sidori
2026-01-13 17:43:13
3882文字
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[新刊サンプル] 人妻定食まとめ本

2025年にjilさんと1年間毎月連載した人妻定食の再録本です。かきおろしつき!

https://www.pixiv.net/artworks/140452546
こちら↑はジルさんのサンプルページ

A5/本文258P/¥2500(会場頒布価格・予定)です。
後日通販を予定しております。よろしくおねがいします。

お通販ページ
https://www.melonbooks.co.jp/fromagee/detail/detail.php?product_id=3471653&adult_view=1&nrdp=1



収録内容
人妻定食
1月号 https://privatter.me/page/678242b26e55a
2月号 https://privatter.me/page/67aadbadd586c
3月号 https://privatter.me/page/67d035be26853
4月号 https://privatter.me/page/67f914d2d08e7
5月号 https://privatter.me/page/68205fba363a6
6月号 https://privatter.me/page/684c3af82dcf8
7月号 https://privatter.me/page/6871138793445
8月号 https://privatter.me/page/6899c32839c23
9月号 https://privatter.me/page/68c56d27e24f9
10月号 https://privatter.me/page/68ebb352b71ff
11月号 https://privatter.me/page/691893173db4b
12月号 https://privatter.me/page/69438ab61452f

かきおろし


かきおろし冒頭サンプル(しどり)

【9月・蛟九】
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 その祠は、その神を信奉する敬虔な村人たちの手によって、代々静謐さを守り継がれて来た蒼い泉の畔に建っている。
 外見は至って小さな社である。人々が参拝するのは遥か麓に据えられた鳥居の前であり、その為の設えは一切されていない。造りは簡素。大きさは人間の成人男性の身長程もなく、子供でやっと潜り抜けられるかという程の小さな扉の内側には一畳にも満たない空間があり、恭しく安置された箱の中にかつて土地に棲む人間と神の間で交わされた約定書が収められている。その契約によって、此処は神域である。
 社は神の居室への扉──その鍵穴に過ぎなかった。主が招いた者のみにその鍵は与えられ、戸を開く事が許される。
 もっとも、この神は永い時の流れを人を守って暮らしていながら、人を好いてはいなかった。同じ神であるたった一人の伴侶を除いて、これまでにその戸を潜った者はいない。故に、その伴侶が姿を消してこれまで、その戸が開く事は一度もなかった。
 四百年もの間。
 そして今日、とうとう開かれたその内側では──……


 薄暗がりの中、九尾は吊るされていた。
 着ていた物は全て脱がされ、露わになった白い肌を戒めているのは、この社の主である神──一帯の河川を司る水神・蛟の長大な尾である。
 その全貌は、九尾からは見えなかった。
 ただ暗闇から長い尾だけが伸びて来て、九尾の体を絡め取り、戒めている。
 一体どれくらいこうしているだろう。
 九尾の狐──かつてこの村で優しい鬼として暮らしていた豊穣の神。見た目は白銀の髪と赤い目を持つ美しい青年で、今はその尾骨から本性の一部である九本の尾を揺らし、頭にも大きな獣の耳を生やした坂田銀時という名を持つ彼こそが、長い間悪しき人間に囚われて留守にしていた蛟の伴侶その人である。
 その彼。帰って来た銀時が蛟の祠の入り口に立った時、扉は手をかけずとも自然と開いた。その資格を失っていなかった事に銀時は安堵したが、それも束の間。次の瞬間には扉の内側から飛び出して来て、その身を捕まえた蛟の尾は乱暴だった。無理矢理と言って良い程の強引さで銀時を領域に引きずり込み、そしてそれからずっとこの状態でいる。
 呼びかけても応えの声はなく、顔さえ見せてくれない夫に、銀時はすっかり困り果てていた。
「たかすぎ……、なあ、晋助、ってば……、っん……、は、……っぁ」
 それでいて、肌の上を這う蛟の尾の動きはやたらと艶めかしかった。



