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MN*B
2026-01-12 19:55:48
5896文字
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宗おに:二次創作
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靉靆停滞廃退懐他意罪体錐体上位体【宗おに】
(あいたい ていたい はいたい かいたい ざいたい すいたい じょういたい)
教主を教授と呼ぶ昔馴染み年下男主
教主様の私服が教主というより教授だな、からの思いつき
僕
僕
僕
僕
僕
僕
僕
僕
信徒として集める他に、教団を運営する上で優秀な人材を探していた。それで目についたのが、昔の知り合いだった、それだけの話だ。
「
……
『
教授
きょーじゅ
』?」
私より一回り下の近所の子供。そんな彼からすれば、私は『物事をよく知っている人間』だった。だから、そう呼ばれていた。
私を後ろから呼び止めた彼は、コートの立てた襟の間から白い息を吐いて、私のことを見上げていた。
昔に比べればその距離はずっと近い。だが、その反応で私も確証を得た。
……
教団の力で得た身上書通りであり、私の思い違いでもなかった。
人で溢れかえる繁華街で、私達は
偶然
にも再会した。
それが約二時間ほど前のことで。すっかり冬の陽は暮れている。もし出ていても届かないような奥まったところにある居酒屋で、私達はテーブルを挟んでいた。
ここは彼の行きつけのようで時折、店員や周囲の客から声を掛けられる。それを彼は慣れた様子で適当に捌いた。
「教授は小さい頃からの知り合いで
僕
の先生ですね!」
彼の先生になったつもりはない。だが、都合が良かったから訂正することもしなかった。
「髪がずいぶん長いね」と私が声を掛けられれば、「
僕
もホラそう! 教授リスペクトで!」と話題をかっさらっていく。
とんだ大ぼら吹きだ。でも、やはり都合が良かったから黙っておく。
人好きがしないのを分かった上で、庇われている気がした。それか、好きではなさそうな場所に誘った後ろめたさからか。
私はロクに喋りもしないまま、大して箸も口もつけずに、彼の様子を窺う。
居酒屋の店主から「今日はご機嫌だねぇ」と言われ、「ハハハ、分かります~?」と赤ら顔で答える様は、なんの悩みもない人間のようだ。
とんだお調子者に育っている。ヘラヘラとして、何の悩みもないみたいな有様だ。
昔はもっと大人しくて静かな子供で、纏わりつかれると煩わしくはあったけれど邪魔というほどでもなかった、くらいの存在だった気がする。
支払いの場面になっても、「この間、パチで当てたアブク銭があるんで、この機会に放出しちゃいたいんでいいですかぁ、いいですねぇ!? アイヨ!」とふざけ倒しながら、財布を取り出す私の手を彼は遮った。
彼がギャンブルをするといった報告は上がっていなかったはずだ。そんな分かりやすい弱点、見逃すわけがないのだが
……
たまにしかやらないだけだろうか。
長年会わない内に分からなくなるものだな。と、私が思っている内に会計は進む。
「
僕
の爆音ぺいぺいを聞かせてあげますよぉ!」
彼がそう言って翳すも、無音。
何度か持った手を振って、彼は首を傾げた。それから画面を確認する。
「あり?
……
決済できてるのに鳴らない! シンプル不具合!!」
何がおかしいのか、けらけらと笑い声をあげる。これだから酔っぱらいは、と言われる典型例だ。
年甲斐もなく騒いで、こちらが恥ずかしくなる。
しかし、周囲の人間は慣れたもので、よくある光景の一つとして受け流された。
べへれけの彼に腕を掴まれ、繁華街を抜けて、人気のない街路を進む。
途中にあった公園と煌々と光る自販機、それに釣られてフラフラと歩いていく彼に私は引っ張られる。
「教授は何飲みますぅ? おしるこ? そういや聞いてよ、前にさ自販機でゼリー入り炭酸買ったらホットになってて!」
彼は自販機の前でポケットの中を探りながら「アッチアチの炭酸! 意味わかんないでしょ」と喋り続けた。
「ゼリーは消えてたし舌ヤケドしました! ちなみにもう一つ買って冷蔵庫で冷やしてもクソマズ飲料と化してたのは変わりなかったですね」
「何をやってるんだ」
こんなに馬鹿だっただろうか。
しかし、彼はそんな馬鹿話をしながらもスムーズに動き、ピ、とタッチ決済で飲み物を買ってしまう。
幸いにも、自販機から出てきたのは変哲もないミルクティーと缶コーヒーだった。
「どっち?」と問われるように差し出されるので、私は大人げなくミルクティーを選んでみる。しかし、彼はなんの反応もなく、カシュリと缶コーヒーのプルタブを開けた。
「あれ、やっぱこっちのが良かったですか」
「いや
……
開けられるようになったんだと思ってね」
