不運に巻き込まれても「ごめん留三郎」「なに同室じゃないか」のやり取りで終わらせてしまう二人であるが、やはり今日もいつものごとく崖から足を滑らせそうになった伊作を留三郎が庇い、逆に留三郎が足を挫いて落下。その上、雨まで降ってきたので近くの洞穴に駆け込んだ。
「…ごめん留三郎」
「なに同室じゃないか。気にするな」
それで全てすませることが出来るなら、食満留三郎と云う男の度量はどれだけ広いのか。
「しかも、打ち身打撲痺れ何でも効くマジカル伊作印の軟膏まで失くしちゃうなんて…」
「そんな薬は初耳だな」
あからさまに怪しい名前の薬は、流石の留三郎もちょっと警戒気味である。
「雨が止んだら探しに行ってみるよ」
「止せ、伊作。お前の事だ。雨でぬかるんだ道に足を取られてスッ転ぶに違いない」
「そう、だね…はぁ」
留三郎に分かりきった事を言われ、伊作は溜め息を吐いた。
──その時だ。
微かだが生き物の声らしきものが、二人の耳に飛び込んできた。
「ねえ、留三郎。何か…聞こえなかった?」
「ああ。この奥…何か居るのか?」
二人、顔を見合わせて暗闇が広がる洞穴の奥を見つめた。耳に聞こえた音は小動物らしき声だが、留三郎は足を挫いている。油断は出来ない。
「僕、見てくるよ」
「気を付けろよ」
警戒しながら伊作は洞穴の奥を見に行った。
すると伊作が両手を包み込むようにして何やら慌てて持ち帰って戻ってきた。
「とめさぶろぉぉぉ!長次が、長次がいた!!」
「はあ!!?」
「見て!」
伊作は両手を開く。そこには小さい鳥の雛ぐらいの、なんか、うす緑色の毛玉的な……
「……長次?」
留三郎に名を呼ばれた、両頬に傷があるムッとした顔のその生き物は小さく『ピィ』と鳴くと伊作の手の中でモゾリと動いた。
「ねえ留三郎、長次って雛だったんだね」
「いや、違うぞ。絶対。もし雛だったんなら、今のオレ達と一緒に居る長次は鳥ってことになる」
「ああ、そうだね…じゃあ」
「長次は嫁だろう」
「そっか!さすが留三郎!」
当人が居れば「何が『さすが留三郎』だ!阿呆が…!」と、怒りに滲んだ声で言われそうなものだが、残念ながら此処には阿呆の『は組』しかいない。
「この子、迷子かな」
伊作の話だと洞穴の奥に一人(?)居たと言う。周りには何かが棲んでいるような気配も無かった。
「うーん、迷子かオレ達みたいに雨宿りしているのかもな。濡れるの嫌がりそうだし」
留三郎が喉あたりを指で撫でると毛玉は目を細め、ピピィと鳴く。どうやら気持ちいいらしい。
「かわいいねぇ。学園に連れて帰りたいな」
「止めとけ、八左ヱ門に見つかったら煩いぞ。それに、こいつの仲間が探しにくるやも知らん」
いくら長次に似ていても、何だか分からんが可愛いフワフワした生き物にも仲間が居るだろうし引き離すのは可哀想だ。
「じゃあこのまま一緒に雨宿りしよう、長次」
伊作が手のひらの毛玉へ提案すると、毛玉は『ピィ』と鳴いた。
何度も言うが長次では無い。
「ん…寝ちまったか」
雨音が奏でる子守唄に二人は少し眠ってしまった。雨は降り始めより弱くなって、西の空には雲間から光が漏れている。もうすぐ晴れそうだ。
「伊作、起きろ」
近くで寝ている同室を留三郎はつついて起こすも、中々起きない。ふと見ると伊作が手のひらに包んで居た毛玉が居ない。
「伊作!長次がいない!」
「ウソ!」
留三郎の言葉に伊作は一瞬で飛び起きる。何度も表記しているが、あれはフワフワの生き物であって長次では無い。
すると、伊作の懐から何故か木の実が地面へバラバラと散らばって零れ落ちた。
「え?何これ」
「ドングリ、椎の実、銀杏…他にも色々あるな…長次からか?」
「お礼のつもりかもね」
毛玉がしたかもしれないお礼であって、長次からではないのだが。
木の実を全て拾うと雨が上がったので、二人は学園へ戻った。
「…ねえ、長次。誰にも言わないから教えてくれない?」
「お前、ホントは森の妖精さんなんだろう?」
「……は?」
伊作と留三郎に妙な事を聞かれた(人間で本物の)長次は、二人に「アタマ大丈夫か?」と返したのだった。
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たぴぬいが可愛すぎたのと、久々にギャグが書きたくなった為に衝動的に出来たものです。
たぴぬい→まめめいと→もちぴこと進化します(笑)
ちなみに、七匹集まると長次になる事は無いです。
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