【10月・督白】
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「オイ」

 いい加減苛々として声を掛けると、銀時はびくりと身を竦ませた。
 銀時はこちらに背中を向けている。俺はその後ろに座って、少し前に銀時が作って来たざっくりと裂けた傷の手当をしてやっているのだが、さっきからそわそわそわそわとその本人が体を揺らすのでやりづらい事この上ない。勿論、その痛みを軽んじている訳じゃない。別の奴を庇って無駄に怪我した上、それを隠していた事に対しては非常に怒りを感じているが、それはそれ、これはこれだ。傷を負ったのは三日前。すぐに止血し縫合も済ませてはいるものの完治には程遠く、未だ赤く血を滲ませるそれに消毒薬をかければ、どんな屈強な男でも呻き声くらいは上げる。いくら無双の戦神と周囲からは思われていようが、銀時だって人間だ。痛みで跳ねるくらいなら俺だってそれを咎めたりしない。
 だがそうじゃない。銀時のそれはもっと落ち着かないものだ。貧乏ゆすりに近い。包帯を巻くのに余りに邪魔だった。
「いい加減にしろよ。少しくらいじっとしてらんねェのかテメーは」
 仕方なく一度手にした包帯を盆の上に戻し、銀時の顔を覗き込む。
 何か言いたい事があるのかと思ったからだ。
 いつもなら肩でも掴んでぐいと振り向かせるところだが、折角端から薄皮で閉じ始めた傷を目の前にしてそれはしない。膝立ちになって身を乗り出すと、銀時は俯いていた。
 どこか不自然だと思った。必死に俺から顔を背け、伸びた髪で横顔すら隠そうとする。ちらとだけ見えた口元は何かを堪えるように引き結ばれ、微かに震えているようでさえある。
「おい、銀時?」
 俺は結局、その顎に手をかけ無理矢理俺の方へねじ向けた。
 銀時は、何故か顔を真っ赤にして照れていた。一瞬熱があるのかと思いかけたが、俺の方を見ないで泳いで行く視線で違うなと分かった。じゃあなんだ。
「銀時……?」
 しかしそれは訊ねる前に、あぐらをかいていた脚を銀時がもぞりと動かしたのにつられて、落とした視線の先で原因が分かった。
……発情してんのか?」
 銀時の股座は盛り上がっていた。下から硬い物で押し上げられているかのように、袴の布地がピンと張って山を作っている。同じ男ならその意味が分からない者はいないだろう。
 銀時はかあっ、と頬をますます赤くして、わたわたと膝を引き寄せ、そこを俺の目から隠そうとしながら喚いた。
「おっ、お前の触り方がやらしーからあッ!!」
「あ?」
 俺はイラっとして聞き返した。



【12月・クリスマス】※ジミー君視点
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 クリスマスだっていうのに、今日も俺は副長の命令で万事屋の旦那を見張っている。
 正確には、追っているのは旦那の旦那になった男。つまりあの時ターミナルで死んだと思われていたが、あれから二年。気がつけば俺達真選組の警戒網をあっさり通り抜けてかぶき町に出没するようになっていて、かと思えば旦那の周囲の人間をいつの間にやらすっかり篭絡して外堀を埋め、「はい」と言うしかない状況を作り上げてから旦那に俺達真選組の目の前で二か月前、盛大なプロポーズをかました元テロリスト、高杉晋助の動向である。
 正直言ってこの任務は虚しい。そりゃあ確かに、俺には折角のクリスマスに一緒に過ごしてくれるような彼女はいない。性なる夜なんて全く関係ないので、ただの平日の夜と言えばその通り。シフトが回ってくれば仕事はします。だけどそういう事じゃない。そもそも今更高杉晋助を見張る意味ってあるんだろうか。
 勿論、副長の懸念が分からない訳じゃない。高杉は俺達にとっては天敵だった。攘夷浪士の中でも大物中の大物。最重要指名手配犯。俺だって最初は警戒してた。あのターミナルの事件と、そこへ繋がった一連の出来事の中で、旦那と高杉の間に並々ならぬ関係があり、それはただ敵として憎み合っているというより──むしろ、そう。互いを大事に思っているからこそ譲れない何かがあるのだという事を知っても、やっぱり高杉は怖かったし、その時点では、まさか二人がそういう関係だなんてまだ思ってもいなかったからだ。旦那に近付いているのは、まだ戦い足りないからではないのかと。
 でも、プロポーズ事件を目の当たりにして、俺のそんな疑念は吹っ飛んだ。あの時の旦那の顔。盛大にびっくりして、それからじわじわと高杉の言葉の意味を理解したのか顔を赤くして照れて、その後それが衆人環視のど真ん中であった事を思い出したのか一転慌てだして、何が違うというのか、違う!!これは違うから!!と喚きながら、旦那の返事をじっと待つ高杉の腕をひっつかんで逃走した。
 二人を囲んでいた俺達真選組は、その時一瞬呆気にとられた。確かに、それは不覚だったと思う。そもそも、高杉が町中を物凄い形相で旦那の事を追いかけ回しているって通報で駆けつけて来て、通りのど真ん中で旦那の腕捕まえて今にも斬りかかりそうな程の殺気を放っていた高杉の口から旦那への愛の告白が飛び出て来るなんて思わない。一体俺達は何を見せられたんだろう。だが分からないまま大騒動の原因を放置する事も出来なくて、慌てて二人の後を再び追いかける事になった訳だが。