三毛田
2026-01-13 21:55:10
1076文字
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36 や. 揶揄

36日目
揶揄われてもやめられない

……
「ご、ゴメン」
「あーあ。ウチ、知ーらない」
「そんな〜。なのか様〜」
 なのに助けを求めるけれど、彼女は非情で。
「穹」
「い、今タオル用意するからっ」
「必要ない」
 頭からバケツの水をかぶったのに、軽く頭を振ったかと思えば髪も服も乾き。
「ほえぇ~」
「出た。ズボラ過ぎ」
「使えるものは使わないと、勿体ないだろう」
 腰に手を当てて、呆れた表情を浮かべるなの。それに対し、胸の前で腕を組んで彼女を見下ろす丹恒。
 水をかけた俺を責めることなく、二人は口論に近い感じで言葉を交わしている。
 疎外感を感じて、丹恒の上着を掴む。
「穹?」
「イチャイチャするなら、掃除を終えてからにしてくださ~い」
「これはイチャイチャに入るのか?」
 なのが口にすると、彼は不思議そうに首を傾げ。
「それはそうだな。片付けてしまおう」
 そっと俺の手を離し、代わりに空のバケツを握らせ。
「新しく水を持って来てくれるか」
「うん!」
「は~。お熱いことで」
 なののその言葉が、揶揄からきていたと知ったのは、しばらく経ってから。
「あー……なんか、恥ずかしい」
 ベッドの上でゴロゴロしていたら、縁ギリギリまで転がされた。
 そんなことをしてくる奴は、この空間に一人しかいない。
「丹恒……
 ジトッと恨めしい表情を向けるけど、本人は気にすることなくタオルで髪を拭いてからベッドに腰かけて。
「それで? 何が恥ずかしいんだ」
「今更、なのの言っていた言葉の意味が解って、一人悶えていたところ」
「三月の言葉?」
「ほら。俺が丹恒に水をかけちゃったときのこと」
「ああ、あれか」
 視線を上に向け、思い出そうと目を左右に動かした後頷く。
「揶揄われていたな」
「あの頃は、まだ付き合ってなかったのにさ」
 胡坐をかいて、肘をついて丹恒を見ると。
「お前の、俺を見る視線で気づいていたのだろう。聡いやつだからな」
 思わず唸ると、優しく頭を撫でてくれて。
 彼の胸に飛び込み、顔を押し付ける。
「丹恒」
「どうした?」
「好き」
「ああ、俺も好きだ」
 応える声色や、柔らかく優しい。
 ああ、好きだなって。
「丹恒さぁ、もっと俺を叱ってくれてもいいんだぞ」
「お前が危険なことをしたら、叱るが。それ以外では、わざわざそんなことをする必要はないからな」
 俺の紙に頬ずりし、それからポンポンと背中を叩く。
 まるで、幼い子供にするかのようなそのしぐさ。
 気に入らないと言えば気に入らないが、ここで抗議したところで丹恒は変わらないのはわかっている。