紫呉葛
2025-03-04 00:25:20
5343文字
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【オキラス風】どうぞ一緒に休みましょう【機体バトルメイン】

注意点:ACに乗っての戦闘がメイン、ラス視点

掴めない人だった
脅威になると睨んでいた
消せとの指示も受けていた
ずっと狙いを定めていた

ルビコンⅢにはまだ生きている防衛システムがあちこちに点在していた。
利用できる施設を掌握し拠点として前線を拡げる、その為に戦闘を主とする部隊は頻繁に出撃を命じられていた。
今回の防衛システムは強固らしく、ラスティが率いる第四部隊はオキーフの率いる第三部隊との合同部隊だった。
指揮はオキーフが執る。
(彼と共に出撃か)
任務の内容に目を通した時に、部隊の欄で視線を止めた。
ラスティが今最も注視している相手、情報部門に所属するV.Ⅲ オキーフ。
シュナイダーからアーキバスに来て早々、彼には背景を掴まれた。だが何の思惑あってか、黙ってくれてはいる。
だが、味方ではない。
何度も言葉を交わして、探り、知っていった。
任務を確実に熟すが、アーキバスに傾倒している様子は無い。
情報部門での活躍も、AC乗りとしての腕も、相当なものだ。
引き込めるのならば、喜ばしいのにとさえ思ってしまう。
だが、出会ってから部隊長になり肩を並べるまでになって幾月、未だに彼の目的は掴めない。
危険性の方が高い以上、消すのが妥当だろう。
やるならば、戦場が好ましい。激戦区なら尚のこと。
獲物を狙う肉食獣のように、今か今かと引き金を引くタイミングを待ち構えていた。

