あけみ
2026-01-11 18:37:34
1053文字
Public SPN(小説)
 

【SPN】私をここから連れ出して【C/D】

S4の初期C/D的な話。ディーンがキャスに対してドキドキしてしまうシチュエーション。


 一見、ぼんやりしている冴えない会計士ふうの男だと思っていたが。掴まれた腕の強さや、勢いに任せ壁に押さえつけられた力の差に、人外の力量差を感じて驚愕する。ディーンは、目の前に迫る鋭い眼光にゾクリと背を震わせた。カスティエルが黙れと言わんばかりに掌でディーンの口元を押さえ腕を掴むと、ディーンもそれに従った。
 ザカリアが用意した監禁部屋からディーンを連れ出したカスティエルは、神の命令に背き天使の秩序から外れた言わば堕天使の烙印をおされるだろう。どれほどの覚悟でディーンの腕を掴んだのか。天使除けのまじないをザカリアにかけたカスティエルの鋭い視線には迷いはなかった。その一連の動きに呆気に取られたディーンはカスティエルの腕に掴まり、天使の羽ばたきの音を聞くと一瞬にして景色が変化する。
 身を挺してディーンを連れ出したカスティエルは、預言者の一室に着くと息を吐く。一緒に飛んできたディーンは、まだカスティエルに腕を掴まれたままだ。体を密着させたまま胸の鼓動が鳴り止まなかった。体を押さえつけられ力の差に圧倒され従順になるしかなかった。だが、それは自身も望んだことだ。ディーンはカッと顔を熱くさせた。ミカエルの貢ぎ物のような扱われ方に苛立ち、思わず祈った。
 ここから連れ出して欲しいと。天使に祈ったところで彼らは己の願いを叶えてくれなかった。たった一人の天使を除いては。ディーンは、「キャス」と、小さく呟いた。カスティエルは、掴んだままだった腕を離すと、ジッとディーンを見つめる。キスしそうな距離間にディーンは思わず後ずさりする。この距離感は勘違いしそうになる。それでもディーンは真摯な視線を向けるカスティエルから視線を外せなかった。胸の高鳴りが耳元でうるさく響く。そうして、しゃがれた声でカスティエルが「ディーン」と呼んだ時、まるで催眠が溶けたようにディーンはカスティエルから視線を外した。
「私は……きっと、罪深いことをしたのだろう。けれど、どうしても我慢ならなかった」
 カスティエルがそう続ける。
「君をミカエルに渡したくなかった」
 ディーンは何故だかその言葉が別の意味も含まれているように思えて、奇妙な気持ちになる。そんなはずはない。彼はたった今、天界から追われる身になった天使だ。けれど、彼だけがディーンの望みを叶えてくれた。遠い昔、母が言っていた言葉が胸に響く。「天使が見守っている」そんな馬鹿な、と思うもディーンは、はにかんだ笑顔を見せた。
「助かったよ、キャス」


 fin



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