usagipai
2026-01-11 20:27:45
1179文字
Public
 

ジュピデレラ


むかしむかし、スペーラ・シンフォニアのどこかに――
とてもとても逞しい女の子……ううん、筋骨隆々なジュピデレラがおりました。

その肩幅は城門より広く、腕は鍛え上げられた鋼。
ドレスを着てもなお隠しきれない大胸筋が、彼(?)の生き様を雄弁に物語っていました。

今日は年に一度の、王城舞踏会の日。
選ばれし者だけが足を踏み入れられるその場へ、ジュピデレラもどうやら行くつもりのようです。

「おい魔法使い、いい仕事するじゃねぇか」

鏡の前でポーズを決めながら、満足そうに笑うジュピデレラ。
純白のドレスは見事に仕立て上げられているものの、力を入れれば即裂けそうという緊張感が漂っていました。

「ハハッ、これで城に乗り込めそうだぜ」

「わぁ……その……

隣で杖を握る魔法使いスフィーは、言葉を慎重に選ぶ。

……似合ってますよ、ジュピターさま。
……いえ、ジュピデレラ」

「ハッ、だろ?」

胸を張るたび、ドレスが悲鳴を上げる。

「待ってろよ、武闘会」

「違います、舞踏会です……

かくしてジュピデレラは、
夢(※物理的制圧)を胸に、お城へと向かったのでした。
バンッ!!!!

重厚な扉が、ノックという概念を無視して吹き飛びます。

「おい、お前がトップか」

ざわめく会場。
楽団は止まり、貴族は凍りつき、シャンデリアが不安そうに揺れました。

玉座の前に立っていたのは、この国の王子――
原初の怪物、ヴァーリー。

……スフィー…………は????」

目を見開き、二度見、三度見。

「はっ!?
じゅ、ジュピター!?!?
……おい、なんだそのふざけた格好は!!」

「は?」

ジュピデレラは首を傾げる。

「ジュピデレラに決まってんだろ」

「そこは我が嫁(スフィー)の立ち位置だろうが!!
なんで貴様の気色の悪い女装を見んとあかんのだ!!」

怒号が響き渡り、城の壁が軋む。

あらまぁ大変。
ヴァーリー王子は、見るからにカンカンに怒っていました。

「安心しろよ」

ジュピデレラは拳を鳴らす。

「今日は喧嘩しに来たんじゃねぇ」

……では何しに来た」

「王子を倒して主役になるための舞踏会だ」

沈黙。

次の瞬間、
ガラスの靴が割れました。

誰も拾いません。
なぜなら――

「おらぁッ!!」

舞踏会は、
シンフォニア史上初の“拳で踊る夜”へと姿を変えたのです。

そして夜明け。
城は半壊し、王子は床に転がり、
ただ一人、ドレスを肩に引っ掛けたジュピデレラだけが立っていました。

……時間だな」

十二時の鐘が鳴る前に、彼は去ります。

残されたのは――
粉砕されたガラスの靴の破片と、

……私の時間を返せ……………

呆然と呟くヴァーリー王子だけでした。

めでたし、めでたし。
……たぶん