ねばこ
2026-01-10 17:16:17
1627文字
Public ル右全年齢
 

君に恋したあの日から。よん

キドル、海賊軸
君に恋したあの日から。
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 ギザ男はおれのことをそこまで好きじゃない。海賊同士、船長同士、お互いに目指しているところも一緒だし、鉢合えば戦うことになると思う。今回はたまたま同じところにいただけで、やり返したい相手も同じだったから横に並べただけ。もう次はないかもしれない。そう思うと体が勝手に動いてた。
「ギザ男!」
「あ? 何の用だ、麦わら」
「えっと……
 言葉に詰まる。気の利いた言葉を選ぶことが出来ない。でも、果たしてそれが正しいのか?言葉すら選べないのに、何が正しいのかを考えるなんて器用なことできるわけがないのだ。おれは正直な気持ちを言葉にすることにした。
「ごめん、おれ、ギザ男のことが好きだ」
 もっと冗談めいて話すこともできたかなって気づいたときには遅かった。一方的に言い切っただけなのに心はスッキリしてた。そもそも、いつだって自分の気持ちに真っ直ぐだったんだ。相手の都合なんてあまり考えてなかった。恋ってヤツは自分の思い通りになんかならない。悩んで、悩んで、それでも正しいかなんて分からないって誰かが言っていたのを思い出した。
 視線をあげると、おれはギザ男に比べたら背が低いから目の前に胸板が飛び込む。顔を見るにはさらに見上げなきゃいけない。いつもと同じように顎を上げた。そしたら、バチッて音が聞こえそうなほど分かりやすく視線がぶつかった。
「な、に?」
「ごめん、てどういうことだ」
「え? だ、だって、男に好きだって言われるの気持ち悪ぃだろ?」
 自分で言ってて、悲しくなった。友だちに言うソレとも、仲間に言うソレとも違う。手を繋いだり、くっついたり、チューしたり、そういう好きは同じ男に思ったりしない。けど、おれは性別とかどうでもよくて、ただ好きだなって思う相手がギザ男だっただけ。
「冗談で言ってるわけじゃねェんだろ? テメェにそんな器用な考え方で出来るとも思えねェ」
「冗談なんかじゃねぇぞ。それに今、シッケーなこと言っただろ!」
「じゃあ、なんで謝んだよ」
「なんでって……
 好きだと伝えて、拒絶されるのが嫌だった。変な汗は出てるし、なんだか手も震えてる。今が崩れるのは耐えられない。だったら、逃げられるようにしておきたかったんだ。
「ギザ男は違うだろ?」
……
「でも、おれは好きなんだ。だから、ごめん」
「もう謝んな」
「っ!」
 目の前をフヨフヨ動くワイン色の羽、さっきまで指先まで冷え切ってたのに体の真ん中辺からあったかくなっていく。パチ、パチと瞬きをすれば、その正体が何なのか分かり始めるけど信じられない。
「は、離せよ!」
「断る」
「なんで!?」
「コッチも混乱してんだ。少しも待てねェのか、テメェはよ」
「え?」
 混乱も何もないはずじゃ?ガキの遊びには付き合ってられないって終わりにしたらいいだけなのに?ギザ男の混乱はおれにまで感染してしまった。頭の上にたくさんのハテナを浮かべて、状況を理解しようしてもできない。どうしよう、助けを求められるのはギザ男だけだ。
 腕の中でバタバタしてたら、流石に解放してくれた。少し距離をとって、見上げた顔は今までに見たことのない表情をしていた。思わず、胸の奥がギュッとなる。
……変な顔だなァ」
「胸の奥がギュッてなってんだ。しょうがねぇよ」
「なら、離れていかねェようにずっと掴んどくか」
「やめろよ! おれが持たねぇ!」
「さっきまでの神妙な覚悟はどうしたァ?」
 悪い顔で笑うくせに、目の奥はさっきまでと全然違う。そっちのほうこそ、どうしたって言うんだ。おれのジュンジョー返せ!文句のひとつも聞かぬフリして、今度はグッと肩を掴まれた。いきなりだったから転ぶって思ったけど、伝わった衝撃は少し硬い筋肉の感触だ。つまり、肩を掴まれたんじゃなくって、抱き寄せられた。
「ちょ、っ!」
「言い忘れてたことを思い出した」
「へ?」


「悪いな、テメェのことが好きだ。」