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ぽふむん
2026-01-10 22:10:27
2550文字
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ワンドロ
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FROZEN
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「冬籠り」「冷え性」
氷柱ifしのぶ鬼化(概念鬼喰い)if
弱い自分を何とか強化したくて、禁断の秘薬(鬼の血清➕藤)を自分に投与したしのぶちゃん。
それは失敗。鬼化してしまいました。
まだ人を食っていないうちにしのぶちゃんを監禁した氷柱です。
今回の氷柱様はしのぶちゃん相手にも厳しめです
ちなみに鬼化前は両片思いです
硬質で薄い壁を軽く叩く音がした。
そして、冷涼で軽薄にも聞こえる甘ったるい声が響いてきた。
「へぇー、これはまた上質な繭玉だね。毒蟲姫の冬籠りだ」
そして、またカツンカツンと軽く壁を小突く音がした。
「でも、鬼は眠る必要は無いはずだよ。
狸寝入り・・・いや、きつね寝入りはやめるんだ。早く出ておいで。この・・・いたずら女狐」
声が笑っている。出るならいまだ。
今なら
この男が笑っているうちに、この繭玉を破り出ていくべきだ。
「ほら、怒らないから」
そうだ。今ならゆるされる。
それでも、呼びかけられた繭玉の中の蟲姫は膝を抱えて蹲ったままを決め込んだ。
すると、外の声がひとつ低くなった。
「ふぅむ・・・そういえばね、蟲送りという行事があるんだって。
火をつけて、悪い蟲を焼くんだそうだ。
いや、それよりぃ、この繭を茹でれば良い絹糸が大量に取れるだろうて。そうすればもっと良い隊服が支給出来るね」
蟲姫の息がひゅっと詰まった。
“この男”なら本当にやりかねないからだ。
「安心おし。大丈夫だよ。地獄で寂しくないように、すぐに俺もすぐに後を追ってあげるから。
ま、そんなところないんだけど」
あははは、と高笑が聞こえた。
焼かれたり茹でられてたまるものか。
蟲姫は必死で繭玉を内側から破ろうとした。
「ああ、出てこないんじゃなくて出られなかったんだね?ごめん、ごめん」
そう言う薄ら笑いとともに、蟲姫の眼前にスウッと明かりが差した。
そして、後光が差すような美しい仏・・・いや、青年が現れた。
青年は繭玉の中の少女の腋に手を差し込んだ。
そして、赤子を抱き上げるように抱き上げた。
「本当に小さいねぇ。ほぉら、たかいたかーい」
そう言って、肩より上に抱き上げ笑う青年に少女は眉を潜めた。
「このや・・・」
「こら、元は良いところの女の子でしょ。そんな下品な言葉使いをお父さん、お母さんから教えてもらったのかい?
鬼食いなんかしたから・・・かな?
姉さんも悲しむよ?これは、おしおきが必要かな」
その“おしおき”の意味が何かを知っている蟲姫は、頬を赤らめそっぽを向いて足をじたばたさせた。
「要りません。いや、離して」
「だぁめ。これ、御館様の御下名だから、ね」
そういうと、小脇に抱えられ首輪と足枷の硬質な音がした。
その丸みを帯びた、安産型と評された尻を軽く一発叩かれた。
「きゃぁん」
鬼とはいえ痛覚はある。
しのぶは悲鳴をあげた。
いや、痛いのではない。
じんじんとする痛みの後にじわじわくる
この感覚はなんだろう。
さわさわとおしりを撫でられた。
男にそんなところを童女のように叩かれた羞恥心。
いや、違う。
しのぶは戸惑った。
こんなことをする男ではなかった。
鬼に成り果ててしまったからだ。
蟲姫ことしのぶの胸は、何故かきゅうっと締め付けられる気がした。
この青年、氷柱童磨の声は今までのような春の日差しのようなものではなかった。
その称号通り、どこか冷ややかだ。
「ごめんごめん。痛かったねぇ・・・あんな注射なんてするからだよ」
そういいながら、童磨は鎖の端を専用の杭に括り付けた。
そして、注射器とアンプルを取り出す。
ああ、今日もこの時間が始まる。
「や・・・やめ・・・て」
しのぶは、恐怖に顔を青ざめさせたが童磨は許さなかった。
少し冷え性気味の、冷たい手に腕を掴まれた。
「さ、おしおき。実験の時間だよ」
注射器の針がしのぶの白く細い腕に刺さった。
薬液がゆっくりと体内に入れられる。
徐々にしのぶの体が赤黒く腫れ上がる。
「いや・・・いやぁあああ。許して、もうやめて」
しのぶは苦しさに悶え苦しんだ。
だが薬液が分解され、徐々に元の蛾の妖精のような少女に戻ってきた。
「ああ・・・これも・・・ダメか。・・・なんで・・・なんで鬼の血清なんか打ったりしたんだ。こんなこと、俺に任せておけば良かったんだ」
童磨は狂おしげに頭を抱えた。
しのぶは、本来の目的通りには効かない薬に、悶え苦しみ嘔吐感にのたうち回っていた。
その姿に童磨はさらに悲しそうな顔をした。
今しのぶに打ち込んだのは鬼を人に戻す薬。
解毒剤だ。
なんとかして、しのぶを元の姿に戻そうと童磨は苦心しているのだとしのぶも気づいていた。
でも薬の専門家ではないから効き目が弱い。
今日も効かない薬を打ち続け、苦しみもがく姿を見続ける。
「どうしたらいい・・・たった一人の子をかけがえのない子を救えないなんて・・・何が神の子だ」
童磨は額を壁に打ち付けた。
(違う)
しのぶは、童磨のこんな表情が見たかったのではない。
ただ、小さな体でも並び立てるのだと証明したかった。
驚いた顔が見たかっただけ。
侮ってごめんと、その頭を下げさせたかっただけ。
それだけだったのに。
解毒剤が効かない苦しみが辛いのではない。
冷たいけれど温かかった手。
それが、今は冷たくしか感じられないことが辛い。
あの感情はなんだったのだろう。
悪態をつきながら、それでも・・・
あの感情はなんだったのだろう。
「苦しいね・・・ごめんね。どうして助けられないんだ・・・」
童磨の苦悩の声が石牢に響く。
「ころ・・・して」
しのぶは小さく、かつ、力強く呟いた。
はっとしたような目が向けられた。
それは怒りか憎悪か
しばらく沈黙がつづき
「なんでそんな意地の悪いことを言うのかな?・・・」
この男の冷たい声は何度となく聞いてきたはずなのに、ここまで冷たい声を聞くのは初めてだった。
「君は蝶屋敷のお姉さんだ。悪い鬼に捕まっているだけだと皆には説明してある。
取り返してくる。返してあげると約束したんだ・・・意地悪・・・性悪女・・・俺に・・・こんなこと言わせ・・・この性悪女・・・ぁぁぁ・・・なんだよ。何だよこれぇ。この気持ち・・・何ぃ?」
驚いた。
この男でも泣くことがあるんだ。
この男の言う通りかもしれない。
いや、この男だからこんな控えめな表現をしてくれたのだ 。
神様
本当にいるのならばこの人だけでも救ってあげてください。
しのぶは願った。
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