「
何歳
いつ
の話!? なんなら飲めますから!」
「さっきまでその辺の小学生と変わらない話をしてたのは君だけどね」
「んーっ、なんも言えね!」
彼は苦笑して、「ブランコ乗りましょ」と言い出し、視線を逸らした。
遊具の場所を仕切る為のちゃちな色合いの柵を通り過ぎて、これまたこじんまりとしたブランコに大の大人二人でそれぞれ腰かける。それでまた、彼は堪えきれないとばかりに吹き出した。
「足がっ、長すぎて! 伸ばしてるしか、できないっ
……
!」
何がおかしいのか、ツボに入ったらしく笑い続けている。
彼は笑いながら鎖を腕に引っかけて後ろに仰け反り、手の中の飲み物まで上着に軽く引っかけて悲鳴をあげた。
私と同じく長い髪が地面を擦っているのに構いもせず、子供のようなはしゃぎようだ。
それでふと居酒屋での話題を思い出し、落ち着かない振る舞いを窘めついでに、ギャンブルは感心しないと、それらしい小言も言ってみせる。
彼はそれをウンウンと揺れながら聞いて、
「ああ、あれ。嘘です」
「嘘
……
」
「はい。
……
あぁ。驚かないんですね」
ギ
…
と、ブランコの鎖が鳴いた。
「なんで、そんな嘘を」
「出所の分かんない金で飯食いたくなかったんで」
彼は赤ら顔なのは変わらないまま、すっかり酔いの醒めた表情をしていた。
「近頃、身辺がきな臭くって
……
勘でしかなかったんですけど、合ってましたね。教授の仕業でしたか」
「
……
よく分かったね」
「あ、うん。今ハッキリしました。カマかけです。ワンチャンあるかって思ったけどやっぱそうなんですか、マジかぁ」
彼は半笑いで「変な話と人が出回ってるの教授のせいだったんだ。アハハ、知りたくなかった~」とぼやく。
どちらかと言えば私のほうが言いたいことだろう、それは。
とんだ男に育ったものだ。可愛げの欠片もない、知りたくなかった。
「君はどこまで私に嘘をついてる?」
「ははは。それ、教授が聞くんだ」
私は何もついていない。明かしてないだけだ、彼が何も訊かないから。
……
嗚呼、それで合点がいくじゃないか。知りたくないから、彼は彼自身のことばかりを話していたんだ。
「そうですね
……
髪を伸ばしてるのはドネーションの為にです。リスペクトなんかじゃない。教授が髪長いのなんて今日が初見なのは分かりきってますよね」
「
……
社会奉仕の気持ちが強い人間に育ったものだね」
「自己満足と愛撫ですよ。後悔を過去にしないように戒めているだけです」
自分のことを知って欲しくて喋る人間は多くいる。それが基本だ。
しかし彼は、聞かない為にも喋っていた。
「
僕
は人に無関心すぎた。嘘や建前を読み解く努力もせず、ただそういうものだと受け流す。だから、知らないままの傍観者に過ぎなかった」
彼は指先で缶をぶら下げて空を見上げた。ひと際、白い息が立ち上る。
「死んだクラスメイトの好きな色すら知らない、そのことに気がついて。自分の残酷さに呆然としました」
知らない話だな、ただそう思った。
彼のクラスメイトが死んだなんてことあっただろうか。
「他の同級生は思い出しもしないでしょう。机を並べてたのも、たった二週間かそこらでしたからね。
僕
だって思い返すのは如何に自分が冷たい人間だったかで、思考の中心は自分にあります」
彼は空笑いをしながら、「なんなら名前だって覚えてません」と言い切った。
「ちなみに、それは一体いつの話なんだ」
「えーっと
……
15、6の頃の話なんで、二十年前くらい?」
「忘れてて当然のことじゃないか」
「でも最初っから覚えてないんですよ。覚える気がなかったから、名前を呼んだ覚えもなくって」
私も知らなくて当然だった。なぜなら彼との関わり合いが殆どなくなっていた頃の話だからだ。
「教授との付き合いも三十年来ですか。お互いに歳食うわけですね」
彼はお茶らけた喋り方も態度も脱ぎ去って、しみじみと噛み締めるように呟く。
……
私の出方を、目的を探っていたのかもしれない。嫌な
老獪
ろうかい
さを身に着けたものだ。
だけど、それならいっそ
……
と思う。
「
……
私に声なんて掛けなければ良かったんですよ」
「掛けなかったら、それはそれで状況が好転してたとは思いませんけどね」
自分を明かすことで知ることを拒む。それなのに、正反対なことを言い出す。
「貴方かどうかの確信はなかったし、声をかけなかったらその後もモヤモヤすることは間違いなかったし。それってもう選択肢ないようなものでしょ、詰んでます」
そう話し、彼は呷るようにコーヒーを飲んだ。
その横で私は何も言わず、内容物の減らない入れ物を手の中で回した。
彼はきっと『知らないままの傍観者』で居られなくなってしまった。そのままで居られれば、 変わらずに居た ならば、私に声を掛けることもなかったんだろう。
それなのに、知ろうとしない癖は抜けないままで。
……
いや、それもどうなんだろうか。何故なら彼は、
