と一緒だしな?何が出てこようがどうとでもなんだろ」
「
…
あっ
…
」
それだ、と何かが腑に落ちる気がした。
行ったことのない場所をクロウと一緒に訪ねることができて、観光のようなこともできて、何より会える事自体が久しぶりで。
そういう状況にアルティナの言う通り浮かれているのは間違いない。
それでも帝国を代表して共和国の兵士達と模擬戦を行うという状況にこれほどまでにプレッシャーを感じずに泰然としていられる理由が今突然すとんと心に落ちた気がした。
「
…
なんだか相克の時も同じ気持ちだった気がする」
空を見上げて渓谷から吹く風を顔に受けながらリィンが言うとクロウが問うような視線を向けてきた。
「やっぱりクロウの力を取り込んで俺の力にしたってなんの意味もなかったよ。クロウが隣にいて、そうやって笑っていてくれるから俺は戦えるんだ」
リィンはクロウに向き直ると力を込めた瞳でクロウを真っすぐ見つめた。
「あの時言った言葉は間違ってなかった。俺が前へ進むためにはお前が必要なんだ、クロウ」
クロウは一瞬目を瞠った後、衝動のように腕を伸ばしてリィンを抱き寄せた。
「あっ
…
」
「
…
オレも。お前がいるから新しい事にこうやって挑戦できんだよ。前に進もうって気になれる」
「クロウ
……
」
胸が熱くなって、抱き締め返そうとしたところでふとここがどこで自分達がどういう立場かふと思い出した。
「
…
?なんだよ」
少し体を引いたリィンをクロウが怪訝そうに見た。
リィンは少し顔を赤くしながら周囲を探るように視線を巡らせた。
「いやその
…
監視とか、されてないのかなって。気配は感じないけど
…
」
「えーいいじゃんどうせなら見せつけてやろーぜ。ほれ、ちゅー」
「ばか」
ジト目でリィンはクロウの頭をぺしりとはたいた。
「監視が無くてもだめだから。
…
まったく、ほんと浮かれてるよな、俺達」
思わず笑みを零しながらそう言うと、それでクロウはどうしてアルティナが不機嫌そうだったのか思い当たったようだった。
「だってうれしーもんな。お前と旅行できて」
旅行じゃないんだけどなぁ、という言葉はどこか子供のように嬉しげなクロウの笑みを見たら引っ込んでしまった。
「
…
もう少し色々歩いてみようか。大学の方へは行けないみたいだけど他にも見どころは多そうだし」
せがむように手を取るとクロウはその手を握り返してくれた。
「だな。せっかくだし思いっきり観光してやろうぜ」
本来の目的を忘れないでください、というアルティナのしかめ面がよぎったけれど心の中でそれに謝って返す。
(ごめん、ちゃんと勝ってみせるから今だけ許してくれ)
なんとなく新旧Ⅶ組全員がため息をつく姿が浮かびながら、リィンはクロウと共に異国の街を駆けて行った。
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