風花莉亜
2026-01-13 09:08:15
5798文字
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十二月二十五日の俺達。

第4回どどち版ワンドロワンライ参加作品。藤堂くん視点。藤堂くんの家でクリスマスパーティーするお話なのでお姉様と妹ちゃんが出てくるのですが、捏造してます。今回会話がいつも以上に多く、いつもの如く少女漫画仕様。誤字脱字は絶対あります!

十二月二十五日、クリスマス当日。
昨日はイブで、多くの所は昨日クリスマスパーティーなんかを開催したに違いない。
もしかしたら、二日連続なんて所もあったかもしれない。
そんな中、我が藤堂家は二十五日にクリスマスパーティーをする事にしている。
だって今日が本番だろが。
生憎と部活に青春を捧げている我が野球部にクリスマスだからと言ってオフがプレゼントされる訳もなく、授業がない分めいいっぱい体を動かした。
野球漬けの一日だったと言っても過言ではない。
しかし流石に夕方には部活も終わり、普段よりも早い帰宅となったので帰りに何処かに寄っていくかなんて話も出たが、今日なんてどこもかしこも混んでいるだろうと言う千早の言葉に納得し、そのまま解散となった。
どちらにせよ、俺はパスの予定だったのでナシになったのは有難い。
元々今日は早く終わるのがわかっていた為、俺はクリスマスパーティーに備えて帰りがけに食材の調達を頼まれていた。
食材の調達と言っても、姉貴が注文していた物を受け取りに行くだけなのだが。
いくら早く部活が終わるとは言え、今からご馳走様の準備をするには時間が足りない。
そんな事はお見通しだと言わんばかりの姉貴が、あれこれと注文していたと言う訳だ。
しかし、どう考えても一人で持ち帰るには量が多いような?
ケーキにローストチキンに更にはオードブル。
もっと言うなら飲み物も一緒に買って来いとの事。
いや、無理だろ、往復案件だろこれ。
朝家を出る時に受け取った控えの紙を今更ながらに見て頭を抱えた。
いやマジで何考えやがるあの女。
帰ったら一言文句言ってやる、そう決意した所でタイミング良く姉貴からメッセージが届いた。

『千早くんも呼んだら?』

あー?
あー、あー、そーゆー事ね。
無駄に量が多いのは、千早を誘う口実にでも使えって事ね?
俺と千早が付き合っている事を言ってはいないが、姉貴は薄々勘づいている、と思う。
だからこそ、このメッセージな訳だ。
もしくはただ単に妹が千早を気に入っているので「今日は千早くん来ないの?」とでも言われたか。
妹の頼み事には弱い俺達姉弟は、そんなささやかなお願い事なら全力で叶えてやる。
と言う事で、たった今千早は藤堂家への連行が決定した。
悪いな千早、黙って家に来てくれ。


学校を出て要達と別れ、その後にヤマとも別れる帰り道。
千早と二人きりになった今、誘うならばここ、今しかない、と口を開いた。

「千早も俺の家でクリパする?」
「はい?」
「親、今日も遅いんだろ?」
「遅いですけど」
「ん。じゃあ、決定」
「ちょ、勝手に決めないでください!」

慌てる千早の手を取り、スタスタとデパ地下を目指す。
後ろで「待ってください」だの何だのと言っているが、手は離さない。
流石に人通りが多くなる所では離すけれど、もう少しだけこのままでも許されるだろう。
現に振り払おうとすれば出来るのにしないという事は、そーゆー事。
御機嫌に歩く俺相手に、何を言っても無駄だろうと察した千早は盛大な溜息を吐いていたが、大人しく付いてくる。
まぁ、手を握られているのだから付いていくしかないのだが。

「どこに行くんですか?」
「ケーキと肉とオードブル取りに行く。ついでに飲み物も買う」
「多くないですか?それ一人で持ち帰る量じゃな……あ、」
「気付いた?」
「俺も最初から頭数に入ってたって事ですか」
「正解〜。だから諦めて一緒に来いよ?」
「お姉さんの入れ知恵ですか」
「はっはっはっ」
「全くこの姉弟は……

肩を落とす千早に笑って、名残惜しいけれどそろそろ手を離す。
目的地は、もうすぐだ。


少し歩いて辿り着いたその場所は、当たり前だが人が多かった。
これは隣を歩く千早なんかは人波に揉まれてしまいそうだと思う。
気を付けて見ておかないと、はぐれたら面倒だ。
それを頭に千早を気にしつつも、自然と目はあちこちへと吸い寄せられる様に向けられる。
クリスマスを色濃く感じる店内は、食欲をそそる光景が広がっていた。

「うまそう」
「そうですね」
「あれ?あんま響いてない?あの肉とかめっちゃ美味そうじゃん?」
「美味しそうですけど、あんなに量食べれませんよ」
「あ?肉食う為に生まれてきたようなもんだろ、俺達」
「勝手に仲間に入れないでください。しかも、肉食う為に生まれてきたは言い過ぎでは?」
「いーや!ンな事ねー」