私の思考を遮って、彼は短い笑いを漏らした。
「詰みなら、
僕
は自分から一歩踏み込みますよ。それで相手が引いてくれれば儲けものですから」
……
だからか。わざと行きつけの店で騒ぎ、目撃者を作った。私に目的があろうとなかろうと、どちらでも良いように。
私に声を掛けた時点で、彼は腹をくくっていたらしい。
「そんなに私は怪しかったですか」
「顔出ししておいてよく言いますね」
サクり、空の缶を足元の砂の上に彼は置く。私と彼の間に置かれたそれの横に、開けてすらいない私の物も並べて置いた。
温かかったそれも今では生温くなっていて、手の中に置いておくには冷めきっていた。
彼はすでに、教団と『
教主
私
』のことも聞き及んでいたのだ。
今までの姿がヤケ酒と諦念の笑いだと知ると、隣に居る彼の姿が哀れに映った。
「私の
下
もと
に来てください。断ってもいずれ、私の信徒が行きます。
……
これは慈悲です」
彼も勘付いていた通り、今の彼が住んでいる地区にも教団の手は及び始めている。
見知らぬ人間から勧誘されるより、彼も受け入れやすく円滑に終わるだろう。どうせ入信するのなら、こういう形でも構わないはずだ。
彼はブランコの鎖越しに、こちらを見た。
眉を寄せて、目尻に小さくも皺を作って。困ったような、泣き出しそうな、そんな目をしながら、微笑んだ。
「
――
くん」
幼い頃のあだ名じゃないほうの呼び方で、私を呼ぶ。
立ち上がり、私の前に来て、私の足を跨いで、膝をつき、抱き着く。昔のように。
「
僕
はいきません」
私の胸に頭を寄せながら、そう言った。
なんなら重ねて、「今の貴方が居る場所にはいけません」と、そう話す。
「会いに来るのなら拒みません。だけど、こっちから行くことはないです。ごめんなさい」
私の身体に両腕を回し、私を抱きしめながら、私にそう言うのだ。
なんの為にだ。
――
『免罪符でも欲しいのか?』 視界が染まって歪む。
「貴方のことは好きです。昔良くしてもらった恩がある。でも、
僕
は」
「うるさいッ!」
彼の襟首を掴み、力任せに引き剥がして放り投げる!!
「私を憐れむな!」
彼は背中から柵にぶつかり、鈍い音を立てた。それから力なくズルズルと地面へずり落ちる。
私が立ち上がると、ブランコの鎖がガジャリと囃し立てた。
項垂れたままの彼に、私は追い打ちの如く思いの丈を叩きつける。
「そんな気休めの言葉で誤魔化すんじゃない! 嫌ならそうだとはっきり言えばいい!! 今の私に幻滅したんだろう!?」
慕っていた相手が本当はロクでもない人間だと知ってしまった。だから私を拒絶する!
人に無関心だった? 嘘をつくな!! それなら何故お前は私に気がついた!? 憶えているからだろう!! 知ろうとせずともお前はヒトを見れているじゃないか!
私に対してだって関心があったくせに、それを勝手になかったことにするな!! お前が気がつきさえしなければ、私だって
――
!
「なんとか言ったらどうなんだ。なあ、」
はた、と我に返る。
「
――
……
?」
小さく名前を呼ぶ。
……
返事はない。
彼の影からジワリと伸びてくるのは、赤い、液体。
街灯のちんけな光で照らされるソレに、釘付けになる。
「あーあ。やっちゃった」
「
……
!」
どこから、いつの間に。そう問うのも馬鹿らしい相手が、気がつけば横に居た。
彼の足の間に膝をついて、その顔を覗きこむ。両手で頬を包み、確かめるように。
「うっわ、これは酷いね」
私のほうを振り向く。その一瞬で、咄嗟に視線を横に逸らした。
「見てよ、彼の顔」
「黙れ!!」
思わず怒鳴ったものの、怖いもの見たさでなのか、私はゆっくりと彼に視線を向け直す。
だが、項垂れたまま動かない頭しか見えず、私の位置からでは表情も窺えない。
「
……
なおせるのか」
「うん?」
「お前なら、私にやったように、できるのかと聞いてるんだ」
その存在は暫し表情が抜け落ちたかの如く真顔だった。それがニンマリとさも嬉しそうに笑う。
「いいよ。まだ手を出せる範疇だから」
まるで悪魔だ。いや、そうに違いない。だってこれは悪魔との取引と大した違いはないのだから。
「でもいいの? 彼は入りたがってなかったみたいだし、それこそ〝死んでもイヤ〟かもしれないよ」
「どうでもいい。こんなところで予定になかったモノを処理するほうが面倒だ」
「ヘェ、そっか」
その存在は血の滴る頭をグリグリと撫で回し、頬を寄せながら「嗚呼、カワいそうにね。今、おれがラクにしてあげるよ」とほざいている。
そして、「イタイのイタイのトんでいけ~☆」というふざけた掛け声を言う。ソイツがやることへの意味も関係もないのに。
彼の目が覚めた時、私は彼にとって教主となる。
昔のままでは居られないようだから、仕方ないんだ。
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