バラ肉
2026-01-14 00:29:35
2023文字
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ギヤマス→ヘイルマン(息抜き)

息抜きに書いた二人の話。
二人とも好きなのでイチャイチャして欲しいです。

アリスちゃんを慰めようとして🐞さんにその役目を取られ、落ち込む🧊くんに⚙️が声をかける話。

不遜な男が背中を丸めて座っている。

そんな光景に、ギヤマスターは思わず相手の元へ足が向かった。
隣に並び、ゆっくりとその場に腰を下ろす。チラリと横を見れば、立てた膝の間に顔が埋まっているのに気付いた。
いつもは五月蝿いほど騒がしいくせに。
ただ静かに項垂れる男に、思わず声が出た。

「泣くなよ、ヘイルマン」
はあ? 別に、泣いてねーって」

言った側から悪態が返ってくる。その反応の良さに一瞬たじろいだものの、顔を伏せたままの反論に信憑性はない。それはきっとこの賢い男なら分かっているはずだ。
なのに敢えてそんな態度を取るヘイルマンに、ギヤマスターは憐れむように彼をジッと見つめた。

……

一分、二分、三分……一体どれだけ過ぎただろう。
流石にそれだけ見つめれば、嫌でも視線に気付くもので。

「何だよ、その目……。勝手に人の気持ち想像してんじゃねえって!」
「ギシュッ。……お前なぁ」

チラリと顔を向けたと思えば、心無い言葉を吐き捨てる男に、一瞬で憐憫の心が霞む。
人が折角心配してやってるのに。
ムッと眉間に皺が寄るも、しかし膝の上で握られた拳が小刻みに揺れていることに気付いては、言及なんて出来るわけがない。
咎める言葉の代わりに、溜め息が零れる。

「全く、変なところで……不器用な男め」

口が悪い分、頭も回る。仲間内ではそう評価されているというのに。随分と“残念”な態度に、ギヤマスターはやれやれ、と頭を左右に振った。
だが、それは焼け石に水で。

「なっ! ……んなこと、テメェにだけは言われたくねえっつーの! マジで、何様のつもりだよ

ギロリと睨む瞳には明らかな苛立ちがこもっていた。
氷超人の割に、沸点が低い。それは本人だけが意識していない特性だ。
だからこそ、ヘイルマンの気持ちを表に出したいギヤマスターは敢えて彼の怒りに水を刺す。

「ギシュゥ……。そういうお前は、【天邪鬼】だろうが」
「ッ!おい、ギヤマスター。俺のどこが天邪鬼だって!」

案の定、聞き捨てならないとばかりに顔を上げた男に、ギヤマスターは言うならここだ、と核心をつく心構えをする。

……マリキータに出番を取られて落ち込んでる癖に、変に虚勢を張っている。そういうところだ」
「おまッ……見てたの、かよっ
「ギュイ。たまたま、な」

見事に図星を突かれたことで戦意を喪失したのか。一気に勢いを無くしたヘイルマンは、わかりやすく肩を落とした。

出番を取られた──その表現はまさにその通りで。

スパーリング中。
珍しく焦りを見せるアリステラに、ヘイルマンは思わず慰めの言葉を掛けようとした。
いつも凛々しくある彼の奥に隠されたもの。それが誰よりも繊細なのは、仲間としてよく知っている。
だからこそ、自分たちを……星の民達を導くべく為に日々自己鍛錬に励むリーダーが垣間見せた弱さに、彼は寄り添いたかったのだろう。
けれど、あと少し。あと少しで彼の肩を叩いて、軽口を言い、その頑なな心をほぐせる。
そう思った矢先、さも当然のようにアリステラの肩を抱いたのは、自分ではなくマリキータマンだった。

どんな時も、どんな場面でも。この男がアリステラの異変を見過ごす筈がないのは、ヘイルマンとて知っている。

だが、まさかこんな近くに居るのにその役目を掻っ攫われるなんて。

「オレだって、アイツに敵わねーのは分かってる。アリステラのことを一番に見てるのはマリキータの野郎で間違いない。……あの馬鹿は、どんな時でも真っ先にアリステラのために命を張れる奴だ」

ギシュッ。そう、だな」

ギヤマスターはヘイルマンの言葉に頷くしかない。マリキータに対する見方は彼とて同じだ。
あの男ほどに、アリステラを守ることができるか?
そう聞かれた時、即座に答えられる自信はなかった。



何より、彼には宗家当主の前に“守りたい”ものがあるのだ。



「ああ、クソッ! マリキータの奴、後で覚えてろよ!」

本音を白状できてスッキリしたのか。丸めていた背中をぐんと伸ばして空に吠えるヘイルマンに、ギヤマスターは眩しそうに目を細めた。
仄暗いオメガ星の中にあっても、少しの光があればこの男の体は鮮やかに煌めくから。

「おい、ギヤマスター! パイレートマンのところに行って一杯やるぞ! お前もこいよ!」

「ギシュギシュッ。ヘイルマン……この前みたいに、飲んで潰れたお前を抱えて帰らせる気だろ?」

サッサと立ち上がって手を差し出す男に、口先だけ嫌がるふりをする。本当はそれを期待した上で。


「はあ? ならちゃんとオレの様子を見てろよな」

今日みたいによぉ。

そう、腕を強引に引っ張りながら笑うヘイルマンに、思い切り虚をつかれるとは思いもよらず。

彼は自分のギアが僅かに動いたのを悟られまいよう、必死に心を抑えるのだった。