男子高校生、肉好きだろ肉。
清峰だって、わんぱくな肉食ってたろ。
まぁ確かに千早がわんぱくな肉食ってたら、何か違ェとは思うけれど。
それでも俺の作った弁当に唐揚げが入ってると欲しそうな素振りを見せる時があるので、やっぱり千早だって肉は好きな筈。
唐揚げくらいなら帰ってからでも作ってやれるだろうか。
脳内で冷蔵庫の中身を確認すると、買っておいたとりもも肉を発見する。
よし、作ろう。
そう決意して、ローストチキンを受け取りに行く。
肉の事を考えていたからではない、一番近かったのがローストチキンだっただけだ。
注文していたローストチキンを受け取り、次はオードブルを受け取りに行く。
その途中、どうしても思っていた事が口をついて出た。

「時間あったらなぁ、ローストチキンも作るんだが」
「え、ローストチキンって買うものでは?」
「は?作るだろ」
「えぇー……
「じゃあ、来年は作ってやるよ」
「来年」
「約束な」

ニッと笑いかければ、何とも微妙な顔をされる。
どうせ来年の事なんてわからないとでも考えているのだろうが、俺は別れる気は更々ないので、来年の約束は絶対だ。
そんな事を話している内に、オードブルを頼んでいた所に着く。
受け取ったものを見て、これにも唐揚げが入っている事に気付くが、でもまぁ、追加で作っても問題ないだろう。
余ったら明日のおかずにすればいいし、なんなら千早にも持たせる。
肉はあるだけあると良い。
後はケーキか、そう思った所で、ちょっと寄りたい所があると千早に言われた。
すぐに戻るからとだけ言って、千早はすぐに人波へと消えてしまう。
おいおい、マジかよ。
仕方なしに近くのベンチへと腰掛ける。
この荷物を持ってケーキを受け取りに行くのはちょっと大変だ。
下手すればケーキが見るも無残な姿になっているかもしれない。
そんな事にでもなれば、姉貴に何を言われるかわからないので、千早の帰りを待つ選択をした。
それにしても、千早は一体何処へ行ってしまったのだろうか。
このまま戻って来ないなんて事はないだろけれど、置いて行かれたのは少しだけ寂しいと思った。

暫く人が行き交うのをぼーっと眺めていると、向こうから待ち人がこちらへ来るのが見える。
あぁ良かった、逃げられた訳ではなかったんだな。

「すみません、思ったより遅くなってしまって」
「別にいいけど、なんそれ?」

行きには持っていなかった小さな持ち手の付いた紙袋が二つ、千早の手に握られていた。

「流石に手ぶらってのも悪いので、お姉さんと妹さんにプレゼントを」
「気ぃ遣わなくていいのに」
「そういう性分なので」
…………ちょっと待て、俺にはないのか?」

それはかなりショックなんだが?
俺の分はないのに姉貴と妹にプレゼントを渡す千早を見なければならないとか、クリスマスだってのに切なすぎねェ?
少し楽しみにしていたクリスマスパーティーが、一気につまらないものに変わってしまう予感に涙が出そうだ。

「藤堂くんの分はちゃんと用意してありますよ。当然じゃないですか、その、恋人、なんですし」
「ちはやぁ」

そんな可愛い事を言う恋人を抱き締めたい衝動に駆られるが、ここは人が多すぎる。
流石に目立つ行動はしたくない。
そもそも今ここで抱き締めたら、本当に俺を置いて帰ってしまいそうだから、グッと堪えた。

「さ、さっさとケーキ取りに行きましょ?妹さん待ってるんじゃないですか?」
「はは、だな。急ぐか」

見え見えの照れ隠しが可愛くて、抱き締めたい気持ちが膨らんでしまった。
後でめいいっぱい抱き締めようと決めて、先にスタスタと歩き出した千早の後を追う。
それからケーキを受け取って、ジュースも買って帰路に着いた。


玄関を開けるとその場で待っていたのか、妹が笑顔で出迎えてくれる。
可愛らしい「おかえりなさい」を貰って、心が温かくなった。
足に抱き着いていた妹は俺の後ろに千早の姿を確認して目を輝かせ、はやくんだ、と嬉しそうな表情を浮かべるものだから、何とも複雑な心境になった。
妹を取られたような、恋人を取られたような。
そんな俺を姉貴がニヤニヤした顔で見ていいたが、相手にすると面倒臭いのでシカトした。
姉貴の相手よりまずは、唐揚げ作り開始だ。
手伝うと申し出てくれた千早と一緒に唐揚げを作り、買ってきたものを並べて、サラダも用意すれば準備OK。