《貴方と共に戦えるとは。この上なく嬉しいよ》
スティールヘイズからバレンフラワーのパイロットに向けて。ラスティが明るい声音を送る。
《そうか》
バレンフラワーからスティールヘイズのパイロットへ。オキーフが抑揚のない声を返してきた。
敵戦力は防衛システムである無人兵器およそ30機。
ガトリングガン、2連装射砲、レーザーライフルと様々な武器を持った二脚の無人MT。
レーザーショットガンとブレードを携えた小型飛行兵器。
それらが大半を占めているが中々の数である。
機動力もさることながら、頑丈である敵機は1機仕留めるだけでも隊員2機以上での対応を必要とする。
第三隊長の号令により、第三第四部隊混合の各班か散開した。
隊長機だけの班は周りとは少し離れるが中央の位置を割り当てている。
ラスティの操縦するスティールヘイズが地上前衛、オキーフが操縦するバレンフラワーは空中後衛。
高低様々な高さの建物に囲まれた、広場のような開けた場所。
均等に配置された無人防衛兵器達が、こちらを認識し一斉にセンサーデバイスの光を赤く強く輝かせる。
《V.Ⅳ 交戦》
スティールヘイズが地を蹴り走り出す。
《V.Ⅲ 交戦》
続いてバレンフラワーが空から銃口を向ける。
火が駆ける。
二脚の無人MTの数機のガトリングガンが、スティールヘイズに向きながら一斉射撃。
スティールヘイズはジグザグに動き跳ねて、掠りもさせずにバーストハンドガンを命中させる。
ガトリング砲が黙り、代わりに爆発音が鳴り響いた。
小型飛行兵器達がブレードを展開させ、バレンフラワーに向かいながら飛びかかる。
バレンフラワーは接触する寸前でひらりと躱し、紫電が収束したプラズマライフルを放つ。
三方に広がる閃光は、紫の電流で敵内部をショートさせ火花を増幅させる。
向かってきた小型飛行兵器達が破片となって飛び散る。
レーダーから次々と赤色マークが消えていく。
スティールヘイズのコックピット内部に警告音が鳴る。
【バレンフラワー:Vvc-70VPM ==START==】
垂直プラズマミサイルの発射通知。
そのミサイルの狙う相手がレーダー上に表示される。
「そう来るか」
ラスティが言葉を零す。
ならば、と、スティールヘイズの踵を返す。
半回転、逆走する。
背後から2連装射砲を撃ちながら二脚の無人MT達が追ってくる。
向かう先にいる無人MTはレーザーライフルを構えるが、それより先にスティールヘイズのレーザーブレードが敵を切り裂いた。
腕を振り切ると同時に機体が僅かな時間硬直する。
後ろから追ってきていた無人MT達が射程圏内に追いついて、左右からも同型機体が集合する。
警告音が鳴って、数秒。時間だ。
スティールヘイズがクイックブーストで跳ぶ。直後に垂直プラズマミサイルが着弾。
プラズマによる内側の電気系統破壊。引き起こされた爆発は、周辺の敵機達を次々と巻き込み誘爆させる。
立ち上る爆炎は、バレンフラワーの視界の一部を遮る。
小型飛行兵器達がミサイルを放ち、バレンフラワーのコックピットに警告音が鳴り響く。
横移動、後、クイックブーストで避け切る。
だがその先に居た小型飛行兵器達がレーザーショットガンの狙いをつけていた。
今の位置では直撃は免れない。
だが避ける必要はない。
小型飛行兵器達が駒のようにくるくると回りながら、余所に飛び爆散する。
地上からスティールヘイズが両手を伸ばして撃ち抜いた。
軽々蹴散らし、あっという間に静かになった。
《地上を探索したい。上空からの警戒を頼めるか?》
ラスティの提案に、
《あぁ》
オキーフは承諾する。
スティールヘイズが建物の隙間を走り、バレンフラワーとの距離が離れていく。
レーダーには依然、敵影は無い。
だが嫌な静けさに、オキーフはバレンフラワーのサーチを掛ける。
ソナーの反射にかかる音が耳に届いた。
まだ敵機が居る。
バレンフラワーで目視を図るために後ろを向いた。
視界に入ったのは、何処からともなくやって来てステルスを解除し姿を現した一機。
キャタピラのついた重量級の脚、速射砲とグレネードキャノンが直接腕部となっていて、重厚なコアにちょこんと光るセンサーデバイスを乗せた、中型二脚機。
その敵機体は速射砲を撃ちながら猛スピードで迫ってくる。
少し被弾しながらもバレンフラワーは横移動で回避する。
すぐさまバーストライフルで応戦するも、中型二脚機はその分厚い装甲の胴体をぐるりと回して盾にして、頭部とコアへの攻撃を防いでくる。
重量型のような出で立ちに反して、軽量並の速さ。
速度勝負ではバレンフラワーは不利だ。
追尾型のコンテナミサイルと垂直プラズマミサイルを使っても牽制にはならず、距離を詰められる。
敵の胴体から放たれた20本ものミサイルが、煙幕の役割まで果たしてくるのだから厄介だ。
コックピット内がガクンッと大きく揺れる。
「ちっ!」
思わずオキーフは舌打ちする。
煙に隠された敵のグレネードが、コアの側面を抉った。
「あれは!?」
スティールヘイズを振り向かせてラスティも地上からその様子を目にしていた。
情報に無い機体が、急に出現して襲いかかってきている。
援護をしようとバーストライフルの銃口を向ける。
だが、気付いた。
V.Ⅲ オキーフを排除する絶好の好機だと。
バレンフラワーはスティールヘイズと同じコアを使っていて、大体の内部構造もわかる。抉られた位置はコックピットに近い。
高さも角度も、そして硬度も、条件が揃っている。
ラスティの操縦するスティールヘイズならば、確実にコックピットを狙える。
ジェネレーターを破壊しても良い。
隊員達も離れている。
見知らぬあの機体を《オキーフを殺した敵》を仕立て上げることも可能だ。
まさに排除には絶好の状況。
上空では、バレンフラワーが敵機に重い蹴りを受けて姿勢を僅かに崩していた。
ラスティは静かに狙いを定める。
オキーフは、援護しろと助けを求めることも、何をしていると動かないことを咎めることもしなかった。
彼も気付いているのだろう。己を消すには今が絶好のチャンスだと。
『成し遂げたいことがあるのだろう?』
スティールヘイズの銃口から煙が上がる。
バーストライフルによる連続3発が命中する。
傾いたのは、敵機。
貫通はしなかったが、3発目の弾丸がグレネードランチャーに突き刺さっている。
砲身への攻撃により狙いが逸れて、バレンフラワーはその隙に距離を取る。
それと同時にブーストで駆け上がってきたスティールヘイズが中型二脚機を蹴飛ばし遠ざける。
EN切れが近いバレンフラワーが地上に降り、スティールヘイズも隣りに着地する。
「何故殺さなかった」とは、オキーフは問わなかった。

