七海ななみ
2026-01-14 08:00:39
2345文字
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一緒に、幸せに。

ルカキリ。
「いっしょに、しあわせに、」の光属性ifverになります。
光属性の大団長を久々に書きたい!の一心です。
なんでハードなやつばっか書いてるんだ私…。


ファルカさんのような方は、人間の女性と一緒になった方が幸せです。
僕みたいな人外の種族と添い遂げるよりも、よほど人間らしい最期が迎えられると思うんです。
ですから、別れましょう。
さようなら、ファルカさん。どうか幸せになってください。
そして、僕を探さないでください。



緊急のトラブルに対応しており、執務室に戻れた頃には明け方を迎えていた。デスクには手紙と指輪が置いてあり、指輪はキリルに贈ったものだった。
読み終えた手紙を握りつぶす。
怒りがこみ上げ、視界が赤く染まる。

なぜだ? どうして? そんな身勝手な事を?
あの時、幸せにすると誓い合ったのに。
俺はお前の事を人生を賭してでも幸せにするって誓ったのに。
そんなの、許せる訳がない。
俺は、キリルと一緒になって、しあわせになる。
思考が怒りで焼ききれそうになる。
落ち着け。一旦冷静にならなければ。

「我が儘な嫁さんを探してこなきゃなぁ。全くじゃじゃ馬が過ぎて縄で縛らなきゃダメだな。さて、何処に行ったかな?」

逃げるなら追いかけるまでだ。


────────


どこに逃げようか、そう考えて思い付いたのは淵下宮だ。
一度は行ってみたかった。傷心旅行に丁度よいだろう。
ナタ、スメールを駆け抜け、璃月に向かう。観光したい所だがモタモタしていたらファルカに追い付かれてしまう。
だが、璃月に着いて、古銭や宝石に目を奪われてしまう。
少しだけなら、そう言い訳をして、商店を巡る。
財布は寂しくなったが、とてもいい買い物ができた。
まあ、数日は食事を取らなくても大丈夫だろう、多分。
なんとか確保できていたお金で稲妻行きの船に乗る。
船頭にて、遠くなる璃月の港を見つめる。
いよいよ稲妻も近づいてきた。
できれば、ファルカと共に来たかった。
でもこれでよかったのだ。ファルカには、素敵な女性と家庭を築くべきなのだ。
痛む胸に気付かないようにする。だめだ、こういう時は楽しいことを考えないと。
淵下宮にはどんな歴史があるのだろうか、考えただけでわくわくしてくる。

「ふふ、楽しみですね」
………へぇ、俺に一方的に別れを告げて、楽しみな事があるんだな」

聞こえてきた声に、冷や汗が出た気がする。
声のトーンからして、確実に、怒っている。

「何故、追いかけて、来たんですか」
「あんな手紙で別れたつもりなのか? 話し合いもせずに?」
話すことなどありません。あの手紙に書いてある通りです」

動揺しないように、海を見ながら、なるべく冷静に淡々と話す。別れたくない事を悟られないように。
でも、それでも、離れたことは正解なはずだ。愛しているからこそ、ファルカには、幸せな人生を送ってほしい。
僕のようなフェイには、できないこと、なのだ。

僕では、ファルカさんを幸せにできないです」
「俺を幸せになってほしい、か。俺の幸せは俺が決める」
僕は、幸せでは、ありません」

こんなこと、言いたくない。
一緒に幸せになる。どれだけ願ったことだろうか。
でも、いつか、貴方は先に死んでしまうのだ。
愛していればいるほど、別れが、辛い。

「俺の事、顔が見たくないくらい、嫌いになったのか?」
………………は、い」

嘘です。愛しています。お願いです。このまま去ってください。
このままだと、貴方が死んだときに、魂を蒼炎にくべてしまいたくなる。
人間らしい最期を、送ってほしい、それだけなんです。

なら、最後の頼みだ。この指輪を海に投げ捨ててくれ」

ファルカが、僕の手に指輪を握らせる。
この指輪は、ファルカさんが贈ってくれたもので、手紙と一緒に置いていったもの。

「本当に、俺の事が嫌いなら、指輪なんて捨てること、容易いだろ?
指輪を捨てたら、稲妻に到着次第、俺はモンドにすぐ帰る。もう、きっぱりフラれたと諦める」

指輪を捨てたら、諦める。
捨てるだけだ。捨てたら、諦めて、

『これ、よかったら受け取ってくれないか?』

付き合って間もない頃に贈られた指輪だった。
ファルカと同じ瞳の色をしたサファイアがあしらわれていて、ファルカに会えない時は指輪を眺めてファルカの事を思い出していた。
いつか、右手の薬指にも指輪を贈りたいと、そう言ってくれた。
指輪は、ファルカと一緒に過ごしてきて、たくさんの思い出がつまっていて。
指輪を捨てれば、諦めてくれる。
指輪を握りしめ、振りかぶろうと手をあげる。たくさんの思い出が、頭を過る。
指輪を、捨てれば、諦めて、くれる。

………できません」

捨てられる事など、できない。膝をつき、手すりにしがみつく。涙が溢れ出す。
ファルカが、背後から優しく抱き締めてくれる。
もう、振りほどくことなど、できなかった。


────────


「死んだら魂を蒼炎にくべたい? そんなの嬉しいに決まってる」

落ち着いて、去った理由を話すと、満面の笑顔で喜んでくれた。悩んでいたのが、嘘のようで。

「これからは、不安な気持ちになったらすぐに相談してくれ。こんな事は、二度としないで、くれ」

ファルカは重苦しい表情をしながら告げる。
僕のやり方は、間違えていたようだ。

すみません、でした」
「わかってくれたならいい」

それはそうと、と言いながら、僕の両肩をつかむ。

「稲妻についたら、こんなことを二度と考えられないようにするからな?」

宣言通り、稲妻に到着次第宿に連れ込まれ、縄で縛られてどれだけ愛されているか教え込まれた。
もう、こんな事は二度としない。
縄の跡まみれの身体を眺めつつ、ファルカの満足げな顔を見てため息を吐いた。