朝一番に会う相手って、普通はどなたでしょう。同じ部屋のご兄弟、挨拶をしてくれるご両親、ご家族、あるいは起こしてくれた小鳥、風、それに音を鳴らす梢、その向こうの青空、早朝に立ち込める霧、それとも、恋人でしょうか。
「おはようリッパー。紅茶、準備だけしてある。」
「おはようございます。どうもありがとう。」
のんびり珈琲を飲んでいる男は、朝食後の姿だ。朝一番にお茶を飲まないとご飯を食べる気にならない自分とは違う。
紅茶を淹れるのには勿論慣れているし、毎朝同じことをしているのに、寝惚けて火傷しないかとこっちを見ている視線がある。全て毎朝変わらない。
この朝をもう何度も過ごしている。ルームシェアの相手の友人は、家族に含まれるのだろうか。
「ねえ。こんなに一緒にいるんですから、これってわたしたちは恋人同士も同然なんじゃないですか?」
男がカップを置いてこちらに近寄って来る。そんなにじろじろ見なくても寝惚けて火傷したりしてませんよ。
「……おまえも知っての通り、おれは学生寮で過ごしていたし、軍のキャンプは共同生活だし、その都度特別親しかった人間もいた。」
「ああ。ええ、はい。」
「で、おれもそういう冗談を言ったりするんだよ。」
そうすると。
「恋人関係にならずして一緒にいるのが友人だって言われて、そう諭してくれた相手はみんなそれ以降何処かよそよそしそうに距離を置いて来るようになるんだ。」
冗談がなかなか上手く行かないらしい男を見下ろす。
「じゃあおまえもわたしから離れて行くの?」
「いいや。」
そう短い応酬、と言う名の確認をした後、男は珈琲を飲みに戻って行った。変わらない距離に。
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