パーティーは順調に進み──と言っても食べて飲んで喋るだけなのだが──気付けば妹が何やらリボンの付いたどこからどう見てもプレゼントな包みを俺と千早へ向けていた。

「にーにと、ちはやくんにプレゼント」
「お?くれんの?」
「俺にもですか?」
「ふふふふ。どーぞ」
「ありがとうな」
「ありがとうございます」

二人仲良くプレゼントを開封してみれば、出てきたのは色違いの手袋。
どうやら手袋のままスマホが使える代物らしい。
寒さもこれから厳しくなるだろう、指先を保護するには嬉しいプレゼントだった。
しかも、千早とお揃い。
嬉しくない訳がなかった。
早速着けて見せれば、妹は大変喜んだ。
俺に倣って千早も手袋を着けてくれたので、妹は満面の笑みを浮かべてキャッキャっと笑う。
そんな妹に、俺からもプレゼントがあるんです、と手渡したのは例の持ち手の付いた紙袋。
大好きな千早からのプレゼントに、更に嬉しそうな表情でそれを開封し、出てきた髪ゴムに目をキラキラと輝かせた。
ねーね、結んで!突進する勢いで姉貴の元へと向かい、結んでくれとお強請りする。
はいはい、と優しく笑ってササッと結んでしまう姿は正に姉であった。
姉貴にありがとうとお礼を言った妹は、千早の元へ行き、ぺこりとお辞儀をする。

「ちはやくん、ありがとう」
「どういたしまして。凄く似合ってますよ。それから俺もコレ、ありがとうございます」
「えへへ、どういたしまして〜」

あー、千早と妹からマイナスイオンを感じる。
この空間最高。
二人の姿を微笑ましく見守っていると、いつの間にか隣に来ていた姉貴に肘をつつかれる。

「千早くんの事、大事にしなさいよ」
「たりめーだろ」
「そ?ならいいけど」

そう言って笑う姉貴の手には、いつの間に渡したのだろう、千早が買ったプレゼントがあった。
何貰ったんだと聞けば、ハンドクリームだと言われる。
しかも結構良いやつ。
俺には良くわからないが、やっぱり千早はその辺の物に詳しいらしい。

楽しかった時間はあっという間で、そろそろ千早を家に帰さなければならない。
本当は泊まっていけばと言ったのだが、丁重に断られた。
家族団欒してください、そう言われてしまえば無理強いは出来なくて、けれどまだ一緒に居たかった俺は千早を家まで送る事にした。
一人で帰れるだの何だのと言ってくるかと思っていたが、あっさりと送られる事を快諾した辺り、千早ももう少し俺と一緒に居たいのだと結論付ける。
それから二人、玄関で妹に見送られて家を出た。
お互いの手にはお揃いの手袋。
何だか擽ったかった。
今までお揃いの物なんて身に付けた事がなかったから、結構嬉しかったりする。
でも、浮かれているのは自分だけかも?

「千早ってさ、ペアルックありの人?」
「なんです、突然」
「俺は、ありなんだけど」
……まぁ、ペアルックとまでいかずとも、これくらいのお揃いなら、ありですかね」

これくらい、そう言って手袋を着けた手を見る。
なるほど、さり気ないお揃いはOKなのか。
良い事を知った。

「じゃあ、コレも受け取ってくれる?」

そう言って取り出したのは、安物のリング。
まだ高校生なので高い物は買えないけれど、千早を繋ぎ止められる様な何かが欲しかった。
リング一つにそんな拘束力はないのはわかっているが、千早がコレを持っていてくれるだけで、十分だ。
買いに行った時、シルバーに輝く細身のリングは千早に似合うだろうと、即決だった。
千早の指に嵌るのを想像して、これしかないと思った。
だから、受け取ってくれ。

「まさか、指輪を貰うとは思いませんでしたねぇ」
「重くてごめん」
「確かにちょっと重いです。藤堂くんの場合本気も本気っぽいので」
「悪りぃ」
「あはは『悪い』とはちっとも思ってないくせに」
「そんな事は……
「だって藤堂くん、俺が指輪を受け取らないなんて微塵も思っていないでしょ」

図星だった。
勝ち戦だと思っていた。
だって千早は俺の事が好きで、俺も好きで。
だから何の問題もないと。

「案外愛が重いタイプだったんですねぇ」
「うるせーよ」
「あはは。でも、悪い気はしません」
「千早」
「あーあ、逃げにくくなっちゃいました」
「なに、逃げる気だったの?」
「時と場合によっては」
「俺が逃がすとか思ってんのか?」
「ないですねー」

ケラケラ笑う千早は手袋を外して指輪をはめて見せる。
似合いますか、そんな風にとびきりの笑顔で言うものだから、胸がつまってここが道路でいつ誰が来るかわからないのに、思い切り千早を抱き締めた。
苦しいと抗議の声が上がるが無視だ、だって力を緩めるなんて到底出来そうにない。
おずおずと背中に回った腕に愛おしさが込み上げてきて、少しだけ体を離す。
寒さだけではないだろう、街灯に照らされた千早の顔は赤く染まっていた。

「真っ赤じゃねーか」
「うるさい」
「ははっ」

コツン、と額を合わせて、それから両手で赤い頬を包む。
多分きっと今は俺達以外誰も居ないだろう、そう決め付けて目の前の唇へと一つ口付けを落とす。
後で怒られるかなぁ、と心の片隅で考えながら。


END