しょうがやき
2026-01-09 23:01:46
3002文字
Public 一軍シリーズ
 

【一軍シリーズ】クリスマスパーティー その後

みんなが帰った後の2人の話



みんなが帰り、リビングでソファーに座ってくつろいでいると、2階の部屋からおりてきた柊斗が俺に言う。


「理玖、お風呂入りな」
「んー」


曖昧に返事をして、自分の部屋に戻り着替えを取ってくる。
脱衣所の鍵を閉め、服を脱いで風呂場に入る。
頭を濡らしてシャンプーで頭を洗おうと目を閉じたところで、俺の体はピタリと静止した。

……次に目を開けた時に、幽霊がいたらどうしよう。

なんともベタな想像をしてしまうのは、高野が持ってきたホラー映画が原因だ。クリスマスにホラーなんて馬鹿げていると思う。
窓の外から何かに見られている気すらして、体と頭を今までにないほど急いで洗って風呂場を出た。
軽く体を拭いて服を着て、リビングに走る。
勢いよくリビングのドアを開けた俺を、ソファーに座っていた柊斗が少し驚いて見上げた。


「早かったね。ちゃんと温まった?」


柊斗はそう言いながら、自分の隣をトントンと叩く。
大人しく従ってそこに座ると、柊斗は俺の首にかかっていたタオルを手に取った。


「髪の毛濡れてる。拭かないと風邪引くよ」


そう言いながら拭いてくれる。
その優しさと温もりに安心して、柊斗の肩に頭を預ける。
もっと、この安心感を感じていたくて。


「ん?眠い?」
……違う」
「嬉しいけど、離れないと頭拭けないよ」
「やだ」


俺は柊斗の忠告を無視して、柊斗に腕を回す。
高野が持ってきたホラー映画のゾンビが頭の中をよぎり、ギュッと力を強めると、柊斗は俺の背中をさすった。


「どした?体調悪い?」


柊斗は背中をさすりながら、ゆっくり俺を離す。
柊斗の後ろに何かいるかもしれないので、視界にできるだけなにもいれないように俯く。
そんな俺の額に、柊斗が手を当てる。


「熱はなさそうだけど……


柊斗がそう結論づけると、俺はまた柊斗に抱きついた。
柊斗の存在を確認するように腕に力を込める。


「理玖、ほんとにどうし……って、あっ」


柊斗が何かに気づいたように声を上げる。
また俺をゆっくり離すと、俺の頬に手を滑らせた。


「もしかして、怖い?」


図星でビクッと体が震えると、柊斗は嬉しそうに笑った。


「お風呂で怖くなったとか?」


観念してコクリと頷くと、「ふふ」という柊斗の笑い声が聞こえてきた。


「たしかに、今日一緒に寝るって言ってたな。お風呂も一緒に入ったらよかったね、もったいないことした」
「いや……それはまだ」
「なんでよ」


それはまだ、俺の心の準備ができていないから。
キュッと口をつぐんだ俺の頭を撫でると、柊斗は立ち上がる。


「俺も風呂入ってこようと思ってたけど、1人で待てる?」
「待てる……けど、早く戻ってきて」


俺がそう言うと、柊斗はやけに嬉しそうに笑った。



ーーーー



ソファーのクッションを抱えて顔を埋める。
ギュッと体を寄せてソファーに背を預けた。
あんなに怖いホラー映画を持ってきた高野は一生許さない。
高野がゾンビに襲われる想像をしていると、足音が聞こえてくる。
ガチャ、とドアを開ける音に体が震えた。