「貴方の淹れたフィーカは、美味かった」
背景を指摘し釘を刺されたその時、オキーフは1杯のフィーカを淹れてくれた。
口をつけるのも躊躇いはあった。
彼をどう対処するかという考えを巡らせていた。
「成し遂げたいことがあるのだろう?」
そう言ったオキーフは、口を閉ざすようにフィーカを飲んでいた。
このまま飲まない訳にもいかず、意を決して飲んだ。
思わず「美味い」と声を零したことを、鮮明に覚えている。
僅かでも彼の前で本心を出してしまったことを、後悔しなかったことを覚えている。
目的を、能力を、人柄を、
知る必要があったから、何度も接触した。
引き込む要素を、排除する理由を、
他愛のない会話を、真剣な戦闘を、幾度も行った。
必要にない情報を切り捨てられない物が増えてしまった。
見抜くような眼差しの中に、優しさを見てしまった。
会話を重ねることが、楽しくなっていた。
見据える先を、知りたかった。
―――成すべきことの障害になる可能性はある
―――だが、排除せずに済む可能性もある
―――消すのは、今じゃなくて良いだろう?
《此処で貴方を失って、あの美味いフィーカが飲めなくなるのは残念だからな》
そうか》

中型二脚機は依然、バレンフラワーを狙って迫ってくる。
オキーフも狙撃の腕は高い。だが相手の速さはバレンフラワーを苛む。
《ラスティ、奴はこちらで引きつける。頭部デバイスを狙え》
動きを認識される以上、敵機の隙は作れそうにない。
《だがそれは
バレンフラワーの被弾は決して軽くない。躱しきれない以上、オキーフ自身にも危険が及びかねない。
《出来るな?》
裏切ると思わないのかという問いはその一言で引っ込んだ。
先程まで命を奪おうとしていた相手に、彼は信頼している、と言う。
ならばどうして刃を向けられようか、と操縦桿を握りしめる。
《あぁ、任せてくれ!》

地上を走行するバレンフラワーが中型二脚機に向けてプラズマライフルを当てる。
数度の紫の爆発に包まれるも少々の焦げ目だけ、平然と敵機が突進してくる。
スティールヘイズは2機から有効射程のギリギリまで離れる。
両腕を伸ばした状態で、間合いを保ったまま、追走する。
弾丸1つ分の大きさしかない目標は、重そうな見た目以上に機敏な動きで守られている。
バレンフラワーが前に立つにも関わらず、スティールヘイズに重厚な肩部ばかりを向けてくる。
アラートが響いたのはバレンフラワー。
しかしその後に続いた爆発音は、スティールヘイズがプラズマミサイルで敵機ミサイルを撃ち落としたもの。
バレンフラワーが爆煙を盾に軌道を変え、射撃を続ける。
放ったバーストライフルの弾丸が何度も弾け飛ぶ。
時折スティールヘイズもバーストハンドガンによる支援を行う。
飛び交う実弾は、幾度も、幾度も、幾度も、囮に隠れて同じ物を狙う。
再度放たれたバーストライフルの弾丸によって、爆発音が響くと同時に敵の肩のグレネードキャノンの銃身が腕部まで裂けて花を開く。
銃身に蓄積したダメージは、その筒の形を変形させて発火している弾を詰まらせた。
それでも中型二脚機怯みはせず、速さは健在。
地上を走行する手負いのバレンフラワーを狙ってくる。
両腕の銃のみで応戦し距離を詰められたバレンフラワー。
中型二脚機は、踏み込み、跳ね上がり片足を突き出す。
一閃。
吹き飛んだ。
敵機のデバイスが。
スティールヘイズの銃口から煙が上がる。
速度300を越える動きの中で、引き金を引く速度が誤れば仲間が潰える状況下で、撃ち抜いた。
軌道が傾いた敵をクイックブーストで躱すバレンフラワーが、身を反転させる。
【バレンフラワー:BML-G1/P29CNT ==START==】
スティールヘイズに合図が届く。
コンテナミサイルが中型二脚機のコアを一点集中攻撃。
【スティールヘイズ:Vvc-703PM ==START==】
闇雲に胴部のミサイルを剥き出しにした所に、プラズマミサイルで先に弾を破壊する。
度重なる衝撃に耐えられなくなった装甲が飛散し、火花を散らしたケーブルを垂れ下げ、ジェネレーターが露わになった。
スティールヘイズが左腕を換装し、飛びかかる。
中型二脚機は肩の速射砲を乱射しているが、バレンフラワーの銃撃により狙いが外される。
青い光が稲妻のように走り抜けた。

《任務完了、順次帰投せよ》
オキーフの指示に、隊員達の機体が次々に基地の方に戻っていく。
《お疲れ様です、第三隊長殿。基地までのエスコートは必要か?》
《必要無い。お前には此処の引き継ぎを任せる》
《了解した。貴方もバレンフラワーも先に休んでくれ》
……ラスティ》
《なんだい?》
《1杯だけなら淹れてやる。飲みたければ来い》
《あぁ!フィーカに合う菓子を持っていこう》

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