ortensia
2026-01-11 23:55:48
1361文字
Public カトマク
 

カトマク(?)全部捏造

マックスさんのご家庭がそこまで貧困じゃない仕様。

 俺はサイボーグ、だけど料理が出来る。
「え。マックス料理出来んの?」
「え?飲食店勤務経験があれば別におかしくないでしょ。」
「いやいやいや、ちょっと飲食店で働いたことありますのレベルじゃねーべ。」
 カートは俺が淡々と仕上げて行く料理を物珍しいそうに見ていた。
「でもこんなん出来ても俺たちには関係ないじゃん。」
……じゃあなんでやってんの。」
「そりゃあだって、今日あの子たち遊びに来るから。特にアカネちゃん?よく食べるでしょ。」
「ああ……。」
 思い当たって返事をするカートだが、俺が料理出来ることがそこまで意外なのか、納得していなさそうな顔をしている。ちょっと失礼なんじゃない、そこまでの顔をされるいわれはないはずだが。
 俺たちが得た破天荒な出会いからも暫く経った。俺もカートも彼女らの名前を間違えることがなくなったくらい。俺たちが互いに知らないことなんかあっちゃやだと思う空間に、彼女らを招待するまでになるほど。
 カートとの出会いは、既にお互いサイボーグだったせいで料理のことなんか話題にも上らなかった。そりゃ、カートがサイボーグでなければ、一番に振る舞っていたのはカートだったかもしれない。でも、カートがサイボーグでなければ、俺たちは今ここにいない。だから、どう考えてもこれは仕方のないことのはずなのに、カートの顔は驚愕から不機嫌なものへと変わっていく。
「俺知らなかった……。」
「そんな不満気にされても……。普段から吸引式に食べ物調合したり、システムの調整ちょっといじったりしてるじゃん。」
「それとは違くないか?」
 手順通りに完成に向かって手を動かすという点ではハッキングとかと変わらないのだが、カートはそうは思わないらしい。納得させることは出来なさそうだ。
 まあでも俺も、こんなこともうすることはないと思っていた。俺が料理を覚えたのは、勿論サイボーグになる前だが、軍がどうとか考えるもっともっと前だ。
 親は料理が得意な方ではなかった。人は、自分の不得意なことは自然と避けるものだ。その上俺の親は外見を気にするタチで、自分では作れないけれど、毎食美しく整えられた料理を食べたがった。それは外食や高級料理を食べていたというわけではなく、パッケージに料理人の顔が出ているチルド食品や、コンビニで大袈裟に銘打たれた弁当なんかでも良いらしかった。けれど俺は、親が買い物に行く気力もなくて、ただ備蓄のレンジのご飯と調味料くらいしかなかった時に、親と色々アレンジを試して食べた食事の方が美味しく感じた。それから興味を持って料理を覚えたんだけど、結局、親には見栄えの悪い家庭料理は好まれなかった。
「今サイボーグ化して初めて後悔してる。」
「それはウソ。」
「マジマジマジ。」
 カートはじっと、自分が、俺もだけど、食べることの出来ない料理を見詰めている。
「良いよな。こういう家庭料理っていうの?そういうの。」
……そう?」
 カートの丸い頭がこくんと頷く。それが少し上がって上目に見て。
「俺家庭的な子がタイプなのかも。」
「それこそ俺知らなかったんだけど。」
 カートの上目遣いに笑って返せば、薄い家の壁の向こうからどやどやと賑やかな音がして、ほどなくして来客を知らせるチャイムが鳴った。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。