「理玖、びっくりしすぎ」


入ってきた柊斗はそう言って笑う。
いちいち過敏になる自分に恥ずかしくなって、クッションに顔を埋めた。


「なに可愛いことしてんの」


柊斗は俺の隣に座ると、ギュッと俺を抱きしめた。


「クッションより俺を抱きしめて欲しいんだけどな〜」


揶揄うように言ってくるけど、それになにかを言えるほどの余裕は残っていなかった。
クッションに埋めていた顔を、流れるように柊斗の胸に埋める。


「そんな怖かったの。あのホラー映画」
……見てないの?」
「理玖しか見てなかったって言ったじゃん」


どうやらあの言葉は本当だったらしい。
俺を照れさせるための冗談だと思ってた。
顔を上げて、柊斗の目を見つめる。


……柊斗って、俺のこと好きなんだね」
「え、今更?伝わってなかった?」


柊斗は俺の言葉に眉を顰めて、俺の手を握った。


「好きだよ、なによりも。今証明する?」


俺の頬に手を滑らせて、唇に軽くキスを落とす。
「好きだよ」という言葉に顔が熱くなる。
そんな俺を見て、柊斗はニヤッと笑った。


「顔真っ赤。慣れてよ、このくらい」
「な、慣れない。慣れる気しない」


まだ俺はここまでが限界だ。
でも、柊斗はそんな俺の限界を軽々と超えてくる。


「慣れてよ」


そう言って、体をグッと寄せてくる。
柊斗は俺の腰のラインを撫でた後、手を服の中に滑り込ませた。
柊斗の手が俺の腹のあたりに触れて、声が漏れる。


「このくらいじゃ、俺まだ全然足りないから」


いつもと違う貫くような視線に、動けなくなる。
どうするべきかわからず固まっていると、柊斗は俺からパッと手を離した。


「あ嫌だった?」
……や、やじゃない」
「嫌だったり怖かったりしたら、すぐ言って」


前に俺を押し倒したことを言っているのだろう。
俺は頷いて柊斗の手を握る。


「ちゃんと俺の声聞いてくれるってわかってるから、大丈夫だよ。それに今は……ホラー映画の方が怖い」


俺がニコッと笑って見せると、柊斗も笑った。
俺は多分、柊斗が思っている以上に、柊斗のことを信じてる。


「寝よっか」
「うん」



ーーーー



「理玖」


ベットに入った柊斗が、俺を手招きする。
あのときはなんとも思ってなかったけど、今思うと一緒に寝るって近くない?
俺、耐えられる気しないんだけど。


「やっぱり、自分の部屋で……
「だめ。一緒に寝るって決めたじゃん」
「そうだけど……
「なに、照れてんの?」


照れない方が無理に決まってる。
でも、今晩は1人で寝れる気もしないし……
そうもだもだしていると、柊斗は俺の腕を掴んで強引に引き入れた。
そのまま俺の背中に腕を回す。


「逃す気ないよ」


こう言われてしまうと、不思議なことに逃げる気はなくなってしまうのだ。
俺に逃げる気がないとわかった柊斗は、嬉しそうに微笑んだ。


「ずっと一緒に寝たかったから、嬉しい」


確かに、一緒のベッドで寝るのは初めてだ。
1人用のベッドなので狭くて距離が近い。
柊斗の温かさを近くに感じて、どうにかなってしまいそうだ。


「毎日一緒に寝よ」
「え、や、それは……
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど……ドキドキして死にそうだから」


少し見上げて柊斗の目を見つめながら答えると、柊斗は俺を抱きしめる力を強めた。


……俺も死にそう」


ボソリと呟くと、柊斗は俺の額に唇を寄せる。
柔らかく笑って、口を開いた。


「ちょっとずつ、慣れていこ」
「うん」


俺は頷いて、柊斗の胸に顔を埋めた。
シャンプーの匂いと、少しだけ残ってる石鹸の香り。
全部が柊斗で安心して、どんどん体の力が抜けていく。


「まだ怖い?ホラー映画」
「ん……こうしてたら平気」


まどろみの中で答えると、頭を撫でられた。
指先が髪を梳くたび、頭皮に温かい感覚が広がって、瞼が重くなる。


「おやすみ」


耳元でその言葉を聞きながら、俺は深い眠りについたのだった。